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第十八話 登場して頂きましょう、アークィヴンシャラ国の矛盾代表!

 拍手と完成と共に、メイン司会者であるお笑い芸人のコンビ、サウスタウンの松崎と元吉が登場する。

 司会者席に着くなり松崎が、

「あの~、この番組、もう5年くらいになりますけどね。あのー、何、これいいのかな? ねぇ本当にいいの? だって今まで来たの、お笑い芸人とかアーティストとか俳優とか、いかにもテレビ業界に関わる人だったじゃん?」

「まぁそうだね。僕の嫁さんまで来たし」

「あーお前のあの鬼嫁、いやそれは置いといて」

「置いとくなよ」

「まぁまず来ていただきましょうか! えー、聞いたことない国名だな」

 観覧席から不思議がる声が聞こえてくる。

「ちょっと昔に大変話題になりました、あの国のお偉いさんです!」

「政治家来るのは初めてだね」

「どうぞ!」

 拍手と共に禊が姿を現す。

「どうも、始めまして。アークィヴンシャラ国の矛盾代表、五月雨禊と申します。よろしくお願いします」

 禊は丁寧に頭を下げた。

「超真面目! 超丁寧じゃん!」

「なんか、俺なんかが先に映って、矛盾の他のに怒られそうですけど」

「どうぞどうぞ、座ってください」

 禊はぺこぺこと頭を何度も下げながら席に着いた。

「えーまず、プロフィールから!」

 プロフィールの書かれたボードがスタッフにより渡される。

「生まれたのが、西暦0年。0年!?」

 松崎が飛び跳ねるように席を立った。

「あ、あぁでも、キリストより10年くらい後でして」

 禊が急いで補足をするが、

「いやそんなたかが10年! ちょ、ちょ元吉」

 松崎が元吉を手招きして耳打ちする仕草を取った。観覧席から笑い声が上がる。

「ごめんなさいね、うちの松崎は出しゃばりなのにビビりでね」

 そう言って吉本が台本を取って続けた。

「生まれは日本のどこか。えー経歴は、西暦1000年まで各地を転々とし、1500年まで500年ほど昏睡状態に入る。その後中国の山奥でとある道場に住み込み、武術、医学、生物学など多岐にわたる学問を学ぶ。1980年ごろに、仲間と共に戦争を無くす組織、UPOを建てる。……あの、人間ですよね?」

「え、えぇ、一応……」

 禊は苦笑いをする。

「経歴どうなってんの?」

「え~っとですね、正確な年代とかが」

「いやそうじゃなくてね!」

 観覧席から笑い声が上がる。

「え、今幾つ?」

「2000……80くらいですかね」

「本当に? あの、20051歳とか言ってるけど、実は51歳のサタン陛下みたいなアレじゃなくて?」

「いえ、本当に」

 禊は笑いながら手を振る。

「えー、見た目だって、普通の青年と変わらないのに、ねぇ?」

「よく言われます。見た目のせいで見下されるときもあって、仕事が上手く行かない時もありまして」

「だよねぇ!」

 そこにカンペを持ったスタッフが合図する。

「えー、じゃあ次。好きな食べ物は?」

「米とじゃがいもです」

「趣味は?」

「家事ですかね。掃除とか、料理とか。家族の――あの、矛盾のみんなと今一緒に生活していて、俺が家事全般やっているんですけど、そのみんなの好きな料理を大皿に作ってみんなで机を囲むのが好きでして。なので、だれがどんな味付けが好きなのか、探究しながら作るのが好きです」

「特技は?」

 禊は腕を組んで考え始める。なかなか口を開こうとしないため、観覧席から笑いがこぼれ始める。

「え、考えてなかったの?」

「あの、打ち合わせの時に言ったと思うんですけど、忘れてしまいまして。えっと……確か絞り出したんですけど」

「特技って絞り出すものなの?」

 松崎は笑いながら言った。

「あ、あれです。あの、この言い方は語弊があるんですけど。戦闘ですかね」

「銭湯? 風呂?」

「いえ、戦う方です」

「戦う!?」

「UPOでの仕事で敵勢力と交戦する事がありまして。殺したりは基本しませんよ、許可が出てませんから。戦車に向かって生身で突っ込んで行って、戦車のハッチをこじ開けて戦闘不能にさせるっていう、まぁ主にそんな感じの」

「戦車に生身でハッチを……はぁぁ!?」

 松崎は椅子から転げ落ちる。

「主に押さえ込んで捕獲するって感じですね」

「え、それを何年やってたの?」

「30年くらいですかね」

 観覧席から驚きの声が上がる。

「え、じゃあ男の勲章とかある?」

 松崎が前のめりに尋ねると、吉本が松崎を席に座らせようと押さえ込む。

「ちょっと、失礼でしょうが! 一国のお偉いさんだよ?」

「いえ、構いませんよ」

 禊がにこやかに笑って立ち上がると、松崎も立ち上がって側に駆け寄る。少しためらっていたが、制服の上着のボタンを外し、ワイシャツをズボンから引っ張り出すと、痩せこけた木の皮のような腹を露にした。

 思わずその場の全員が言葉を失った。松崎が急いで、

「この後、飯でも行きません? 奢りますよ」

「いえ、大丈夫です。食事ができないので」

 禊は笑って見せたが、松崎は少し申し訳なさそうな顔をしていた。

「え、この傷は、どうしたの?」

「これはあの、クラスター爆弾にやられた時のでして。腹のこの範囲を大きくこう、ボコっと無くしまして。その時の処置の跡です。傷とかすぐ治るんですけど、この時ばかりは処置が遅れて跡になってしまって。これは矛盾との戦闘でできたものです。矛盾による傷は特に治りにくいので、これとか貫通したんですよ」

「え、待って待って。よく生きてこれたね! すごいな」

 松崎が背中を叩く。

「何で食事ができないの?」

「まぁこれだけ生きて体犠牲にしてきたからですかね、胃の七割が無くてですね。まともに食事ができなくて、毎日茶碗一杯しか口にできないんです」

「だからこんなに痩せてるのか! 骨も浮いちゃって~もぉ~。え、毎日それで平気なの? 死なない?」

「矛盾なので、食事なしでも一応生きて行けます」

「え~っ。ありがとうね、ほらお腹冷えちゃうから、しまって」

 松崎はシャツをズボンの中に押し込んでやる。そして上着を着ながら席に着くと、またカンペが出てきて、

「何。五月雨さんから武術を学ぼう? え、教えてくれるの?」

「あ、そうなんですか」

「知らなかったんかい!」

 辺りに笑いが起こる。

 三人はまた席を立つ。

「そうだ、元吉、お前黒帯だったよな」

 松崎が気が付いたように指さすと、観覧席から歓声が起こった。

「いやいや、もうずいぶん昔。もう若くない」

「いいから、ほら」

 三人でマットの敷かれた方に移動する。

「それじゃ、五月雨さん、好きなように元吉を倒してください」

「え、あの、手加減した方がいいですかね」

「いやいい、いい、大丈夫、本気でやってね」

「あ、では、怪我しない程度に」

 禊と元吉が向き合って構える。そして元吉が掴みかかろうとした瞬間、禊は既に背後に移動し、元吉を掴むと空中を回転して、あっという間に元吉は禊の下敷きになっていた。

「えっ何!? まって何が起きた?」

 松崎はキョロキョロと周りを見回す。元吉は首を振りながら真顔で、

「これダメだ、相手にしちゃいけないやつ。一番ダメなやつ」

 松崎の背後に隠れた。

「えーっと、やり方なんですけど」

 真面目に説明しようと元吉に近づくと、

「やめて! 来ないで! キャー!」

 元吉が高い声を上げながら逃げ回る。観覧席からは笑い声が上がった。


「なにこれ!?」

 美友がテレビを指さして叫んだ。

「いや、見ての通りだよ」

 禊は夕食の片づけをしながらどうでもよさそうに言った。

「見ての通りだけどさ! 何で言ってくれなかったの!?」

「サプラーイズ」

 禊がピエロのようにおどけて見せると、美友は立ち上がって禊に飛びかかった。

「ハッハ、まぁ先に仕事が来たんだから」

「何でよ! 私が先に映りたかったのに!」

「まぁまぁ」

 側にあった菓子の瓶を開けて、口にマシュマロを押し込む。

「もう、そう言う事すればいいってもんじゃないの!」

 美友に揺さぶられたまま、気にする事も無く皿を洗い続ける。

「まさか禊さんがテレビに映る日が来ようとは」

 忍は呆気にとられた顔でテレビを見ていた。

「次の仕事で、アメリカの陸上自衛隊のオハイオ州の基地から、是非ご教授願いたいと来ています」

 七富が新たな仕事を言うと、

「面白そうやんな、ワシも行きたい」

 風呂上がりのアーサーが手帖を覗き込みながら言った。

「地元テレビ局による報道もあるそうですが、どうします?」

 七富が禊に確認を取ろうとその方を見ると、視界に小町の顔が飛び込んできて、

「やるに決まってんだろ!」

 七富の顔を勢いよく両手で挟んだ。

「相手は大国アメリカだぞ? このチャンスを逃したら次は無いだろう! 報酬金はいくらだ?

 早く!」

「お、落ち着いてくらひゃい。えっと、このくらいかと」

 手帳を見せると、小町はそこにマーカーで丸を付け、

「絶対これだけは取れ。いいな!」

 七富に圧を送った。

「小町さんどうしちゃったんですか」

 七富が困った顔で尊を見ると、

「いつもこんなだよ。金の亡者なんだよ」

「誰が亡者だ!」

「大丈夫だよ。ほっぺ痛くない?」

 忍が心配して頬を診る。

「ちょっと痛いです」

「ほらぁ! 小町さんいつも加減がなって無いんですよ!」

「な、何だよ。これくらいじゃ死なん」

「死ぬ死なないの問題じゃないんです! いいですか、我々は矛盾であって彼は一般――」

「あぁあぁわかった! 耳元で怒鳴るな!」

「小町さんだって我を忘れた時こうやって――!」

 禊と尊は二人のやり取りを見て、

「やっぱり親子だよな」

「だな」

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