またいつか会おう
「私の母とマダムヴィオレは同一人物なんじゃないかと思うんですよ。
確証はないんですが」
そうアキが言うと、ふむ、そうか、と微動だにせず言う女神は、アキの胸の辺りを見たまま語り始めた。
「マダムヴィオレとアンブリッジローズと私は古い友人なのだ。
そして、アンブリッジローズとマダムヴィオレは遠縁に当たるからちょっと似ている。
私はお前を最初に見たとき、アンブリッジローズと似ていると思ったのだが。
すぐに、そうではないと気がついた。
お前はマダムヴィオレと似ているのだ」
お前は母親を探しに来たのか? と女神に訊かれた。
「……いや、違った気がしますね」
と呟きながら、アキは王子たちを見る。
彼らは微妙な顔をしていた。
「そうだ!
そういえば、私は運命の相手を探してたんですよっ」
「すぐに思い出せない程度の運命なら、探さなくていいんじゃないのか?」
と女神が言い、
「いやそれ、アンブリッジローズ様による洗脳だろうが」
と王子が言ってきた。
「いや~、なんだかいろいろと騒がしくて忘れてましてね」
と言うと、今度はラロックが、
「騒がしくて忘れる洗脳ってなんなんですかね」
と呟き、王子が、
「騒がしくしてるの、お前だろうが」
と言ってきた。
王子は改めてこちらを見て言う。
「別に探さなくたっていいじゃないか。
此処にいるだろ。
お前の、う、
……運命の相手は」
「……何故、そこで噛むんですか。
恋敵なのに可愛いとか思ってしまうではないですか」
とラロックが呆れ顔で言っていた。
赤くなりながらアキは王子から目を背け、早口に女神に訊いてみた。
「そ、それであの、マダムヴィオレは今何処に」
「それが私もよく知らんのだ。
私は、ここに水がはっていない期間は地上に出てきていないから。
塔にこもってるアンブリッジローズと変わらぬくらい世間のことに、うとくてな」
「そうなのですか……」
「力になれなくてすまんな」
「いえ、ありがとうございました。
あっ、そうだ。
今、思いついたんですけど」
そう言いながら、アキは女神の後ろに回る。
「どうした?」
と振り向けないまま、女神は言ってきた。
「リバースッ!」
女神の腰が輝いた。
なんだっ? と思わずという感じで振り返った女神は、一瞬あとに、
うっ、しまった、動いてしまったっ、という顔をしたが。
次の瞬間に驚いた顔をする。
「治ったっ。
治ったぞ、アキッ。
お前は天才だっ」
「いや~、たまたま思いついただけなんで……」
あまりの感激っぷりに、どんだけ腰が悪かったんだ。
自力で治せないのだろうか、女神様なのに、と思いながら、アキは訊いてみた。
「そういえば、湖が現れるのは新月の晩だと聞いたのですが。
まだ湖あるんですね」
「だから、現れるのが新月の晩なのだ。
いつ消えるのかは私にもわからない。
前なんぞ、現れてから数年そのままで、消えたと思ったら、また次の新月で現れたことがあるぞ」
もうずっと現れておいたらどうでしょう……とアキは苦笑いする。
「まあ達者でな。
お前が生きている間に、この湖が出現できたら、また会おう」
女神にそう言われ、たいした手がかりは得られないまま馬で去る。
王子が湖の方角を振り返り言っていた。
「なんだかまたすぐ会う予感がするな……」と。




