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おまけ

 はてさて。

 長い長いコース、お楽しみいただけたでしょうか。大変長くなってしまって申し訳ありませんね、何せ創るのが私の生きがいでございますから。こうしてまた余分な一品を作っているわけでございまして。

 さて、私の愛する美しい彼等彼女等はどうなったかと言いますと……。

 そうですね、まずは私の故郷の方から話しますか。素敵な故郷ですよ、文明も文化も伝統も素晴らしい! 人間性もとても素晴らしいですが、まぁあれは表向きの顔でして、内面は最悪ですよ。住めばわかります。だから国民性は大嫌いですね。まぁ私の個人的な話はさておき、あぐりちゃんはあの後どうなったかと言いますと。心を患ってしばらく寝込みます。一年くらい急な活動休止を宣言し、ファンは映画の方に苦情を入れましたが、すぐにあぐりちゃんのブログの方で誤解が解かれ、活動休止と映画は何ら関係が無いと言う事を説明されます。そして休止から一年が経つ頃、あぐりは札束を持って千歳の工房にやってきます。千歳は急に何事かと思い慌てて立ち上がりますが、「千歳先生、絵の依頼をしていいですか?」と言われ、真剣な面持ちで座り直します。そして、千歳は一枚の絵を仕上げました。そこには身が半分朽ちたアキラと、それを抱きかかえる真尋、そしてその二人を照らす光と天上の聖女。千歳は聖女をまともに見た事はありませんが、私の知る限りの聖女の通りに描かれていました。その後、あぐりは俳優業に復活し、数年後に指原と結婚しました。まるで星の付く産婦人科医のように、とても優しい青年でした。それと同時に、千歳も結婚する事になりました。相手は食堂を営む女性でした。学生時代バスケに励み、親から食堂を継いだ後も趣味でバスケをしている人でした。

 円香と健良、マーリンはどうなったかと言うと、マーリンが感染により不老となった症状を解除する方法を発見しました。この不老は半矛盾と同じもので、死ねば矛盾になる可能性が高い。だが千早曰く、矛盾の席は満席。矛盾にはならないと言う事。解除する方法は結城奏にありました。奏の呪いの受けた血液を体内に入れる事で、半矛盾の力と呪いの力がぶつかり、摩擦によって互いに症状を打ち消すという物でした。そして三人は症状を消すことに成功し、残された時間はおおよそ60年弱となりました。不老と言われていますが、正確には時間が止まっていたんです。では、逆に奏に三人の血液を入れたら呪いが解けるのでは? と思うかもしれませんが、それは不可能です。この呪いは聖女にしか解けないもの。私にだって無理ですよ。彼には人として、太陽の膨張から、地球が呑み込まれ、太陽の死、そして、宇宙で最も美しいと言われる太陽の、神の死体を見届ける役目を渡されたのですから。呪いとは言いますが、これも役目の一つ。彼はそう考え、誇りに思っているようです。私もそう考え、彼を称えています。私もあの役目を請け負いたかったですが……私にはすでに仕事がありますからね。兼業も幾つもしてますし。

 では地球から離れ、宇宙のはるか遠く、どこの銀河ともわからない先。聖女に作られた一つの惑星。第二の地球、アークィヴンシャラ。美しい彼等彼女等はここに住んでいます。長い時間をゆっくり過ごし、聖女を崇拝し、穏やかに暮らしています。今まで綴られた通り、特にこれと言って変わった事はしていません。そう言えば、聖女様が帰って来られましたね。前と変わらず元気にお過ごしの様ですよ。ですが、前のように言葉を発することができなくなりました。新たに継げず、己の身をそのまま復活させようとした代償に失ってしまったのでしょう。口にできる言葉は聖女語と、矛盾らの名前をにわかに言う程度です。そう、美紗と同じ症状でした。ですがそれでも、聖女には心を伝える術を持っています。言葉を口にせずとも、禊や、矛盾たちには十分に聖女の想いは伝わっています。私にもおおよそですが、伝わっていますよ。

 矛盾たちは様々な思いと条件のおかげで今があります。ですが実は、1人だけ例外がいるんです。ハッシュだけ、実は条件がほとんど揃っていないんです。まず条件とは何なのか、それはわかりません。私はそう言ったものは専門外でしてね、奏が熱心に探してくれているので、そのまま彼に任せておきましょう。おおよそハッシュがこうなった条件は、彼は生まれは15世紀だと聞いていますが、その時点で感染者でした。そして半矛盾となり、半矛盾の状態で何らかの死を遂げ、矛盾になったと推測できます。まあ、真実は彼にもよくわからないそうですし。神に聞いても答えはしないでしょう。人に知る理由も無いのですから。


 さて、デザートはこんなもんでしょうか。私もそろそろ仕事休めとしますかね。まさかこれを綴っている間に、向こうへ行く事になろうとは思いませんでしたよ。運命の歯車は本当に気まぐれですね。歯車を読んで先を予測したりはするんですが、しょっちゅう思いがけない回り方をする事もありましてね。歯車を動かして先を変えようとしても変えられない時もある。歯車は本当に難しいです。

 宝器も作り、聖女から贈られた石を磨き、布も織った、服を縫った。土を耕して地面を平らにして家も建てた。生活道具を作ったりもした。私の仕事はこんなもんでしょうかね。

 後は大門扉の設計図を作るだけですかね。あぁでも、もう持ちそうにもない。時間が惜しいなぁ……。とりあえず器官だけ書いておきますか。その他は私でなければできないわけではない。その重要な部分だけ書いたら、後は息子たちに任せましょう。優秀な子たちですよ、何せ、私の身体から産んだんですから。ちゃんと人として産んでやれなかったのが申し訳ないですね……仕方ないです、独り身なんですから。

 さ、私の仕事はこんなものです。仕事と言っても、これをしないと生きていけないだけなんですけどね。死にぞこないですから、生きるのがつらいんですよ。

 彼の歯車を速めてしまった事をなんとかしないと……。彼にきちんと謝らなければね。私の都合で歯車を変えてしまった。ここへ呼んでもう長く過ごしてもらおうか。彼にとっては酷かもしれませんが……取り外した分を返すには、こう言う事しかできないんです。

 それでは、私はこれから後片付けをします。ここではこれで最後ですね。ありがとうございました。この後? 私は寝ます。もうずいぶん生と死に苛まれた事か……そろそろ彼の兄弟に抱かれて休みたいんですよ。あぁ、変な意味は無くてね。寝る事しかできませんが。何かあった時はアイツが起こしてくれるでしょう。何かなくても、息子が心配してすぐ飛んでくるんですが。……あぁ、また呼んでる。そう易々と死んでくれはしないって。

 それでは、また。

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