男の娘とレズ剣士、手を組む
「その時、僕は買い物に出かけていたんです。家に帰ってきたのは、丁度妹が連れ去られそうになっている時で……でも、僕は何も出来なかった。ただ妹が連れて行かれるのを見ている事しか……。自分が情けないです」
「それで、妹が人売りの所にいるのではと考えたって事か。考えは理に適ってると言えなくも無い……でも、人売りについて聞いた所でどうするの、1人で行くの?敵は沢山いるかもしれないって言うのに?」
「これは僕の責任ですから……。たとえ命を落としても、あの子だけは助けたい」
拳をギュ、と握りしめる。
「ふむ……で、妹っていくつ?名前は?可愛い?」
「ブレませんねあなた…。9歳です。プラムと言います。顔も兄贔屓を除いても可愛いかと」
「よし、決めた」
そう言うと、フォリアは立ち上がり、リコの前に手を差し伸べた。
「人売りとっちめるついでに情けない君に協力してあげよう。もちろん報酬はプラムちゃんね!」
「その提案は嬉しいですけど待ってください」
「え、何さ」
「……流石に本人の了承無しは、ちょっと」
そこなのか。妹をこんな女にあげたくないとか、そういう事では無くて、か。
「……分かった。じゃあ1万歩譲ってプラムちゃんが結婚承諾してくれたら君も了承して下さいお兄様」
「誰がお兄様ですか。…仕方がない、いいですよ。」
いいのか。
「よしっ、決まり!そうと決まればまずは準備だな!大丈夫、もうあいつらのアジトは分かっているから!」
「え、何でもう知ってるのですか?」
「さっき言ったでしょう、『人売りとっちめるついで』って。元々仕事だったんだ。人売りグループの壊滅は。だからさ」
「……その割に僕が男だと分かったら見捨れば良かったとか言ってましたよね、その壊滅させる予定のグループ絡みだって知ってるのにも関わらず」
「いくら仕事とはいえ男助ける気にはならないからね」
悪びれもせずに言い放つ。本当に大丈夫なのか、この女で。
こうして、1人の幼気な少女救助作戦が始まったわけである。…もう一度言うが、本当に大丈夫なのか、これ。