男の娘とレズ剣士の出会い2
「あのー……」
その子供のカミングアウトがあまりにも衝撃的だったのか、あれから硬直してしまった女が、話しかけられると深い溜息をつきながら頭を抱え、つぶやいた。
「……失敗した」
「は?」
「私は可愛い女の子だと思って助けたのに、まさか男だったなんて……失敗した、これならあのまま放っておけばよかった」
「……」
駄目だこの人。子供は思ったが、礼は言わねばなるまい。そう思い、向き直る。
「……たとえうっかりだったとしても、僕を助けてくださったのには変わりありません。ありがとうございます。申し遅れました、僕はリコと言います」
「あー、ご丁寧にどうも。私はフォリア、しがない剣士さ。それでは」
そう言うと、フォリアは部屋の出口の方へとスタスタと歩いていく。
「ちょ、え、どこへ行くのですか!?」
「決まってるだろう、他の稼ぎ場を探しに行くんだ。男と一緒にいる理由も無いし。宿代は仕方がないから私が払っておくからゆっくりしていて。私が君を人売りから助けた事とかその他諸々の事は忘れていいから、それじゃ」
「ま、待ってください!」
出て行こうとするフォリアを必死にリコは止める。
「今、人売りって言いました……?」
「ああそうか、君あの時気絶してたか。そうだよ、君はあの時連れ去られそうになってた。可愛い子があんなゴミ共の手に落ちてたまるかと思ったから助けたのに、なのに……!」
ブルブルと震え始める。そんなに悔しかったのかこいつは。
「お願いします、人売りについて何か知っていたら教えてください。僕にやれる事なら何でもします、なのでーー」
「待った、何なのさいきなり。君人売りに用でもあるの?何で?」
フォリアは軽く戸惑う。顔には正直早く帰りたいと言う風に書いてあるが、流石に必死に頼み込む子供を振り払う事は出来ないのだろう。人間として。ーーたとえそれが男であっても。
「……妹を、探しているのです」
「ちょっとそれ詳しく」
妹、という単語を聞いた途端にフォリアの目が光り、リコの前に正座する。現金なものだ。と、いうより見境がなさすぎる。
リコは口を開き、説明を始めた。
「あれは3ヶ月前の事でしたーー」