4.小さなお茶会
「それって絶対恋よ!」
マリアンヌは目を輝かせ、興奮気味に言った。
「そんなんじゃないわ」
ジョセフィーネは溜息まじりに、呆れた顔を作って見せた。
ソフィアの誕生会の話題で、ロバートの話に食い付かれてしまった。
話が思ってもない方向に進んでしまい、ジョセフィーネは困惑した。
確かに会えないことに寂しい気持ちを持ったが、だからと言ってそれ以上何かを思うこともなかった。
「そうかなぁ?」
マリアンヌは、可愛らしく小首を傾げた。
その日は久しぶりに体調の良かったマリアンヌのために、窓辺にテーブルと椅子を寄せて、小さなお茶会を開いていた。
気温も高くなく、爽やかな風が心地よい日、年頃の娘らしい会話を楽しんだ。
可愛くトッピングされたカップケーキやチョコレート、お気に入りのティーセットに紅茶を入れて、楽しみの少ないマリアンヌのために心を尽くした。
「でも、また会いたいと思ったのでしょ?」
まるでいたずらっ子のようにマリアンヌが笑うと、
「そんなことは考えてもいないわ」
より一層顔を顰め、ジョセフィーネはマリアンヌを見返した。
「ふふ」
マリアンヌが楽しそうに笑うので、
「ふふ 」
ジョセフィーネも釣られて笑った。
マリアンヌの美しい笑顔で心が満たされ、幸せだった。
幸せ過ぎて、ジョセフィーネは泣きたくなった。
「ジョセフィーネの子供が見たいな」
不意にマリアンヌが言った。
「まあ!随分気が早いわね」
恋やら、子供やら、ジョセフィーネには思いも寄らないことばかりだった。
「ジョセフィーネが恋をして、結婚して、子供を産んで。
そうやって幸せになっていくのを見守っていきたいいなあ、わたし」
寂しそうに、マリアンヌは微笑んだ。
「わたしは、マリアンヌとずっと一緒に居たい。
できれば森の奥の小さな家で、二人で静かに暮らしたい」
(そうなれば、どんなに幸せだろう)
恋も結婚もしなくても良い、マリアンヌと二人、身を寄せあって生きていければ、そんな幸せなことはない。
「それも素敵ね。おとぎ話に出てくるような可愛いお家で?」
マリアンヌの問いに、ジョセフィーネは頷いた。
この家はソフィアが継ぐから、領地の森の奥に小さな家を建ててもらい、自分がマリアンヌの世話をすれば良い。
そうして二人で穏やかに年を取って、同じ日々を積み重ねて行く。
想い描く未来は、堪らなく甘美だった。
「うーん、でもやっぱりジョセフィーネの子供が見たいわ。
絶対可愛いから!ジョセフィーネの恋のお話も聞きたい!」
そう言って、またマリアンヌはいたずらっ子のように笑った。
「マリアンヌったら、もう」
ジョセフィーネは少し口を尖らせて、拗ねて見せた。
二人はカップに口を寄せ、一口飲むと、顔を見合わせ笑った。