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嫌われ者の快進撃  作者: 異夜
第一章 快進撃の始まり
4/33

第4話 初陣と実感

9/13 後書き追加しました。

2023/3/10 大幅改編いたしました。

 

 日が昇って身に染みる程の心地良い空気に浸る早朝、僕とミリアは宿屋周辺にある空き地にて、お互いに向き合うように立っていた。一定の距離で配置につき、互いの手にはある程度の長さの棒が握られている。

 今から何が始まるのかというと、ミリアとの実戦前の稽古が始まる。彼女曰く実戦前に動きを見て、様子を見るということらしい。


「そういえば…一昨日一緒にいた人達はどうしたの…?これからは僕と行動するって言ってたけど…。」


 いざ稽古を始める前に、僕はふとそのことについて気になった。あれだけの人数や、明らかな猛者であろう戦士達がいるのだから、非力な自分と組むより断然良いと思うのだが。

 すると彼女は溜息をつき、これまた呆れた様な表情で僕の疑問に答えた。


「『クラン』のことね、貴方が言ってるの。」

「クラン…?」


 聞き慣れない単語に当然だが僕は聞き返す。彼女もまたそれについて淡々と答えていった。


「チームみたいなものよ。討伐団とか狩猟団とかでも呼ばれてるわ。」

「そうなんだ。それで、あの人達とは行動しないの…?」

「もう抜けたわ。一昨日の夜、貴方と別れてすぐに退団届けを出してね。」

「そ、そんなあっさり抜けても大丈夫なの…?」


 幾ら僕と行動するためとは言え、そんな簡単に脱退しても良いのだろうかと疑問を抱く。それなりの期間いたのならば、他者と行動を共にするより仕事はやりやすいのではと。だがしかし、その疑問も彼女は不満も交えながら答えてくれた。


「元々居心地悪かったし、報酬なんて殆どくれないしね。それよりも、稽古始めましょ。」

「あ、うん…。」


 彼女の話を聞き、一般職の間柄でもそういったところが問題になってくるのかと納得した。人が集まるところは少なからず不満が出ると。確かに彼女の言う通り、一昨日の彼女と例のクランメンバーとのやりとりは、あまり良い印象を受けなかった。

 そう考えると僕と行動を共にして、新たにスタートするというのもアリなのかもしれない。

 色々考えるのも束の間、彼女が稽古を始めるというのでそれに従い、なんとなくそれっぽい姿勢で手に持っている木の棒を構えた。


「…ふーん。」


 彼女もまた武器代わりの木の棒を構え、模擬戦の準備を整える。

 少しの間互いにその姿勢を保っていると、彼女の「始め!」という合図をもって稽古が開始された。僕は真っ直ぐ彼女の方へと突っ込んでいき、自身の間合いまでやってくるとまず片手で棒を渾身の力をもって振り降ろす。

 すると彼女は鮮やかな手捌きで受け流し、僕はというと勢いを殺しきれず転びかけた。


「ッ!」


 次は両手で木の棒を握り、再び力を込めて振り降ろすと、彼女はまたもや受け流し後退していった。諦めずに、僕は絶え間なく何度も攻撃するが、彼女は平気な顔で受け流していく。こちらは既に疲れ果てて息切れすら起こしているのに対し、彼女は呼吸一つ乱すことなく凛と立っていた。。


「はぁ…はぁ…。」

「…このぐらいかしら。」


 彼女のその言葉に僕は一気に体の力が抜け、その場にへたり込んでしまった。呼吸も絶え絶えで、再び立とうにも少々時間が欲しいくらいまでには力が入らない。それに対し彼女は、依然として変化がなく、汗一つすら流れていなかった。

 一息ついて呼吸が落ち着き、体に力が入るようになると、彼女は僕の方に綺麗な手を差し出してくる。僕はその手をとると、勢いのまま彼女に引っ張ってもらいながら立ち上がった。


「…全体的に動きが悪いわね。無駄な動きや力加減が目立つし、取り敢えず形から直さないと。」


 そう言って彼女は、僕に姿勢や武器の構え方を指導し始める。

 多少ぎこちないながらも彼女から型をしっかり教えてもらい、その直後に付近の木を人に見立てて動くという練習を実施した。ある程度それを繰り返していくと、先ほどの稽古の時より幾分か動き易く、変に力を込めないせいか疲労も軽減したような気がした。

 多少なりとも改善したのか、彼女の表情も先ほどよりも少々柔らかくなる。


「目に見えて改善したわね。いい?武器を振る時は闇雲に振ったりしないで。力任せじゃなく、武器の重さに合わせるの。」


 彼女の指示通りに握っている木の棒の重さに合わせて力を込める。何度も同じように振っていると、段々と感覚を掴めてきたのかより動きが改善できたのではと実感できる程に。


「実戦は本物の武器を使うわ。だから十分に動けるまで特訓。付き合ってあげるから、しっかり覚えて。」

「わかった…!」


 ある程度動きの改善が見込めたところで、再び彼女との稽古が始まる。

 教えてもらった事を基礎に、僕なりの動きをしようと彼女に立ち向かい、少しでも早く彼女に追いつこうと、役に立とうと必死に動いた。


(上達が凄く速い…!一体、何者なの…?)

「…ッ!ハァッ!」




―――――――――――




「あ、ミリアちゃんとルーア君。おはよう~。」


 あれからさらに二時間程稽古を重ね、休憩がてら朝食でも摂ろうかと宿屋に戻ってくると、カウンター周りで準備をしていたユニさんが出迎えてくれた。持っている荷物からして、どうやらこれから洗濯物を干そうとしていたらしい。


「朝ごはんできてるよ〜。私は先にこれ干してから行くから〜。」

「わかったわ、それじゃあ後でね。」


 二人が軽い会話を交わすとユニさんはそのまま外へと向かっていった。手伝おうかとも思ったが、稽古を終えたばかりなのもあって汗で汚れているため、流石にやめた方がいいかと思いとどまる。

 既に朝食が用意されているとのことなので、ミニアと共に部屋へと向かった。席につくとそこには、昨日と同じく3人分の食事がテーブルの上に用意されている。


「「いただきます。」」


 昨日教えてもらった通りに、ミリアと共に食事を始める前に合掌をしてから食べ始めた。

 スープとパン、そしてミルクという内容で、朝からこういったものが食べられるとは初めてだと感じる。以前はそもそも朝食というものがなく、スープを口にできるなんて夢にも思わなかった。


「!あったかい…。」

「…ねぇ、ルーア。貴方って…。」


 スープを口にして少々感動していたところ、突如彼女が呟いたためすぐに目線を向けた。「なに?」と口にして様子を見ていると、彼女は「なんでもない。」とだけ答えて食事を再開する。何か気になることでもあったのだろうか。それに一瞬だけ彼女の表情が曇った気がした。

 考えても答えは出ず、それよりも食事が冷めない内に食べてしまおうかと止めていた手を再開する。


 その後洗濯物を干し終わったのかユニさんが部屋にやってきて共に食事をした。今日の予定だったり、食べたいものは何かだったりと軽い会話をしていく内に、いつの間にか食事を終えていた。

 そして予定通り、本日ギルドの方へと赴いて仕事を始めるため、諸々の準備をして出かけることに。


「はい、これ。お弁当〜、お昼に食べてね。」


 いざ出発しようと宿屋の出入り口にやってくると、店の奥からユニさんが小走りでこちらへ近寄り、そう言いながら二つ程包みをミリアに渡す。言っていた内容からして、どうやらこれが弁当らしい。


「別に作らなくてもよかったのに…。まぁでも、ありがたく頂くわ。」


 ミリアがそう言って包みを受け取ると、僕が背負っている鞄にしまってくれと促すように手渡す。

包みを受け取ると、どうやら箱のような物を包んでいるらしく、これが所謂弁当箱なのだと理解できた。それに受け取った包みの数が2つなため、一つは僕の分なのだとわかる。

 ユニさんの厚意を受け取り、気を取り直してギルドに向かおうと出発、宿屋を後にした。少しずつ距離が離れていくユニさんに向けて手を振ろうと振り向くと、彼女は小さく手を振っており僕も手を振り返したのだった。


 ギルドにやってくると、昨日同様やはり中には色々な人物が多数いた。

 改めて見ると水晶の色も様々で、ミリアと同じ青色だったり、中には赤もいた。だがしかし、僕と同じ白色の水晶を携えた人物はどこにも見当たらない。


(白色って少ないのかな…)


 キョロキョロと彼女の後をついて行きながら建物内を見渡していると、一つのグループに目が留まる。一人ひとりの顔をよく見てみると、一昨日までミリアが行動を共にしていた者達だとわかった。

 てっきり大多数で動くものかと思っていたが、普段はああいった風に少人数で行動するのだろうか。


「おいおいあのガキ、まだギルドにいるぜ。」

「てっきり辞めたのばかり思ってたぜ。大人しくお家に帰ってればいいのによ。」

「今度は自分と同じガキ連れてら。何したって無駄なのによぉ!」


 会話の内容からしてミリアに向けて言っているのだろうか。彼女の方に視線を映し、表情を探るといつぞやと同じく曇った表情をしている。今までの彼女の口ぶりや、一昨日の光景からしてやはり良くは思われていないのだろう。励ますべきか、慰めるべきか迷い、なんとなくだが彼女に声をかけてみるが…。


「あの…ミリア…。」

「…行きましょ。あんなのに構わないで。」


 連中に背を向け、ミリアは先へと進んでいく。彼女にそう言われ僕も黙ってついていくが、どうにもできない現状を目の当たりにして、自分自身に力が無い事を思い知らされる。それにしてもあれだけのことを言われ、これまでも色々なことがあっただろうに、それでも進み続ける彼女は一体何を目指しているのだろう。

 彼女のような志があれば、前世の僕も少しは絶望せずに済んだのだろうか。


 建物内を少し歩くと、彼女は何やら何十枚と紙が貼られている場所に立ち止まる。

 ミリアの後ろから覗く様にその紙の内容を見てみると、昨日から文字を教えてもらったことが活きているのか、モンスターの討伐だったり、素材の収集だったりと今までと打って変わって読めるようになっていた。紙の内容からして、どうやらこれが仕事の依頼らしい。


「…これにしようかしら。」


 少々考慮した末、彼女が一枚の紙を手に取ると、僕は後ろから覗き込み何が書かれているのかを確認する。


「…ホーンラビット、角、5本…収集って書いてあるの…?」

「そう、読める様になったみたいね。ホーンラビットっていうのは、頭に白い角が生えたウサギよ。その角は薬に使えたりするの。そんなに難しい依頼じゃないわ。」


 手にした依頼書を受付の方まで持って行き、昨日対応してもらった女性職員"セイラ"さんに直接手渡す。それを受け取ったセイラさんは何やら大きめの判子を取り出し、赤い染料で色をつけては紙に印を押しつける。


「受注確認致しました。それでは行ってらっしゃいませ。」


 どうやらこれで依頼を受けたことになった様で、彼女に見送られながら僕ら二人は早速現場へと出向こうとギルドを後にする。

 街を出て付近の森までやってくると、僕らはすぐに依頼に書かれていた目標の捜索を始めた。かなり慣れているような足取りで森を突き進む彼女に対し、僕は草や木に阻まれ思うように進めない。


「慣れてるんだね…こういうの…。」

「何度も歩いたわけだから当然よ。迷わないようにしっかりついてきて。」


 彼女を見失わないようについていき、会話しながらしばらく探していると、突如草むらの中で何かが動いたのに気づいた。


「!あれって…」


 彼女の無言の指示で忍び足で近づき確認してみると、白いウサギが身を隠しており頭に角を生やしているのが確認できた。依頼書に描かれていたものとそっくりな姿をしている。


「ホーンラビットって…あれ…?」

「そうよ、そっと近づいて捕まえるの。逃げられないようにね。」


 彼女がまず手本を見せる様で、一羽のホーンラビットに後ろから近づき、かの動物が反応し逃げるよりも素早く動き、両手で捕まえた。一連の動作があまりに素早かったため、本当にできるのかと不安になる。


「こんな感じ。あとは角を…。」


 腰に装備してある短剣を取り出し、それをホーンラビットの角の根元辺りに当てると、そのまま切り裂いて角を入手する。角が無くなったホーンラビットを、ミリアはそっと地面に降ろしては拘束を解かれたと気づいたホーンラビットは、キュウキュウと鳴きながら一目散にどこかへと逃げていった。


「角はそんなに硬くないわ。ある程度の切れ味と力を込めれば切れるから。」


 そう説明しながら、彼女はもう一方の短剣をこちらに手渡す。それを受け取ると、彼女は今度は別のウサギを相手にする様で、こちらも習った通りに動こうとウサギを探すことに。


「えーと…あ…。」


 先程の場所と然程離れていない位置に、一羽だけでいるホーンラビットを発見。彼女がやっていたものの見様見真似ではあるが、後ろからそっと近づき捕まえられる範囲まで距離を詰める。

 素早く捕まえようとしたその時、直前で気づいたウサギは俊敏にその場から逃げていった。追いかけようともしたが、気づけばかなり距離を離されてしまったため諦めて別のウサギを探すことに。


(近くにいないのかな…。)


 今いる場所の付近にまだいないのかと探していると、なんと草を食しているウサギを発見した。

 食事中なら隙もあるだろうし、捕まえ易いだろうと思い後ろに回り込んで近づくと、先ほどと同じく素早く捕まえに向かった。

 そしてなんとか捕まえると、ウサギは途端に暴れ始め、速く事を済まそうとミリアに渡された短剣を握る。彼女がやっていた通りに角に短剣を当てグッと力を込めた。


「ッ!」


 するとミリアの言う通り、角はそんなに硬くなく根本から切り裂くことが出来た。回収した角を手に取り、ウサギを地面に降ろすと彼女の時と同様一目散に逃げていく。


「へぇ…こんな感じなんだ…。」


 初めて回収した角を木々の葉っぱ達の間から溢れる日光に当て、少々眺めていると後ろからミリアが声を掛けてきた。


「どう?上手くいった?」

「うん、一応…。」


 入手した角を見せるが、よくよく見てみると彼女の手には3つ程角を持っており途端に僕は固まる。


「これで5本ね。ギルドに戻って報告しましょ。」

「え…。」


 自分が一羽のウサギに苦戦していた最中に、彼女は3羽を相手にしていたのかと思うと僕は必要だったのかと少々肩を落とす。だが先ほどの彼女の動きを見て、確かに当然かと納得し気持ちを切り替えて彼女について行った。




―――――――――――




「はい、依頼達成確認致しました。どうぞ、達成報酬です。」


 ギルドの戻ってきて先ほど入手した角を納品すると、セイラさんはそう言いながら数枚の銅貨をカウンターの上に差し出し、ミリアはそれを受け取った。

 依頼の難易度によって報酬の額が変わるのかと、依頼書にも目を通しながら思う。


「別の依頼も受けましょ。今度は手応えのあるものに。」


 余韻に浸る間もなく彼女はすぐに受付から離れ、再び一枚の依頼書を手に取りセイラさんの下へと持っていく。またも依頼を受注すると彼女はすぐに外へと出ていく為、多少振り回せながらついて行った。


「今度はどんな依頼なの?」

「ストーンリザード7体の討伐よ。鱗が石みたいに硬いトカゲね。近辺の高山で確認されてて、道を封鎖してるみたいなの。」

「え、討伐ってまさか…。」


 先ほどまでウサギに苦戦していたのに、もう討伐の依頼を受けるのかと少々不安が過る。目的地の場所に向かいながら彼女の説明を聞いていると、何やら厄介そうな単語が次々と出てきていた。道を封鎖している辺り、トカゲと言うにはあまりにも大きい個体なのではないかと想像できる。

 本当に大丈夫なのか彼女に確認をとると、「油断しなければね。」とだけ答えたため余計に不安になりながら彼女の後をついていった。



 ところ変わって高山付近。森や山道を抜けた先にある近くの山が目的地らしく、その付近にて依頼内容に書かれていた場所に辿り着くとミリアの言うストーンリザードとやらがいた。依頼内容と一致している様にちゃんと7体いた。どうやら休息をとっているようで、かなり隙があるように思える。

 鱗が石のように硬い分鈍足らしく、先制攻撃を仕掛けようと彼女が指示し後に続く。事前に教えてもらった通りに動き、攻撃をしては彼らの動きをよく見て回避する。


「ハァッ!」

「グェェ!!」


 ガキィッ!!


 硬い鱗に剣がぶつかると途端に金属音を立てて、衝撃を受けながら弾かれる。確かにこの鱗は石の様に強固なものであった。


「闇雲に攻撃しちゃダメ。鱗の無い部分が弱点だからそこを突くの。」


 彼女はそう説明しながら一体、二体とストーンリザードを討伐していく。僕が握っている得物よりも短いあの短剣で。リーチの無さを素早い動きと隙を与えず弱点を突くことで補っており、彼女の戦い振りは思わず見惚れてしまいそうだった。

 自分も負けじと教えて貰った通りに、鱗がない部分を突きながら攻撃し多少苦戦しながらも倒していく。


「ッ!ハァ!!」


 最後の一体が口を開いた瞬間に剣を突き刺し、そのまま討伐し終わると、僕は付近に座り込み休息する。

 ミリアはというと、倒したストーンリザードから爪を1本ずつ剥ぎ取り計7本の爪を回収していた。恐らくここまでの道中で話していた、ギルドに提示し依頼を達成したことを証明するためのものなのだろう。


「お疲れ、初陣にしては良い動きね。まだぎこちない様だけど、 これから慣れると思うわ。」

「…うん。」


 彼女にそう言われ、ふと自分の手を見詰める。戦っている際、自分の手には剣が握られていたのだと改めて実感出来た。戦いの際中、剣の重さはあまり感じられず、弾かれる感触と攻撃を加えた感触、肉を裂く感触それぞれを味わった。

 これが戦いなのかと、未熟ながらも実感したのだ。


「…昼食にしましょ。もうお昼近いから。」


 彼女の言う通りに、付近に手頃な場所がないかと探して木陰に移動すると、その場に座り込み今朝渡された包みを鞄から取り出す。

 彼女に包みの一つを手渡し、互いに蓋を開いてみるとサンドイッチが詰めてあった。実際に食べたことはなかったが、転生前に主人が口にしていたのを見聞きしており、「これがあの…。」と呟きながら眺める。

 ユニさんに感謝しつつ、サンドイッチを一口頬張ってみることに。


「美味しい…!」

「…昼食を終えたらギルドに戻って報告しましょ。その後行きたい所があるから。」

「え、行きたい所?どこなの?」

「秘密。」


 彼女の言葉に複数の疑問符を浮かべ、首を傾げながら昼食を続けたのだった。




―――――――――――





 昼食を終え、ギルドに戻ってくると彼女はすぐに依頼達成を報告した。

 剥ぎ取った爪はそのまま自分の持ち物になる様で、彼女はそれを換金し銅貨12枚と銀貨2枚を受け取る。先程の依頼の報酬額は銀貨15枚程らしい。となると、合計でそれなりの額を貰えたことになるのか。


「行きたい所ってどこなの…?」


 仕事を終えて外に出てみると、開口一番に先ほど彼女が言っていたことについて尋ねる。すると…。


「取り敢えずついて来て。」


 彼女に言われた通り、後をついて行き町中を歩いているとやがて商店街にやって来る。何故またここに?と疑問に思いながら歩いていると、以前来た武器屋とは違う方向の道に進んでいくため、今度は別の店に行くのだろうかと周りを見渡しながら様子を伺った。

 やがて僕ら二人は一件の店の前に辿り着く。


「ここって…服を売ってる店…?」

「防具兼服屋よ。ついて来て。」


 彼女に連れられるまま店の中に入ると、そこには様々な服が飾っている光景が広がっていた。以前、商店街を周って見掛けた服屋とは遥かに広く品揃えが豊富だ。それにミリアの言う通り、壁や防具立てに防具が飾ってあったりしている。


「服を売ってるところって他にもあるんだね。」

「そうね。それぞれの場所で、金額や売ってるものが違うのだけど、ここは行きつけの場所なの。」


 彼女と会話をしながら店内を探っていく。どれもこれも目移りしてしまいそうな品揃えだ。


「貴方の服を買おうと思ってね。それに防具も。今のままだと防御力がないし、替えもなさそうだしね。」


 店内を歩く途中で立ち止まり、手頃なものはないかと彼女はそう話しながら衣服を漁っていく。彼女の目的がわかった途端、僕は焦るように遠慮した。


「!い、いや別にいいよ…!それに、またミリアに買って貰うなんて悪いし…。」

「貴方と依頼を受けて報酬を貰ったんだから、貴方が買うのと同じでしょ?」


 そう言われてしまったら確かにと納得せずにはいられないととなるが、取り敢えず礼は言おうと彼女に聞こえる程度で小さく「ありがとう。」と呟いた。引き続き彼女は僕に合う様な服を見付けては、僕に見せて確認する。


「どちらかと言うと、黒が似合いそうね。」

「そうかな…。」


 そんな風に相談しながら服を選び、ある程度買う衣服が決まると早速購入。自分の服を買えるなんて中々に感慨深いものがある。


「ここで着て行くこともできますが、どうでしょうか?」


 店員の提案を素直に聞き入れ、僕は試着室に案内され購入した衣服を着てみる。衣服を着用した状態で試着室から出ると、店員とミリアの表情からして何か変化があったのが伺える。


「そこらの平民服とは少し違うから、結構印象変わるわね。」

「そうなのかな…?自分ではあんまり実感しないけど…。」


 正直、平民とそれ以外の衣服の差があまり認識出来ない。素材の違いとか、質感とかなのだろうか。


「次は防具ね。どんな防具が好みなの?」

「…防具…動き易いのがいいなぁ。重いのは嫌かな…。」


 彼女に要望を聞かれそう答えてみると、何か心当たりがあるかのように彼女はその場から移動を始める。彼女の後ろについて行くと、様々な防具が飾られている場所に辿り着いた。

 実は鎧なんかは多少憧れはあったが、今回実際に仕事をしてみて、体が軽い方が何かと便利なのではないかと感じたのだ。


「革系がいいわね。」


 そう呟きながら彼女はコートやローブが飾ってある区間に移動する。金属性の鎧とはまた違った様々な衣服が飾ってあり、彼女と一緒に色々見て周っていると一つのコートに目が止まる。

 胸に防護用のプレートが備えられた、黒基調のものだ。大き目のフードがついており、これならローブや布などなくとも便利なのではと感じたのだ。


「あれは…。」

「あのコートね。丁度今欲しいものだわ。」


 飾ってあったコートを手に取り、早速購入。再び試着室に入り着てみては、鏡に映る自分を見て中々様になっているのがわかった。色に関しては特に気にしてはいなかったが、改めて見ると統一感が出て引き締まっている。


「割と似合ってるんじゃないかしら。これで、防具と服は大丈夫ね。」

「うん、ありがとう。」


 彼女に礼を言い、腰に装備していた剣を背中に掛け直し彼女の後をついて行く。店の外に出ると彼女は途端にこちらの方へと振り向き、急に下から目線でこちらを見詰め始める。


「装備揃ったんだから、明日は相応の働きをしてもらうから。ランクが白でも遠慮しないからね。」

「えっ。あ、はい、善処します…。」


 明日の自分はどうなるのだろうかと、少し我が身を心配しながら歩いて移動する彼女の後を、僕は慌ててついて行った。







ホーンラビットを生かすのには理由があって、角自体は時間を掛ければまた生えてくるというのが大きな理由です。

あとは肉はそんなに美味しくないとか。

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