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第二章10『阿澄伊織はゲームに勝ちたい』

 机の上に裏向きで広げられたトランプのカード。計五十二枚。

 それらを使用して行うゲームの名前は『神経衰弱』だ。


 時刻は十二時四十分。村田が時間通りに来たとしても、一戦はできる。

『グラモン』のプレイセンスがないことは、二週間で身に染みて理解した。


 自分の得意な分野で勝負するのが一番だと考えた俺は、今トランプゲームを提案した。

 単なる遊びだが、ゲーム部として得意な分野のゲームで負けるのはプライド的に好かない。


 なので聖女や後輩相手だろうが容赦はしない。


「よし、始めるか……」


 俺は本気だ。負けられない戦いが幕を開ける。

 俺の内心など知る由もなく、俺の視線の先で聖女と後輩が話しながら笑っている。


「神経衰弱なんてすんごく久しぶりです! 小学生以来かもしれません」


「久しぶりだよね! 私もやった思い出はあるけど、勝てた記憶が無いよー」


 自分の得意なジャンル。尚且つ、相手は苦手なジャンル。これこそゲームに勝つための作戦というわけだ。


 『グラモン』では瑞斗にバカにされ、後輩には笑われ、聖女に至っては同情だ。

 十七年生きてきて、ゲームにあまり興味を持たない男は珍しいんではなかろうか。


 そんな俺だが、男として負けることはプライドに関わってくる。

 どんな手を使ってでも、ゲームを通して勝ちたいのだ。


「誰から始めるか。まずジャンケンで決めましょう!」


「待て、青葉。まずはルールの確認からだ」


 神経衰弱に決まったルールなんてものは無いが、決まってないからこそ最初に宣言しておかないと後々揉めても困る。


 俺の返答に青葉は困惑しながらも頷き、俺の説明を静かに待つ。


「まずルールその一だ。最終的な勝敗はカード枚数で決まる」


 俺は続ける。


「次にルールその二。カードは同じ数字のが二枚揃うことでもらえる。もらったターンは外すまで続けることが可能だ」


 質問がないようなので、さらに続ける。


「そして最後、ルールその三。不正発覚は即刻敗北とする! 例えば目印をつけたりだとかしたら、罰ゲームだからな!」


「最後に関してはルール作らなくても誰もそんなことしないよ?」


「分からないだろ。念の為だ、念の為。よし、ジャンケンで順番を決めるか」


 俺たちはカードが並べられた机の上に手を出し、ジャンケンをする。

「最初はグー」の合図で始まる。そしてすぐに終わった。


「んじゃあ、青葉からだな」


「最初ってなんか緊張しますね……これとこれ!」


 まぁ最初だからな。適当に選ばないとゲームは始まらない。

 もちろん適当に選んだので二枚とも数字は異なる。


 時計回りなので、次は小野寺だ。

 見れば目はもうトランプの方に向いている。


 序盤の二周は正直運ゲーだ。カードを引かない限りは位置の把握が出来ないため、神経衰弱のゲーム性はまだ発揮されない。


 位置を把握せずに同じ数字を引く確率はおおよそ3%。

 当たるはずも――


「あ、揃いました! 見てください!」


「不正してるのか?」


「いきなり不正を疑うなんて、阿澄くんは最低ですか! ふふ、神様は私の味方をしているみたいです」


 まぁ言っても二枚だ。勝敗に大きく関わることはないだろう。

 小野寺のこの引き運に焦る必要は無い。


「小野寺先輩すごいです! 位置を把握せずに引き当てるなんて……強運の持ち主ですね!」


「こんな所で運を使っちゃうなんて。それだったらモンスターの神聖石が欲しいです!」


「わかります! あの素材すんごく落ちる確率低いですもんね」


 なんの話をしているのかさっぱり分からない。おそらく『グラモン』の話だろうな。


 数字が揃ったので小野寺はもう一度引いた。

 もちろん当たる訳もなく――2とJ。


 次は俺の番だ。別にここでカードを引き当てる必要は無い。というか、どちらかといえば外れる方がよかったりする。

 カードの位置が把握できるからだ。もちろん二周目で取られる確率も増えるが。


 ――3と7。


「外れだ。青葉、引いていいぞ」


「三人でやると順番が回ってくるのがすごく早いですね。やーい!」


 なんだその掛け声は。可愛いからいいが。同性として、俺がそんな掛け声したら異性からどんな目で見られるか、想像するだけで怖い。


 ――5と7


「えへへ、外れちゃいました」


 確かに外れたが、次のターンで7がやばい。

 次は小野寺だ。

 小野寺は7が二枚、どこにあるのか把握している状態だ。


 成績のいい小野寺がそんな簡単なミスを犯すわけもなく。


 引き当てた7の二枚を小野寺は笑顔で自分の手前に持っていく。

 そして二回目を引く――KとA。ハズレだ。


 さすがに焦り始める。出だしとは言え、四枚差は結構大きい。

 ここでまた外すと、次のターンも小野寺が取ってしまう可能性がある。


「来い!」


 ――3と8。

 3の二枚が位置バレしてしまった。まぁ先に青葉が二枚とってくれれば、小野寺のリードを少しでも抑えられるが。


「えへへ、外しちゃいました〜」


 ――なんでそこで外す!

 青葉はアホなのか!? アホなんだろうか!

 次のターン、小野寺は平然と3の二枚を見事に引き当てる。

 いや、引き当てられなかった青葉に少し問題がある気もする。



 そしてこの不毛な戦いは一時まで終わることなく続いた。

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