7月23日
ぷくぷくという泡も出さずに、
泳いでいく魚たちがうらやましくて、
僕は水族館に行く、
ずっと見つめたらなれる気がする。
青い光がゆらゆらして、
どこも暗いばっかりの水族館が好き。
海の中が好き、とか、
魚が好き、とか、
貴方が好き、とかじゃなくて、
水族館が好き。
水族館にくっついてくる何物でもなくて、
水族館っていうものが好き。
やたら冷えた空気をちょっぴり吸って、
ああ、と何とも言えない声をだす時間が良いんです。
懐かしい貴方と行きたいな。
オニイトマキエイが魚屋で売られていて、
思わず買ってしまうほどかわいそう。
青いあの光の中でぐるぐるぐるぐる、
生まれてから死ぬまで新しい場所を一度だって見たことのないお前が、
それでもさらに死んでしまって、
ああ、とってもかわいそう。
家から一歩も出ずに一生を終えるみたいに、
主人公の家しかマップのないゲームみたいに、
分厚い板で囲まれた箱の中をぐるぐる泳ぐだけの簡単な人生です。
そんなお前の人生が、
哀れで哀れでしょうがない。
荒れた海を泳いだ。
黒々と渦巻く雲の下、
茶色く濁って理想とは程遠い海の中を、
お前を探して泳いでいった。
いるわけないと知りながら。
フラッシュ、そして大音声、
フラッシュバックする、貴方の声、
フラッシュ、暗転、フラッシュ、暗転、
「オニイトマキエイは水族館にかえった」
貴方が僕をなだめるように言う、
知っているけど、貴方の思惑も本当のことも全部知っているけど、言ってしまう。
それは魚屋さんのお前じゃないでしょう。嘘をつかないで。
もしかしたらお前だってきらきら光る泡を出して、
僕たちみたいにおしゃれな水着をきて泳ぎたかったかもしれないのに、
うらやましがっちゃってごめんね。
無い物ねだりは、さだめなんでしょう。
青い青い光の中を、
やたら冷えた空気の中を、
分厚い透明な箱の中を、
一つしかない僕らの舞台を
ただお前と一緒に泳ぎたい。
7月23日の夢。海と、水族館の夢を見た。魚屋さんで売られていたオニイトマキエイが、ひどく悲しく思えた。




