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第三十五話 知名度

 番組開始のBGMと共に拍手が起こる。お笑い芸人サウスタウンがカメラに向かい、

「それでは始まりました!」

「ねー、この時間帯って事は、つまりアレかな? 言っちゃっていいのかな?」

「いや、それは違う。お茶の間に流そうにもね? お偉いさんとかどかさなきゃいけないでしょ? 我々とテレビ局にその力が無かっただけ。ね?」

 観覧席から笑いが起こる。

 松崎が原稿を見て、

「えー改めまして、司会を務めさせていただきます、サウスタウンの松崎と!」

「元吉です。そして」

 元吉がゲスト席を示し、工がカメラに向かい、

「アークィヴンシャ音楽団、アーミューズのチームMと」

 今度は美友がカメラを見て、

「チームLです! よろしくお願いしま~す」

 カメラがサウスタウンの二人に戻る。

「この番組では、アークィヴンシャラからお越しの矛盾の皆さんの地球で叶えたいお願いを叶えてあげるという番組でございます」

「で、もう結構撮って来たんですって?」

 元吉が訪ねると、優が手を上げた。

「はい。僕の願い、女の子の夢を味わうという願いを叶えて来ました!」

 観覧席から拍手が起こる。

「それではVTRどうぞ!」

 番組は着々と進んでいく。テーマパークのお城でドレスに身を包んだ優が可愛らしい姿をふるまうのが見える。

 次に出てきたのが李冴。冬のコミケに行ったものだった。

「ねぇ見て! 大石さん! わあああほら! これ私大好きなんです! あああまだ住民がいるんですね! あの、3部ください! あとキーホルダーも!」

 興奮のあまり英語で話していた。同人販売をしている女性が困った様子で李冴を見る。

「あの……そー、はうまっち……いや違うな」

「ご、ごめんなさい! つい英語が……日本語で大丈夫ですよ」

「あ、じゃあ、2500円になります」

「ありがとうございます~! あの、いつもツイッター見てます!」

「わぁ、ありがとうございます」

「頑張って下さい! 次、次コスプレブース行きましょう大石さん!」

 李冴はADを引っ張り回す。

 次に百足が出てきた。平安時代自分が過ごした宮を見たり、平安京跡地を見て回り、実際どんな生活だったかを説明した。平安時代の言葉が時々出て、スタッフが困惑している様子も写っていた。

「いやぁ……濃いね」

 松崎がそう言うと、観覧席から笑いが起こる。

「いや濃いよ。あの……個性豊かだね!」

「本日はここまでです。次回の放送は、来月? あ、これ月1なんだね。美友ちゃんは夢とかあります?」

「アーミューズの全国ライブ、できれば世界ライブをやりたいです」

「いい夢だね~!」

「世界中の人たちに私のたちの歌を聞いてほしいんです」

「夢はでっかくってね! それではまた来月お会いしましょう、さようなら~」

 番組のエンディングが流れ、CMが流れる。

 あぐりは煎餅をかじった。

「あっけないね」

「結構撮影頑張ったんだけどな~」

 工は悔しそうにソファーでのけ反った。そして隣に座るアキラの膝に頭を乗せる。

 美友が雑誌から顔を覗かせ、

「冒頭の自己紹介だけじゃない」

「視聴率とか大丈夫なの?」

「知らないよ~」

 工が質問を流すように七富を見ると、

「一応、それなりに稼げてますよ。ほら、匿名箱の方に色々来てますし」

 七富がパソコンの画面を見せた。

「へー、結構来てるね。プライベート生活についてと、仕事についてとか、色々質問来てるんだね」

「ファンレターも、もう段ボール20個に到達するよ」

 美友が自慢げに段ボールの写真を見せた。

 美友は画面をスクロールさせながら、

「でもアンチも増えたんじゃない?」

「えぇ? どれですか?」

「『一人くらい殺してそう』、これとかそうだよ」

 一同は眉間にしわを寄せた。

「事実、そうなんだから仕方ないだろ」

 ビールを飲んでいたアーサーの声が飛んできた。

「ワシはUPOにいた頃、戦前に立ったことがある。中東だ。UPOからは出来るだけ殺さず拘束して確保しろと言われていた。だがその頃のワシはまだただの人間や、怪我もするし酷けりゃ死ぬ。だから己を守るためにも何人か殺した。他の奴にも聞いてみぃ? 小町も禊も、マーリンだって、UPO創立時代よりも前の奴らは手を血で汚している」

 七富は顔を曇らせる。

「それは、やはり……」

「仕事やし、禊なんか太平洋戦争に駆り出されてたぞ、徴兵令で」

「今更昔の事を蒸し返したところで何になる。殺意があって自分一人で行った事じゃない。じゃあ戦争帰りの一般人を裁いたか?」

 小町がそう言いながらパソコンの蓋を閉じた。

「いえ、そんな事は」

「殺人犯と言いたきゃ言え。ただし、助けられる可能性があったのに助けず見殺しにしたやつも同じだ。法では裁かれずとも、同じ罪人だ」

 その場に重い沈黙が流れる。

「誰が殺したとか殺してないとか関係ないだろ」

 レオがそう言いながら机の上に足を乗せた。

「俺は人類に殺された。金持ち共の為に汚れ仕事をして罪を着せられて死んだ。尻ぬぐいのための雑巾として死んだんだよ。結局みんな罪人。動物殺しといて俺は殺してないだとか手は汚れてないだとかよく言うぜ」

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