はじまり
世界はとても悲しいものだ。
一人の少年は考えた。
もし世界の全ての人間が
僕の様に臆病で優しかったら...
そこから少年は研究を始める
そして彼は青年になり
研究は完成した
それはカプセル型の薬だった
中身はナノマシン
子供に投与する事で
成長する中で危険思想や傷害欲求などを抑え
人間を優しくする
という素晴らしい名目の物だった
何度も実験を重ね
動物実験を行い
結果も安全性も保証されていた
彼はまず自分の子供に投与した
その事で信頼も得たその薬は
世界中で使われた
その結果数十年という歳月をかけて
戦争等は無くなった
それは正しく青年が子供の時に望んだ
平和な世界の始まりだった
しかし青年も歳をとり
孫が出来た頃 その異変は起こる
それに気付いたのは小さな時は我儘だった孫が
何のお願いもしてこない事だった
嫌いだった食べ物も好き嫌い無く食べ
勉強もちゃんとする
しかし彼は恐怖した
孫から表情が消えたのだ
とても長い年月
ナノマシンは複製を繰り返す中で劣化していった
しかし優秀な彼が作ったナノマシンは
壊れるという訳ではなく
過剰に人に作用する様になったのだ
しかしその失敗に気付いた時
彼はあまりにも歳を取りすぎていた
彼は息子にこの事実を伝えた
しかしナノマシンに侵された息子にも
他の誰にもその言葉は届かない
仕方ないので彼は様々な媒体に
この事実を残した
誰にも届かないかもしれない
しかし自分の犯したこの罪を
自分が望んだ失敗作の世界を
どうか壊して欲しいと...