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嫌われ者の快進撃  作者: 異夜
第一章 快進撃の始まり
9/33

第9話 限界突破

※少々残酷描写がありますので、ご注意下さい。


※9/21 誤字脱字修正しました。


一体どれぐらいの時間が経ったのだろう。

ずっと景色の変わらない洞窟で戦っている為、時間の感覚がおかしい。

数十分か?数時間か?あまりの戦闘の激しさで流れる時間の感覚も狂っている。


あの悪魔から受けた攻撃で、セイラさんから頂いた剣も負担が重なる。

その証拠として、剣先が欠けてしまっている。

ミリアから託されたナイフは、何故か刃が欠けるどころか刃毀れもしなかった。

やはり彼女の言う通り、特別なナイフなのか。


それよりも今の状況だ。

一向に助けが来ない。ずっと僕一人で戦っているのだ。

想定の範囲内ではあったが、まさかあの6人、僕を見捨てたんじゃないだろうか。


僕の攻撃は未だ効いている様子もない。

こちらが傷だらけになり、体力を奪われる一方だ。


「ぐうッ!!」


絶え間なく繰り出される大剣の振りを、僕は必死に捌き、回避していった。

隙が出来れば攻撃。しかし全く効いていないようだ。

対してこちらに隙が出来てしまえばーーーー。


「ッ!!?うがぁッ!!!」


強力無二の攻撃を受けることになる。

今回は横腹を殴られてしまったのだが、息が出来ないくらいに苦しい。

悶えてその場に伏せようなどしたら、もれなく一刀両断されるのでそれだけは避けようとぐっと堪えて意識を保つ。

何故こんなにも巨大な剣を軽々しく、直剣の様に振れるんだ。

幾ら巨体だからって理不尽にも程がある。

こんなの、僕には絶対敵うはずがない。力の差が歴然だ。


「んんッ!?」


体に限界が来たのか、思わず大量の吐血をしてしまいすぐに手の甲で押さえる。

ボタボタと数滴、数十滴と紅い液体が溢れるが、口内にあるものはすぐに飲み込んだ。

持っている剣は寧ろ自分の血で汚れている様なもんだ。

目の前がぼやけて今にも倒れてしまいそう。


「はぁ…はぁ…」


口元が血で汚れると、コートの袖ですぐに拭き取り、二本の剣を構える。

まだ、倒れるわけにはいかないんだ。

黒いその悪魔は依然として平気な顔だ。変わらずのその表情が段々と憎たらしくなってくる。


悪魔は咆哮をあげた直後にこちらに走ってくる。

そしてその勢いを乗せ、大剣を大きく振り辺りを薙ぎ払う。


攻撃こそは避けれはしたが、風圧で吹き飛んでしまう。

吹き飛んでしまった体は勢いよく壁に激突し、地面へと力なく倒れた。


「う、ぐ…!」


これ以上の戦闘は無理があると悟った僕は逃走しようと模索する。

が、どう考えても逃げ道などない。第一、僕にはもう逃げるだけの気力もない。

後がない僕を悪魔は追い詰めてくる。

僕は必死の思いで、力を振り絞り立ち上がった。


するとその時だった。この洞窟内で変化を感じたのは。

洞窟の出入り口辺りで音が聞こえる。大勢の足音の様だ。

その音はこちらに近づくと共に、足音の正体が姿を現わし始める。


「おい!大丈夫か!まだ生きているなら返事をしろ!」


残念だけど大きな声を出せる程、僕には体力がないんだ。

それよりようやく、ようやくだ、助けが来たのは。


姿を現わしたのは5人の大男揃いのパーティーだった。

腰にぶら下げている水晶の色が赤で統一されていることから、それなりの戦士なんだろう。

そのパーティーと続く様に現われたのは、あの少年少女のパーティーだった。

足を切断された小太り少年はいない為、5人で来ている。


野太い声でこちらの安否を確認した男に気づいた悪魔はそちらの方に顔を向ける。

男は悪魔と目線が合うなり、冷や汗を垂らし始めた。


「!?う、嘘だろ!?あ、あの狂乱の悪魔(フレンジー・デビル)じゃねぇか!!!」

「何だと!?確かそいつって、あのランク銀の7人パーティーですら苦戦する様な奴じゃねぇか!?」


その話を聞いて唖然とする。

通りで理不尽過ぎる強さだ。始めから勝てる見込みなんてなかったわけだよ。

というか、助けてくれないのか?ずっと立ち続けてるけど。


「何で奴がこんな所に!!」


悪魔は男達を攻撃対象として狙いを定め、大剣で薙ぎ払いながら突撃していく。

大男パーティーの中に、大剣持ちの男が飛び出し悪魔の攻撃をその剣で受け止める。

が…。


「う、ぐああぁぁああ!!!」


難なく悪魔に吹き飛ばされた大剣持ちの男は壁に叩きつけられる。

男が持っていた大剣も、悪魔の攻撃には敵わなかったのか砕けてしまった。


「な、なんだと!!?こんな、こんな奴、敵うわけがッ!!」


助けに駆けつけてきたのに、早々に怯えてしまっては意味がないだろ。

あの少年少女パーティーの内、少女二人はその場にヘタレ込んですっかり泣いて助けを懇願している。


「ちきしょう!!この化け物がぁぁ!!!」


二人程大男が悪魔の前に立ち、戦う意思を見せるがその勢いも虚しく薙ぎ倒されてしまう。

あんな巨漢ですら勝てないその悪魔は、何の変化も見せず目の前の生物を排除しようとする。

どうしても非力な僕らでは勝ち目などなかった。


(これが僕の最後なのか…)


こんな思い、確か奴隷の時で死ぬ前にも思ったことあったな。

あの時は見捨てられて、逃げ場も方法もなくて、何も出来ないまま死んでいった。

そして今の状況も、やがて死体の山が作られ自分もその仲間入りを果たすことになるのか。


悪魔は咆哮をあげる。咆哮だけでも周りに風圧が生じている。

ここで終わりなのか…。



ーーミリアちゃんを守ってほしいんだ、ルーア君にはーー



「!!」


突然、頭の中でそんな言葉が()ぎる。

これはユニさんと会話していた時に、ユニさんが放った言葉だ。

この言葉が()ぎると僕は一気に薄れていた意識を取り戻す。


「…ツッ!ぐ、うぅッ!!」


膝をついていた状態から、力を振り絞ってゆっくりと立ち上がる。



ーー私は…忌み子は、何も持ってないのよーー


今度はミリアの言葉だ。

あの時ミリアは、暗い顔をしていた。それが頭の中で映像の様に浮かび上がる。


「あ、ぐッ!う、がぁぁ!」

(そんなことない、ミリアは僕に文字や戦い方を教えてくれたじゃないか)


弱まっていた剣の柄を握る手に、再び力を込め握り直す。



''君がどんな運命を辿るのか、私に見せてほしい''



その言葉に、僕は意識を復活させしっかりと立ち上がった。

剣を構え、今度はこの悪魔を倒すという志しを持ち、歯を食い縛る。


すると悪魔はこちらの気配を感じたのか、こちらに振り向き大剣を構えた。


「はぁ、はぁ…!(負けて、死んでたまるか…!僕はこの先に…!)」


悪魔は咆哮をあげると同時に、こちらに突撃し始め大剣で薙ぎ払う。

僕自身も悪魔に向けて突撃し、悪魔の攻撃を避ける。


「ッ!!(この先に…!英雄に…!誰かを守れる、英雄にッ…!!)」


風圧で体が吹き飛ばされそうになるが、ぐっと堪え吹き飛ばされない様に耐えると、直様反撃しようと悪魔の懐に潜り込む。

そして、悪魔の腹を斬りつけ、一旦後退し様子を見始めた。


「あの餓鬼!まさか一人でやるつもりなのか!?」

「無茶にも程があるぜ!!」


男達が何やら騒いでいるがこの際関係ない。

駆けつけたのに戦いに参戦しない輩には用はないのだ。


先程斬りつけたはいいが、やはり効いてないようだ。

悪魔にとっては何かが当たったという感覚程度なんだろう。

でもそれでいい。攻撃出来ないよりかはマシだ。


悪魔はその巨大な剣を直剣の様に振り始める。

これを全て捌いたり、回避するのは難しい。しかしここで立ち向かわなければ、こっちが殺されるんだ。避けるだけじゃダメなんだよ。

立ち向かわなくちゃ。


「ぐぅぅッ!!」


「あの餓鬼…人間じゃない…人間にあんな動きと反応なんか、出来っこねぇよ…!!」


悪魔の攻撃を避けたり受け流したりして、どうにか接近することが出来ると、

僕は無力とわかっていても攻撃を加えようと悪魔の腹を斬りつける。


「チィッ!!」


危うく悪魔に掴まれそうになるが、すぐに離脱し難を逃れる。

さて、どう対処しようか。弱点がなさそうに見えるが、必ずどこかにあるはずなんだ。

この悪魔を倒せる打開策がきっと。


「何モンだよあの餓鬼!本当にランク白なのか!?」

「回避や受け流しの技は上手い…だが攻撃が…!」


大きく振られる大剣を回避する中、僕はあることに気づく。

悪魔の肘の内側だ。あそこは関節辺りでもあるし、人間として考えても弱いはず。

一か八か、賭けてみようじゃないか。


「ッ!ハァッ!!」


大剣攻撃を回避し、悪魔の懐に素早く潜り込んでいく。

そして回転で遠心力をつけ、そのままの勢いで悪魔の右腕、肘の内側を狙ってナイフを力強く突き刺す。

そして、さらに深く刺し込み、捻り、そのまま関節部分から腕を切り裂いた。


大量の黒い血液が吹き出し、付近にいた僕はその血液を全身に浴びる。

悪魔は悲鳴をあげながら暴れ出し、右手に持っていた大剣を落としてしまう。

僕の狙いは的中だった。お陰で大剣という、厄介な攻撃手段を封じることが出来た。


悪魔はさらに暴れ出した為、悪魔の近くにいた僕は思わず吹き飛ばされてしまう。

がしかし、咄嗟に体勢を整えバク転をしながら地面に着地をし、そのまま地面を強く蹴って悪魔に突撃する。


「うおぉぉおッ!!」


悪魔の攻撃の合間を縫う様に潜り込み、右手に握られている剣で悪魔の右腕を関節辺りから切り落とした。

その影響でか、悪魔の攻撃で亀裂が走り刃が欠けていたその剣は、力尽きる様に折れてしまう。

セイラさんから頂いた剣でもあるし、大いに活躍してくれたしで、帰ったらセイラさんにお礼を言おう。


「はぁ…はぁ…」


右腕を失った悪魔は、激昂したのか体表に紅い血管と光を浮かび上がらせ咆哮をあげる。

明らかに今までよりも強い咆哮だ。

悪魔は怒りのまま左手の拳でこちらを殴りに掛かってくる。

しかし、単調な攻撃は避け易いのにも程があった為、難なく回避すると同時に僕は悪魔の落とした大剣の元へと近寄る。

落ちている大剣の柄を、空いている右手で掴み持ち上げようとした。


「おいまさか!あの餓鬼、あんな馬鹿でかい剣を持つ気か!!?」


僕は力を最大まで込め、あれ程巨大な剣を持ちあげる。

しかし、僕の体重が軽い所為かちゃんと持つことが出来ず、安定性がない。

ならーー。


「ッ!う、おおぉぉお!!」


悪魔が突撃してくるのを利用して、回避して遠心力をつけてやった。

こうして持ち上がった大剣を利用して、僕は悪魔の体に向けて大剣で斬りつける。

その切れ味と衝撃は凄まじく、鋼の様に硬かったあの肉を易々と斬り裂くことが出来た。

斬り口からは大量の黒い血液が吹き出る。


こちらの攻撃により怯んだ悪魔の隙を逃すわけもなく、僕は立て続けに斬りつけていった。


「ぐ、ああぁぁぁああ!!!」


何度も、何度も斬りつけていき、やがて悪魔の全身から血液が吹き出す様になると悪魔はひざまづいた。


「ッ!これで、終わりだぁッ!!」


黒く、そして巨大なその剣を、僕は悪魔の頭上から振り降ろし、悪魔を両断した。

悪夢の僕の様に、容易く、綺麗に斬り裂いたのだ。


悪魔の死体は、大量の血液を辺りに垂らしながら撃沈する。

僕はその場にヘタレ込んで、力なく倒れた。


疲れた。今言えるのはその一言だけだ。



「や、やりやがった…あの化け物を、一人で…」

「なんなんだよ…何者だよ、あの餓鬼…」


僕は傷だらけで、元々意識が薄れていたのもあってか、戦闘が終わってすぐに目の前が真っ暗になり、そのまま意識を失った。

瞼の奥では、誰かが駆けつける様な音が聴こえる。

それもやがて全く聴こえないくらいに薄れていった。







8話の続きで、元々8、9話は一つにまとめようとしたのですが、流石に長過ぎたので分けました。

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