第一章 師匠との出会いpart2
それはよく晴れた日のことだった。
僕は河辺に座り込み、自然の音を聞いていた。
川が奏でる音を耳で聞き、草木を揺らす風を肌で感じた。
逃げ出してきたギルドの近くの河辺で僕はローブを纏うおじいさんとで話しをした。
僕は今日起きたこと、ギルドの勧誘を断り、逃げ出したことを 正直に答えた。
おじいさんは僕の話しを最後まで嫌な顔一つせずに聞いてくれた
その間口を閉じていたおじいさんが言葉を紡いだ。
「なるほどのぉ。お主は向こう側からきたのか。なるほど だからか。」
何か意味あり気な言葉だった。僕が首を傾げていると、
おじいさんが説明してくれた。
「元々向こう側からやってきた人間には何かしら特別な力もしくは、なにかしらの事情がなければ来れないはずなのじゃ」
だからその少年はお主を誘ったのじゃと説明してくれた。
その少年も悪気はないのだから、許してやってくれとも、
でも僕には特殊な力はない。事情だってないわけじゃないけど。
「ともあれ、なにかしらの偶然が重なってここにきたとしてもお主は今こうしてここにたっているのじゃ。この世界を楽しめ」
「あの、僕には居場所がないんです。生きる術も、だから....」
「お断りじゃ!!」
びくんっ 突然の大声に怒られてしまった。
「だいたいなんじゃ、お主がその少年ギルドに頭を下げれば
いいだけじゃろ。ワシはガキの世話は嫌じゃ」
キャラが代わっている。でもここで諦めたら僕はもう、、、、、、
「そこをなんとか師匠。」
「師匠とかいうでない。小僧 だいたいお主に話しかけたのは
お主の表情がここの人間とあまりにも変わってあるからであってだな」
僕はもうがむしゃらだ。
おじいさんにしがみつき、見捨てないでど叫び散らす。
それをおじいさんは全力で引き離そうとする。
端からみればオモチャを買ってとだだをこねる子供とそれをあやすおじいちゃんだ。
10分くらいの格闘後
諦めたようにおじいさんから力が抜けた。
「わかったわい。お前の面倒はわしがみる。だが覚悟せい。わしはそこらへんの優しい人間じゃないからな」
そういった後にっと笑った。
「師匠ぉー!」
僕は嬉しさのあまり、師匠に抱きついた。
「これ止めんかい、はぁめんどくさい弟子をとったもんじゃ。 面倒はみるというたが弟子入りは許可してないのじゃが」
師匠が困った風にため息まじりで言った。
そんな師匠に エヘッと笑顔を向ける僕だった。
それからは苦しい特訓の日々だった。
特訓初日に精霊との契約、2日間にドリムとの実戦をいきなりやらされた。
「何事も一歩前に、踏み出してみなければわからないのじゃよ」
その言葉を何度も言われた。
いきなり刀を持たされて、ほれ、あいつを倒すのじゃといわれた時はびびっちゃったけど。
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「師匠無理です。僕なんかじゃぁ」
僕の消え入りそうな声を師匠は全く聞かない…
「いいか、わしらが住まうこの世界は感情が全てなのじゃ。
だから勝てると思えば勝てる。負けると思えば死ぬ。死ぬなんて考えるくらいならいろいろ試してからでも 遅くはないのじゃ。」
生きるために、か。
正直、僕は自分のためとかいわれてもよくわからない。
でもドリムは僕がいた世界の怨念なんだ。生きている、死んでいるは関係なく。
こいつを倒すことは
その人の怨念が消えることを意味する。
例え少しのあいだだとしても......
自分が生きるためだけじゃない。
僕なんかが誰かのために出来ることはこれくらいしかない。
例え誰にも感謝されなくても。自己満足だとしても。
そう思えばやっていけた。強いドリムほど強い怨念の塊だ。
誰かも知らないその人の怨念が消えるためなら
僕は自分の命を投げ出せる。そう思えた。
価値のない自分よりも価値のあるみんなが楽しければそれでいい
でも師匠が、僕も楽しんでいいって言った時は嬉しかった。
なにもない僕でも師匠は認めてくれたから。
師匠と過ごすうちに僕はだんだんお喋りで、テンションが高くなっていった。
たぶんこれが本当の僕なんだ。他人と上手く関われなかったからようわからなかったけど。
「これ、メイジよ、せっかくわしが算数を教えてるのじゃから寝ずに勉強せい。」
「えぇぇ、だって勉強難しいし、眠くなるよ師匠。ふぁぁぁ」
僕があくびをかくと、よく棒で叩かれた。コツンと優しく
「お主は本を読む時はとてつもなく冷静沈着なのに何故勉強では そうなのじゃ」
「だって本は素晴らしい芸術ですよ エヘヘ」
僕がこの世界にきて読んでいるのは主に童話だ。
この世界には本当におとぎ話に出てくる城やら森などがあり、
よく師匠に連れて行ってもらった。
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「いやぁなに、お主は昔とかわらないのぉ」
1ヶ月前を振り返って師匠が呟いた。
「まあ、まだ1ヶ月前ですからねぇ」
これからどんどん成長します。と師匠に言ったら背を比べられた
師匠との時間をこれからも大切にしたい。
亡くなったらもう二度と会うことも出来ないのだから。