7月28日
嵐が過ぎた香がただよう、
目を開かなくてもわかる、
君が笑っている。
風の中で、光の中で、
青い青い空の向こう、
一緒に笑ってもいいですか?
降ろした髪が風に揺れる、
風速15mの朝でした。
スカート押さえ、向かい風に笑う、
君は火のように生きている。
流れ続ける空の雲、
フラッシュバックする言葉が、
僕を傷つけるものじゃありませんように。
大波、小波、百波、千波
遠い遠い海のかなたから、
やってくる波
白い足をひたして
光の方だけにまっすぐ進む
声が届かない場所へ行ってしまわないで。
声しか届けられない僕の、
知らないところに行かないで。
映画の予告をさんざん見て、
あれだけ見たいと言ったのに、
見に行かない僕が不思議だった。
君によく似た子が笑っている
映画のポスターがまだ家にある。
肌がゆうれいみたいに白いね、と言われたこと、
ずっと心に残っている。
褒めるつもりだったのだ、知っている。
その晩僕は足の無い夢を見た。
足の無い、君の夢を見た。
春は桜の儚さを、
夏はアスファルトの暑さを、
秋は焼き芋のおいしさを、
冬は雪の冷たさを。
アルバムを開かなくても、思い出せる。
君が笑っている、
永遠に、その中で。
嵐前、
波が、
やってくる
海、
不思議なほど澄んでいて
死んだ後みたいだった、
堤防上、
風が吹いている、
風速15mの朝でした、
君は笑っていた、
君は泣いていた、
君はスカートを押さえていた、
君は肌が白かった、
君は髪が長かった、
君は映画の女の子の様に可愛かった、
君は波に足を浸していた、
君は流れる雲を見ていた、
君は青い空と海の中にいた、
君は光の方だけ真っ直ぐ見て、
君はゆっくり沈んでいった
君は火のように生きていた。
うつくしい人は、死んでしまうんだ、
僕は映画を見て知っていた、
数多の映画で、歌で、小説で、
うつくしいセーラー服の女の子は死んでしまうんだ、
僕は夏を信じられなかった、
嵐が過ぎていく、
暴力的な風が吹きすさぶ、
目を開かなくたってわかる、
耳をふさがなくたってわかる、
部屋にとじこもってたってわかる、
君は、
波にのまれて、
死んでしまったに違いない。
朝が来て、もう一度夜が来て、
何度夜が来ても夢の続きは見られなかった、
あの夢の中で笑う君が死んでしまったのが悲しくて、
夢ごと殺してしまったのを朝になって後悔した。
もう一度だけ生き返ってくれれば、
そう
願っても、
死んだ夢はかえってこない。
7月28日の夢。台風の夢を見た。波と、青い空が印象に残っている。




