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嫌われ者の快進撃  作者: 異夜
第一章 快進撃の始まり
5/33

第5話 暴力の矛先

9/13 後書き追加しました。

 

 ''もう一つ、君に伝えることがある''


 転生前、神様?との会話をまるで映像化して現れているかの様に思い出す。


 ''君には、可能性を見出せる様に少し細工をしておく''


 ''君がそれを望むなら、君がその力を使う素養の持ち主なのか、

  君がどんな運命を辿るのか、私に見せてほしい''


 会話が終わると同時に霧の様に消え、目の前が急に真っ白になっていく。

 そしてプツンと、何かが切れた様に今度は真っ暗になった。








 ''…き…て…''


 誰かの声がする。声色からして少女の様だ。


 ''…お…きて…''


 段々と言っている言葉が明確になってきた。声もはっきりと聞こえてくる。


「起きて、ルーア」


 耳元、というよりその付近ではっきりとした声で突然呼び掛けられる。

 声に過剰に反応した僕は飛び起きる様にして目を覚ましたと同時に、頭部に強い衝撃が伝わる。


「…?」


 目を開けると、天地が逆さまになっておりそのまま身体は床へと叩きつけられる。

 どうやら、飛び起きた拍子にベッドから転げ落ちたらしい。上半身を起こし、周りを見渡すとベッド付近にミリアが立っていた。


「何してるの、それに驚き過ぎ。ベッドから転げ落ちる人なんて初めて見たわ」

「…あれ、何でミリアがここに…?」


 頭を掻きながら立ち上がり、転げ落ちた拍子に共に床に落ちた掛け布団をベッドの上に戻す。

 相当な出来事だったのだろうかと、あまり笑えない状況である。


「遅いから起こしに来たの。いつもは早起きなのに、珍しいわね」


 珍しいかはさておき、実は早起きは得意ではない。

 奴隷時代は毎回早朝に主人からの暴力で起こされていた為、早寝早起きの習慣が身についたわけでもなく、時節、フラッシュバックの様に奴隷時代の事を思い出して起きてしまうのだ。


「…ごめん…気をつける…」

「…まぁいいわ。それより朝食食べに行くよ。今日は朝食を食べたら

  すぐに出発するって昨日決めたでしょ」

「あ、うん…わかった」


 取り敢えず僕が目を覚ました為、ミリアに用事はなくなり朝食を摂ることだけとなった為、僕もついて行き朝食を頂くことにする。


 初めて依頼を受け、達成したあの日から五日。

 水晶の色は変化することもなく、ミリアから稽古をつけてもらいながら依頼を受ける日々となっていた。

 言葉や文字も段々と理解出来る様にもなり、依頼書に難儀することもなくなった。これで少しは彼女に近づけているだろうか。




 ◇




「それじゃあ行ってくる」

「行ってらっしゃ〜い」


 今日もまたユニさんに見送られながら二人で出発した。

 ここ最近でわかった事はユニさんが経営する宿屋は極端に客が少ない。というのも今現在では、僕とミリアの二人しか宿泊していないのだとか。

 経営事情などはまだ理解出来ていないのだが、少し心配になってくる。


 ギルドに来ると、すぐに依頼書を見に二人で同じ場所に向かった。


「今日は何の依頼を受けるの…?」


 ボードに貼られた依頼書を見渡しながら、ミリアにそう尋ねる。

 するとミリアは一枚の紙を手にし、「これ」と呟きながらこちらの目の前に差し出してきた。


骸狼(スカルウルフ)8匹の討伐…?」

「そこまで強くないから安心して。頭が弱点だから見極めながら、

  攻撃すること。すばしっこいから注意」


 彼女からそう助言を受け、どんな敵なのかを想像しながらイメージトレーニング?をする。


「さ、行くわよ。場所は坑道近くにある暗い森。少し距離があるから

  少し急ぎながら行くわよ」


 受付を終えたミリアは説明しながら僕の前を横切り外へと出ていく。

 彼女の後をついて行きながら「わかった」と呟き、コートを靡かせながら目的地へと向かった。


 時間をかけ、対象がいる森付近の坑道に到着すると、坑道入り口の近くに何やら炭鉱夫の様な男性がいた。

 ミリアはその男性に近寄り話し掛ける。


「依頼で来たんだけど、骸狼(スカルウルフ)はそこの森にいるのよね?」

「おー!戦士さんか!おう、そうだ。奴らはそこの森にいる。

  さっき見てきたんだが、また増えちまってな。早いとこ片付けてくれ!

  追加報酬は後々払う」


 男性の話を聞き早速向かうと、森内部で所々動物の死骸を発見する様になった。


「…食べられてるの…?」

骸狼(スカルウルフ)には捕食本能はないのよ。単純に殺戮が目的。

  元々、死んだ狼が呪いによって蘇ったものが発端なんだけど」


 木々の根元も食われ派手に倒れている中、それを潜り抜けながらミリアはそう説明する。

 歩みを進めていく度に、折れた木や死骸が増えていった。

 すると突然、ミリアは何かに気づいたのか素早く木の陰に隠れた。僕もつられて木陰に隠れる。


「…あそこ見て、あれが骸狼(スカルウルフ)よ」


 彼女が示す方向に目を向けるとそこには、骨だけとなりながらも活発に活動している狼が5匹程いた。

 口元は動物の肉を牙で引き裂いたのか、紅い血で汚れ、牙には動物の肉の欠けらが引っ掛かっている。

 鉄の臭いも漂うのもあり、非常にグロテスク。


「あれ…僕らで倒せるの…?」

「常人なら無理ね、特にランクが白の戦士とか冒険者とか」

「僕じゃないか…」


 ミリアの話により一瞬絶望しかけるが、ここまで来たからには引き下がるわけには。

 それに僕には、まだ銀貨10枚返しきれていないのだ。まだ、宿泊代が…。


「行くわよ、素早く仕留めないと次々と来るから注意」


 ミリアが早速飛び出し、勢いで一匹の頭を短剣で攻撃し素早く仕留めた。

 僕もつられて飛び出し、見様見真似で剣で頭を攻撃するといとも簡単にモンスターの身体は崩壊していった。


「!意外と脆い…?」

「その分、集団で来られると厄介よ」


 お互いの背中を合わせ、剣を構えると狼達は途端に僕等二人を囲む。

 数は合計で10匹。そりゃこの数で襲われたらひとたまりもないし、そこらの動物が食い殺されるのも無理ないな。


「後ろをとられない様に立ち回るの」

「…わかった」


 そして二人同時に地面を蹴って飛び出すと、狼達もまたこちらに向けて口を開けながら走り出してくる。

 タイミングを合わせる様にして剣で薙ぎ払うと、見事頭に直撃し攻撃の勢いで身体は散っていく。

 続いて向かってくる狼の攻撃は、剣で防御しそのままの体勢で地面に叩きつけて潰した。


「ッ!確かにすばしっこいなぁ…」

「後ろ!」


 ミリアの掛け声に反応し、後ろを振り向くと一匹の狼が大きく口を開け飛び上がっていた。

 直様剣を投げ口元に剣を突き刺さると、倒れる様に地面に落ちる。


「後ろをとられない様にしてって言ったでしょ」

「…ごめん」


 素早く剣を回収し、周りを見渡すと数は2匹に減っていた。

 5匹程ミリアが素早く仕留めたらしい。狼2匹は僕等二人の目の前にそれぞれ配置につく。

 一騎打ちの様な形になると、狼と僕等は同時に飛び出した。


「ッ!ハァッ!」


 渾身の突き攻撃を狼の頭に喰らわせ倒す。攻撃の勢いもあってか、身体も巻き込んですぐに身体は消滅した。


「ふぅ…」


 倒し終わり、一息つくと背中に背負っている鞘に剣を納める。実はこれがやりたくて背中に剣背負ってたり。


「全部倒し終わったみたいね。ね、それ程難しくなかったでしょ」

「…多分君がいなかったら今頃僕、そこらの動物と同じ様になってたと思うんだけど」


 ミリアの言う通り難しいわけでもないが、ランク白の戦士だとやられるのも納得出来てしまう。難しいのか簡単なのかわからない。


「…?これって…」


 足下に目を向けると、小さな紫色の結晶が一つ落ちているのに気づいた。拾い上げ、なんなのかと見ているとミリアはそれに気づく。


「それは魔晶石ね。骸狼(スカルウルフ)達の核よ」

「魔晶石…?」

「そ、魔晶石には魔力が込められていて、大きさ次第ではそのまま魔法も使えるわ。

  ただこの大きさだと魔法どころか、自分に魔力を取り込んでも自然消滅するわね」


 確かにこの結晶の大きさは、人差し指の第一関節の半分程度しかない。ミリアの言う事も納得出来る。


「まぁ、魔晶石は珍しいし換金すればいいんじゃない?安いでしょうけど」


 取り敢えずポケットにしまい、後々使い道でも模索しよう。


「さ、報告しに行きましょ」

「わかった」





 ◇





「依頼達成確認致しました。今回の報酬でございます」


 彼女は依頼を達成したことを係員に伝えると、報酬の入った袋を受け取りロビーの椅子に座っている僕の所まで戻ってきた。


「今回の報酬ってどのくらいなの…?」

「…銀貨10枚と銅貨15枚ね。紙には銀貨6枚って書いてあったから、

  追加報酬分がこれみたい」


 正直しょっぱい気もする。

 確かに難易度的には簡単な方かもしれないけど、ランク白の皆様は死に物狂いでやってるだろうに。

 あまり納得がいかない気もするが、兎にも角にも貰える分だけ感謝しないと。


 以前の僕には何も与えられなかったし。


「…当面の生活費用としてはまだ足りないかな。貴方の剣は大丈夫?」

「え…?」


 すぐに剣を確認しようと取り出し、剣の刃を見てみると所々刃毀れしていた。


「安物だから仕方ないかな。ちゃんとした物を買わないと、

  すぐ刃毀れしちゃうから」

「それってどれくらいするの…?」


 なんとなく値段を聞いてみると、ミリアは指で数える様にして計算する。


「大体、銀貨20枚〜金貨1、2枚分ね」

「え…」

「普通は大体そんなものよ。貴方の剣みたいな安物は、大体稽古用だから。

  実戦で使える物は何度も使える様に鍛えてあるし」


 それを聞いて、血の気がサーっと引く様な感覚に見舞わられ途端に気が沈む。だとしたら彼女の短剣は相当な物なのかと考えを改めた。





 ◇





「''スキル''?」

「そ、魔法とは別の個人が持つ能力みたいなもの」


 ユニさんが作ってくれた昼食用の弁当を食べながら会話していると、突然そんな内容に移った。

 今いる場所はギルド近くの丁度良い木陰。芝生やら風やら、やたら気持ち良い。


「僕でもそれは知ってる。確か人によって違うんだよね…?」

「えぇ、まぁそもそも''スキル''なんて発現すること自体珍しいんだけど」

「ミリアはあるの?スキル…」


 すると急にミリアは食事の手を止める。何か至らない事でも僕は言ったのだろうか。

 彼女は途端に暗い表情を表した。


「私は…忌み子は、何も持ってないのよ…。魔法を詠唱出来る程の魔力も…

  才能と運が絡むスキルも…全部努力でなんとかしないといけない…

  それこそ、人生を費やすくらいに…!」

「…ミリア…」


 二人して暗くなり、場の雰囲気が悪くなってくる。食事も進める気がなくなっていった。


「おークソ餓鬼の二人じゃねぇか」


 突然、やたら暴言を吐いてくるあの男3人が僕等の目の前に現れた。

 実は今の今まで、見掛ける度に暴言を吐かれ消えろ、消えろと催促されている。


 ニヤついた顔でこちらを見下してくるのが、少し気に食わない。

 というより、言葉や文字を教えてもらっている所為か、色々な感情を持つことが出来る様になった気がする。


「何だ?二人してお食事中だったか?そりゃあ邪魔したな!」


 男はそう喋りながら、僕が手にしていた弁当を蹴り上げる。力強く蹴られた所為か、弁当箱は砕け散った。


(あ…また借金が増えた…ユニさんに謝らないと…)


 冷や汗を垂らしながら、砕けた弁当箱の破片を回収し男などは他所にそんなことを思う。


「!ちょっと、何するの!」


 今の光景を見たミリアは立ち上がり、男の前に出る。


「あぁ?今のは単なる挨拶だろうが。例えばこんな風に!」


 急に男は声を上げながら僕の頭を掴み、木の幹に強く叩きつけた。


「いッ!」


 尽かさず男は、膝で僕の顔面を強打する。

 が、痛い!っと思う程でもなく何か当たったという感覚しか伝わらなかった。

 擦れて、血が滲み出てはいたが、これならまだ主人の暴力の方が痛い。僕は強打した箇所を手で押さえて、平気な顔でミリアに目を向ける。


「!や、やめなさいよ!」

「ふん、調子乗りやがって。こっちは親切に教育してやってんだろうが!」


 男はまたもや声を上げながら僕を攻撃する。

 渾身の蹴りで顔を攻撃しているのだが、やっぱり然程痛くない。ただ衝撃は強い為、痛がる程でもないと言えば嘘になる。


「!や、やめて…!やめて、よ…」


 男は気弱な声を出すミリアの言葉を耳にすると、僕への暴力を止めミリアに顔を向けた。先程のニヤついた顔ではなく、睨む様な表情で。


「だったら引っ込むか、消えろ」


 男はそう言い残し、3人でどこかへと去っていった。僕はそれをキョトンとした表情で見詰めながら、頭を掻く。


「ルーア!大丈夫!?」


 急にミリアに迫られ、驚いた拍子で身体がビクッと強く反応する。

 呆然とした時にされると本当に驚いてしまうのが、なんとも…。


「え…まぁ、大丈夫だけど…あんまり痛くないし」

「…ごめん、なさい…私の所為で…」

「いや、ミリアの所為じゃないって…。ここに僕がいたから、やられただけだよ」


 慰めるつもりでそう答えたのだが、何か違うなと言い終わった後に感じる。

 どんな言葉を掛ければいいのやら。

 ミリアは懐から布を取り出し、僕の顔面に与えられた傷を押さえ始める。ピリッとした痛みはあり、途端に痛がった。


「…弁当箱って…どのくらいするんだろ…」

「え…?」


 僕が呟いた言葉に、暗い表情だったミリアがキョトンとなる。


「あーいや…ほら、弁当箱壊されちゃったから…ユニさんに謝らないとだし、

  弁当箱も弁償しないと…」

「…自分の傷より弁当箱優先…なの…?」

「…まぁ、うん」


 するとミリアはクスッと密かに笑みを浮かべ、表情が少し明るくなった。

 何故笑ったのかちょっとわからなかったが、彼女に明るさが戻ったならそれでいいやと妥協する。


「帰ったら一緒に謝りましょ、弁当箱も買ってね」

「…うん」





 ………………………………………………


 ……………………………


 …………


 …





「天気、悪くなってきた…」

「そうね、そろそろ引き上げましょうか」


 依頼中に急に天気が悪くなり始め、少し不安に陥ってくる。幸い、依頼は達成していた為中断することはない。

 ただ、天気の程は雲がゴロゴロと唸っているところだろうか、湿気や雲の色からして、雨が降りそうである。





「依頼達成確認致しました。今回の報酬でございます」


 建物の入り口で天気の程を確認している最中に、後ろでその声が聞こえる。報酬を受け取ったミリアはこちらに天気の具合を確認しにやってきた。


「どう?天気は」

「…大雨が降ってる。どれくらい続くのかわからないけど…」


 風景の先が見えない程の雨量で、地面は水浸し。昼間は天気が良かったのだが、急にこんなことになるとは。


「…急いで宿屋に戻りましょ、これ以上雨が強くならないうちに」

「わかった」


 早速入り口から外へと飛び出し、急ぎ走って宿屋に向かう。

 フードを被り雨に濡れるのを防ぐが、雨が強過ぎのと走っている為降ってくる角度が変わり、顔はすぐにずぶ濡れになった。


 街中を、ミリアを先頭に走っていると突然目の前でミリアが倒れる姿を目にした。

 苦しそうな雰囲気で突然倒れた為、何事かと立ち止まる。


「…?ミリア…?」


 近寄ってみると、ミリアの付近にある路地裏から別の影が現れ姿を見せる。


「まーだ街にいたのかよ。さっさと消えろっつったろ」


 昼間のあの男3人が、ミリアの近くで姿を現す。

 僕等と同じ様にずぶ濡れの様子であり、何やら武器を手にしている。暴力も域を越えれば、武器で攻撃する様になるのかと悟った。


「ミリア…!」


 どうやらミリアは腹部辺りを攻撃された様で悶え苦しんでいる。

 男達はそんな状態のミリアを蹴るなどの暴力を与え始め、昼間の僕の様に痛めつける。


「ッ!ミリアから離れろ…!」


 暴力を見過ごせなかった僕は、果敢に男達を静止しに立ち向かう。が、結果は当然僕が返り打ちに合うだけだった。

 3人の男の内、武器籠手(ガントレット)を装備している男に腹を殴られる。痛みはあまり感じなかった、が、衝撃は一級品。

 拳が腹の奥までめり込むと、僕は苦しみながらその場に倒れる。そして、何か強い衝撃がもう一度腹に加わり、さらに苦しみ出す。


「ッ!?(衝撃が…もう一回…!?一回しか殴られていないのに…!)」

「へ、どうだ?俺のスキル《衝撃追加(インパクトアディション)》の味はよ」

(…す、スキル…?)


 声が出せない程苦しく、まるで腹の中をぐちゃぐちゃにされた様に気持ち悪い。

 立ち上がれず、抵抗出来ないでいると、男達は暴力を再開しミリアをとことん痛めつける。


「ミ、リア…」


 霞んだ目でミリアの様子を伺うと、途端に僕は目を見開いた。

 先程からミリアがピクリとも動かないのである。

 気絶しているのか?それとも苦し過ぎて動けないのか?まさか、死んでいるのか?そう思った僕は、這いずる様にしてミリアに近寄ろうとする。


「や、やめ…ミリア、から…離れ…」

「あぁ?んだ餓鬼、てめぇも沈めてやろうかッ!」


 男は僕の頭を蹴り上げ、衝撃で身体が起き上がると男は頭を掴み、思いっきり地面に僕の頭を叩きつけた。


「ふぅ、これだけやればいいだろ。懲りたならさっさと消えな」


 男達は笑いながらそう言い残し、昼間の様にその場を去っていった。動けず苦しんでいる僕等を大雨の下、放置して。


「ミリ、ア…大丈、夫…?」


 声を掛けてみるが反応はない。

 余程強い攻撃を受けたのだろう。明らかに不意打ちでもあったし、油断していた。何故、こんなことになったんだろう。

 僕等は特に何もしていない。何も悪いことはしていない。しかし何故、傷つけられるのだろうか。


 忌み子だからなのか、一人の人間としてだからか。

 僕はミリアを見て、先程の惨状を体験して死ぬ直前の事を思い出した。世界は理不尽で、誰もが自分の敵で、生に諦めた自分を。


「ミリア…」


 何故ミリアが、何故ミリアが傷つけられるのか、と思いを増幅していくと

 僕は、苦しみながらも立ち上がろうとした。男達は歩きながら去っている。走れば間に合うと確信し、

 剣を抜きそれを杖にして立ち上がろうとする。


「(立て…!立てよ…!ここで立ち上がらないで、どうする…!)う、ぐぅッ!!」


 ヨロヨロと動めきながら、地面に足の裏をつけ力を振り絞り一気に立ち上がる。


「ッ!!ぐ、あぁ!」


 声を上げながら必死の思いで立ち上がると、僕は男達の背中に向けて剣を構える。

 走れば間に合う、その程度の距離だ。


「はぁ…はぁ…ッ!!」


 地面を思いっきり蹴り走り出す。

 この上のない程の走力で走っているのが感じられ、すぐに追いつこうとしていた。


「……ルー…ア…」








「ははは、あの餓鬼の顔を見たか?滑稽だったよな」


 男の笑いの矛先はミリア。男の笑いに他の二人もつられて笑う。そんな中、大剣を背負った別の男が振り返り、笑う男達に呼び掛けた。


「!おい後ろ!気をつけろ!」

「あぁん?」


 3人の男が振り返ると同時に、僕は飛び上がっている最中に剣を渾身の力で振り下ろした。

 その場の豪雨の雨粒すら、一緒に薙ぎ払うくらいに。


「ッ!!」





 ◇





 依然として弱くならない大雨の中、僕はミリアを抱き抱え宿屋へと戻っていく。

 彼女が着用していたローブを彼女の身体に掛け、大切に運ぶ。以前の僕なら根を上げていたであろうが、今の僕は何故か彼女の身体は軽く感じられた。

 沈んだ表情で宿屋の扉をそっと開けると、目の前にはユニさんが心配そうにこちらを見詰めて立っていた。


「ルーア君、大丈夫…?凄い雨だし、中々帰ってこないから心配したよ?」

「ごめん…なさい…」


 ユニさんは暗い表情でいる僕とは別に、僕が抱き抱えているものに気づく。


「!それ、ミリアちゃん…?どうして傷だらけなの!?それにルーア君も!」

「…ごめん…なさい…」


 謝ることしか出来なかった僕は、立つのも精一杯でありその場にミリアを抱き抱えながら尻餅をついた。

 扉を背にして、疲れた様に溜息をつくと瞼は重く感じられ、そのまま目を閉じてしまう。


 薄れゆく意識の奥では、ユニさんが僕の名前を呼ぶ声が数回聞こえ、やがてその声は消えていった。






暴言を吐く男はスイク、ガントレットを装備している男はバイル、

大剣持ちさんはナダという名前です。3人の今後の登場は未定(多分出ないんじゃないかな?)


スキル《衝撃追加(インパクトアディション)》は、その名の通り、攻撃の衝撃を

もう一度与えるものです。スキル使用による魔力消費とかは特にないです。

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