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無人島で火が起こせねぇ

 無人島で火が起こせねぇ。 


 さて、住居の設営をした私たちは、食事に取りかかることになった。

 朝飯は移動前にコンビニで。

 昼飯は支給の乾パンやウイダー。そのため夜にはちゃんとした食事を作れとの指令だ。

 動くと腹が減るからね。


 さて、料理には火が必要なわけだが、これが難儀だ。

 どうやって起こすのか。それが問題である。


 ①メガネで集光だ! ペットボトルだ!

 ②火起こしの道具でコスコス!

 ③木の棒をひたすら回す!


 楽さの加減でいうと、①から③の順だろう。

 だが、知っていることとできることは全く違うのだ。

『知っている』ことと『できる』ことは全く違うのだ。

 とても重要なので二回書いておこう。


 この知識と経験の差、というものに私は何度も苦しめられた。

 なんとなく、自らが馬鹿ではないとか根拠もなく思っていた。世の中には自分よりも頭の悪い人がいるんだろうなーと。

 だけど、無人島生活で存分に思い知った。私は壮大な馬鹿でクズだ。少なくとも私はそう感じるだけの出来事はあった。

 今回は火起こしだが、これはまだ序の口だ。



 さて本題。

 火を起こさないと料理ができない。

 支給された食事はカップラーメン。

 指令を達成した早いものには卵、あと冷凍肉を追加。

 湯が必要な麺。火を通さないと食えない卵。焼かないと食えない肉。

 まぁ、火を起こせたらご褒美つきの豪華なご飯というわけだ。


 問題はどうやって起こすかということだが。

 ① 無理

 チームにメガネ君はいたし、日はあった。だが無理だった。

 ここからは、私の経験で無理だった。と語っている。

 いやいやできるだろ、とか簡単でしょこうやれば。なんて方は実践して見せてください。

 できたらすごいですよ!

 あなたもきっとサバイバルできるはず。


 さておき。

 子供のころに虫眼鏡で集光して黒い紙を焼いた経験があるが、熱を持たせるのと火を起こすのでは勝手が違うのだろうか。

 いくら待てどもメガネでは日光が集まらず、ペットボトルは漂流の末にくすんだり傷ができてて光が拡散してしまい役にたたなかった。

 まぁ、メガネで簡単に火を起こせたら、太陽見たら目が速攻焼けるとか、置いてたメガネが原因で発火、とかなってるだろう。たぶん。

 みんな腹が減っていたので、メガネでチラチラやるなんてお利口さんな手段は早々に諦めた。

 空腹は人の知能を下げるのだ。


 ②火起こしの道具作ってコスコスやる!

 次の候補はこれだ。

 支給された品の中にはスコップなどのほか、木の板や縄、木の棒や小刀もあり、なんとか工夫すれば作れるのではないかと思われた。

 主催側としてはやってみろよ、って、感じだろうか。

 想像できるだろうか。押すことで棒が回り、摩擦される、火起こし器。 

 まいぎり式、というらしい。


 さて、質問だが、この火起こし器の構造を説明できる方がいるだろうか?

 また、構造を全て把握していて、作れる方がいるだろうか?

 私たちは無理だった。

 というか、穴を開けたりなんだりしないといけないので、結構加工しないとダメらしい。

 ボーイスカウト経験者とかならできるのだろうか。


 縄を巻いて回転させながらコスコスするんだろうなぁ、という雑な感覚であーでもないこーでもない。

 くるくる回してみたり引っ張ってみたり、雑に穴を掘って縄を通してみたり、そんな議論で1時間が過ぎた。

 ちなみにみんな本気だ。なにせ晩飯がかかっているのだ。大の大人が大真面目に考えて、1時間かけて何もできないのだ!


 ここで、半端な知識は役立たずだと声を大にして言いたい。というか、人に説明できたり自分で実践できない限り、知識とも呼べないのだ。

 そんなものは聞いたことある、レベルである。知ってる、とも言えない。

 大概、そういうものは、あてにならない。


 火起こし器の作成を諦めた私たちは、ついに③木の棒を回す という原始時代に戻ることを決意する。

 みんな嫌だったのだろう。だって大変そうだし。できれば楽したい。

 たが、この現代人どもが。普段スマホやパソコン使って遊んでるやつらが、頭捻って唸っても火起こし器ひとつ作れないのだからしかたない。


 棒を回すやり方は、きりもみ式と言う。 

 せめて手際と気持ちだけは原始人に負けまいと、私たちは棒と板を手に取った。

 こんなことを思う時点で原始時代に生きたご先祖様たちには負けに負けているのだけどね。


 猿と人間の違いは火を使ったことだという。

 ならば私たちは、自らが猿に勝るところを先祖の英霊たちに見ていただかなければいけない。


 火種は枯れ葉や何かを拾ってきて用意、板を敷いて、棒を持って、さぁやるぞ! と気合いをいれた。






 二、三時間経っても火を起こせなかった。


 私たちはお猿さんだったのだ。猿以下なのだ。



 いくら板に棒を擦り付けても、熱を持ちはするが火種ができない。

 何度も言うが、全員大真面目だ。手の皮がずるむけるくらいに木の棒を擦り回していたし、きついので交代しつつやったが全員汗まみれだ。

 それでも火種はできない。

 気合いで火は起こせないのだ。



 理由は、やり方が悪かった。

 調べてみたら、いいサイトがあったので見てほしい。


 http://tokushima-c.jugem.jp/?eid=403



 ここで出ている、火きり板というものを作っていなかったのだ。知識がないから。

 板の端に切り込みを入れて、摩擦を起こした火種が溜まるようにする切り込みなのだが、これを知らなかった。

 板に溝を作って、その上で延々と無駄にクルクル棒を回していたのだ。私たちがクルクルパーなのだ。


 煙は出てたのでもう少し長く続ければ溝が深まり、回転速度が上がればカスから火種ができたり何とかなったかもしれないが、寝床設置とトイレの穴堀で腕は限界。

 これ以上やっても見込みがないため、主催側の判断で火起こしは数時間ほどかけて終了。

 日は暮れて周りは真っ暗だった。


 主催の持ってきたチビLEDランタンの照らす小さな灯りのなか、カップラーメンを水で戻して食った。というかカップラーメンの乾麺を水に浸して食った。

 卵と肉は没収。さすがに危ないので廃棄らしい。


 いまでも、あのときの卵と肉はどんな味がしたのかふと考える時がある。

 カップラーメンを水で戻すと油は溶けず、麺は柔らかくならなくてボソボソ、相当の不味さなのだが、それでも空腹からか、汁を飲み干す程においしく感じたのだ。

 苦労して起こした火で焼いた卵焼きと鶏肉。もし口にできていたら、それはもう言い表せないほどに美味しかっただろうに。

 残念でならない。



 とにかく、火を起こすのは大変だ。

 そして、経験に裏付けされた確かな知識が必要だ。

 これだけは伝えておきたい。


 興味のある方は、ぜひ実践してみてほしい。

 説明を見てふーん、だと、おそらくは忘れる。いざというときにできない。

 しかし一度でも経験したことは、確かな知識になる。


 おすすめは、ゆみぎり式だ。

 ホームセンターで素材を揃えると500円くらいで試せる。ぜひ。


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