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無人島で仲違い

 無人島での仲違い


 貧しさは人の判断力を鈍らせると書いたが、無人島生活において貧しさの改善は無かった。

 頭は働かず、他人の粗に目がつき、イラつく。

 つまり、チームの中でお互いのヘイトは高まるしかないのである。


 水は少なく、食事も貝、米、貝、米。満足なおかずも無い時が多い。

 しかし労働は多く、糞が溢れかけたトイレを新しく掘るなんて想定外のことも起きた。

 そのぶん頑張ったで賞としてご褒美の品が与えられたが、貰えないチームの機嫌は悪くなるばかりである。


 さて、何が起こるのかというと、チーム内の不和が加速、表面化し、直接対決である。

 布陣は、怠け者VS働き者だ。

 チームの中の仲違いとも言える。


 働き者の先制攻撃!

「私たちはちゃんと動いてるのに!」


 怠け者の反撃!

「俺は精一杯やってるよ!」


 この形式は面倒なので以後省略する。


「ちゃんと働け!」

「ちゃんとやってる!」

「証拠は? 今休んでただろう?」

「休憩だ! やるつもりだった!」

「やってから休憩しろ!」

「個人のペースがあるだろ!」

「ここではチームで動かないと!」

「じゃあ仕事を割り振れよ! チームで分担だ」

「言われる前に動くのが普通だろ!」

「指示はリーダーが出すんだろ? 待ってたよ!」

「後出しで言うな! これから分担する!」

「あーそうかい! 了解したよ!」


 カンカンカーン。

 試合終了。


 やりとりはこんな感じだ。

 さて、実をいうと私はチームのリーダーだった。

 仲違いを防げなかったダメなリーダーだ。すまん。


 しかし、怠け者の擁護をするつもりは毛頭無い。

 一切無い。全面的に働き者の味方である。

 件の怠け者の行動は、個人的には目に余るものであったからだ。


 チーム最年長の怠け者の彼の口癖は、若者頑張れ。だ。

 人を使うことが仕事、と平然という彼は、なにかと理由をつけて人に仕事を任せる癖があった。


 自分よりも誰かの方が上手くやるから、という思惑もゼロではないだろう。

 だがしかし、指揮官と兵隊という構図は、人員その他に余裕がある場合にのみ成立するのであって、無人島では成立しなかった。


 指揮官に従っても旨味はない。ボス猿についていっても餌は分けられないのだ。無人島には旨味も餌もないのだ。欲しければ自ら動いて勝ち取るしかない。

 貧乏暇なしだ。


 仲違いは、文化祭の時に張り切るメンバーと、そこまで乗り気じゃないメンバーと考えると分かりやすいかもしれない。

 特に頑張っている者から見ると、怠け者は我慢ならないのだ。

 学生あるあるである。


 学校で体験した教訓を、私は何も活かせなかった。

 すまん。本当にすまん。

 今思えば、リーダー権限で指示を出してコントロールしていればよかった。

 なんて、たらればの話は意味がないが。


 結局、口論は特に解決策を見いだすわけでもなく、お互いにヘイトを高めて終わった。


 この無人島の実験で、決定的に破断したチームは私のチームだけ。

 あとは比較的緩やかにまとまったり、一致団結協力したり、わりかし好意的だ。

 この仲違いと団結の違いを、主催側は観察していたのだろうかと邪推をしている。

 真相は、わからないが。




 私は口よりも手を動かす人が好きになった。

 言葉は嘘をつくが、行動は事実だからである。


「宿題やったけど忘れました」は信用ならないが、宿題を忘れたことは事実だ。

「勉強やってねぇやべぇ」は信用ならないが、テストの点は嘘をつかない。

「いっしょにゴールまで走ろう」は信用ならないが、相方がぶっちぎりで走っていく姿は事実なのだ。


 言葉は信用するな。行動を信用しろ。

 これは私が無人島で得た教訓である。


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