無人島に風呂はねぇ
無人島に風呂はねぇ
無人島生活一日目は、移動、寝床の設営、トイレの穴堀り、そして火起こしで終了した。
秋に迫ろうかという季節だったかと思うが、暑い。とにかく暑かった。
その時は真っ黒に焼けたし、夜になって肌が火照って不快だったことを覚えている。
陽射しが強いし、島に日光を遮るものは少ない。南国の島国の方が真っ黒日焼けなのは頷ける。
私のようなどちらかというとインドア派には辛い気候だった。
暑いのだが、汗はあまりかかなかった。
かいた端から蒸発していくのか、暑さでそれほど気にならなかったのか。
さらにいうなら、小便は全くでなかった。
毎度毎度、汚物の話で申し訳ない。
嫌ならスルーしてほしい。今回は結構不潔な話だ。
汗でほとんど水分が出ていくのだろうか。小便は日に何回か。大便の時に一緒にするくらいだった。
そして黄色が濃い。
私は水分をよく取る方で、むしろ頻尿気味だったが、この実験中はトイレの回数がとても少なかった。大丈夫か? とさえ思った。
外で作業している方とかだと普通の感覚なのだろうか。私としては衝撃だったので覚えている。
さて本題。
無人島にはホテルも旅館もない。
ビニールシート寝床もどきとぼっとん便所は設営したが、風呂がないのだ。
ドラム缶風呂なんぞという風流なものはない。
漂流物にもなかった。
ではどうするかというと……。
私たちのベースキャンプは浜から徒歩2分ほどの木陰。目の前には母なる大海原がある。
つまり、そこが風呂だ。
一日の終わりに、シャツを脱いでザブン。犬のようにぶるぶると体を振って水気を取り、終了だ。
ちなみに下はずっと水着だった。ハーフパンツのようなやつだ。
女性も同じくで、あとはジャージやラッシュガードを来ている奴がいたかな。
大海原風呂。ある意味贅沢だ。
今までの人生で、『体の汚れを落とすために海に入る』経験はなかった。あったらヤバイが。
お風呂だが、シャンプーはなし。海が汚れるから禁止らしい。
感想だが、まぁ、悪くないんじゃないかな。
汗汚れは流せるし。冷たくて気持ちがいい。まんま海水浴だ。
欠点といえば乾いたら肌に潮がつくのと、髪の毛がばさばさになるくらいか。
短髪の私は気にならないが、女性陣はかなり気にしていた。しかし、それも2日目には誰も気にしなくなってるあたり、お洒落とは生活に余裕ができた者の特権なんだろう。
食うや食わずの生活や、喉が乾いてしょうがないときに、髪の毛ばさばさだよーとかキューティクルが……なんて言い出すやつはいないのだ。
髪の毛やお洒落で腹は膨れない。
ちなみに歯磨きはしないと虫歯の恐れがあるので、歯みがき粉をつけずにただブラシしていた。
貴重な水を含んでゆすぎ、終わり。効率的だ。
初日の夜で、既に誰も文句は言い出さなかった。
こんなものか、へぇ。そんな感じだ。
人は、慣れる生き物である。
風呂の話はここまで。