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無人島の夜の恐怖

 無人島の夜の恐怖。


 夜の素晴らしさについては話したが、今度は恐怖について語ろう。


 夜の暗さについては気にならなかった。そこそこ明るい。

 そして無人島に地縛霊はいないだろうし、暗闇や幽霊怖いなんて感情が生まれないくらいには疲れていた。

 仮にナニカが出たとしても、うるせぇ寝ろ、って言ってただろう。


 では何が恐怖かというと、奴らだ。


 虫である。



 虫刺されに注意しなさいと、虫除けスプレーは支給されていた。

 だがこの掘っ立てビニールシートハウスには段差もなく、半オープンで開放的な住居だ。

 当然、地を這うムカデなどの虫が入る可能性が高い。なのでせめて虫除けスプレーを入り口付近に吹いて、ささやかな防衛をしていた。


 それでも、飛ぶ蛾や蚊は問答無用で突入してくる。

 ビニールシートの入り口を閉めるのは論外だった。男四人が中にいるのだ。サウナになってしまう。

 蚊の飛ぶ音は不快だったが慣れる。蛾も気にはならなくなった。鬱陶しいときは虫除けスプレーを空中に散布して皆でむせていた。

 ムカデには幸いなことに遭遇しなかった。


 だがやつら、イナゴに悩まされた。


 イナゴというのは、バッタのように跳ねる虫だ。

 恐ろしいことに、無人島のイナゴはデカイ。かなりデカイ。

 大きいやつだとスマホの半分に届かないくらいの大きさのやつがいた。

 しかも、身が詰まってるのか硬い。


 そしてイナゴは跳ねる。虫除けスプレー防衛線を飛び越えてビニールシートハウスへ侵入してくる。

 恐ろしいことに、やつらは寝ている人間にぶつかってくるのだ!


 私はあまり虫は得意ではない。

 ムカデやゲジのような人にとって害虫を殺すことに頓着はしないし、うおっとも思うが悲鳴をあげるほどではない。

 あまり触りたくない。というのが本音だ。

 だって変にぬらぬらしてるし。潰したら体液が汚いし。


 しかし無人島のイナゴたちはそんな事情などお構い無し。

 寝ている私たちにびょんびょんと跳ねてアタックしてくる。


 想像できるだろうか。

 寝ている時に、不意に顔面にナニカがぶつかってくるのだ!

 イナゴだよ! ちくしょうめ!


 体にぶつかるならまだしも、顔面はやめてほしい。口を開けていたらと思うと寒気がする。


 私は無人島での夜は、満足に寝られた試しがなかった。

 常に気を張り、ビニールシートを擦るカサッというイナゴの足音に怯えていた。

 一人、全く気にせずイビキをたてて寝ていた男がいたが、イナゴを摘まんで鼻あたりに押し付けてやったら跳ね起きて悲鳴を上げて暴れた。

 みんなで爆笑していたが、悪いことをしたと思う。私だったら切れる。だが優しいそいつはもうやめてよーなんて言うだけで流してくれたので、菩薩かなにかなんだろう。



 外敵の侵入に怯えることのない寝床や住みかというものは、尊いものだ。

 そして敵を満足に寝させないために夜に襲うゲリラ戦法は、なかなかに有効そうだとも思う。


 とにかく、イナゴはもう勘弁だ。


 虫の話はここまで。


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