表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子、結婚相手を探してくださいっ! ~花嫁のれんをくぐって異世界に運命の人を探しに来ました~  作者: 菱沼あゆ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/88

部下ですが、ちょっと嫌味を言ってやりました



「昨夜はずいぶん遅くにおやすみだったのですね」


 森を見下ろせる庭園での朝食の席。


 寒いくらい涼やかな風が吹き渡る中、王子とアキを窺うように見ながら、ラロック中尉が涼やかでも爽やかでもない声で言ってきた。


 ふたりとも寝不足そうだったからだろう。


「まあ、新婚みたいなものですからね」

という言葉に、なにやらトゲがある。


 いやいや、そんないいものではない、と王子は思ったが、負け惜しみのような気持ちで言わなかった。


 アキの方は寝不足でぼんやりして反論しなかったようだ。


 まあ、ぼんやりしているわりには、朝食はしっかりと食べているようだったが……。




 なにやら面白くないな。


 ラロック中尉は出発の準備に抜かりがないが、チェックして歩きながら思っていた。


 ふと見ると、アキがヴィラにカーテンがわりに下がっている薄布を開け、森の方を眺めている。


 ふわりとその柔らかな布が風に巻き上がり、アキの身体にまとわりつく。


 まるで、神話の女神の衣のように見えた。


 ……美しい。


 外見は……。


 うっかり、そんなことを思ってしまったが、慌てて気持ちを切り替える。


「アンブリッジローズ様。


 なにしてらっしゃるんですか。

 お支度は整われましたか」


 宿の使用人たちも、すでに客の出発したヴィラを片付けるため、庭先をウロウロしている。


 いつものように、アキを頭ごなしに怒鳴りつけたりしないよう、注意した。


 偽物ではあるが、王子の妃となる娘だからだ。


 魔術の探究にはまるアンブリッジローズはこの先もあの塔から出てくることはないだろう。


 ならば、この娘が本物のアンブリッジローズであるのと同じことだ。


「ああ、ごめんなさい。

 ちょっと眠くて、ぼんやりして」

とこちらに気づき、アキは苦笑いして言ってきた。


「王子が一晩中、くだらない話をするものだから」


 一晩中……?


 話していただけなのか?


 ……そうか。


 そうか、と何故か、ホッとする。


 そうだよな。

 あのオクテな王子だもんな。


「アンブリッジローズ、そこで待っていろ。


 ……いや、待っていてください。


 今すぐ、本日の御衣装をご用意致しますから」


「えっ? いいわよ、これで」

とアキは今着ている、ラベンダー色のふんわりした袖のドレスを見下ろして言ってくるが、


「いえいえ。

 王子妃様が同じドレスを何度もお召しになると、我が国の財政状況を疑われますから」

と答えた。


「そうなの?

 めんどくさいわね~」

とアキは眉をひそめていたが、ラロック中尉は思っていた。


 今朝の彼女にふさわしいドレスを出してやらねばと。


 美しい衣で、彼女の魅力を引き出してやれるのは私しか居ないのだから。


 そう。


 それができるのは、王子ではなく、私だけなのだから――。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ