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一夜に咲き散る少女の理想-前半

 ある国に美しいお姫様が暮らしていました

 お姫様はなにに困ることもなく、それなりに幸せでした

 でも、何かが足りない

 お姫様はその答えがわかりました

 素敵な王子様です。

 お姫様は王子様との出会いに待ち焦がれました


 そんなある日、一通の手紙が、

 内容は隣の国の王子が舞踏会を開くので、ぜひ参加してほしいとの事だった。

 嬉しくなったお姫様はすぐに王子の住まうお城へと向かうのであった。



------


<舞踏会-会場>-お城の中-


 窓の外は闇に濡れ、大きく光る月の明かりだけがこの夜をうっすらと照らす。

 対してお城の中は賑やかだった。

 貴族や王族が酒を片手に会話に花を咲かせている。

 曲に合わせ、踊るものも多く、今夜の舞踏会は凄く楽しいものだった。


「この服似合ってないよな」


 メイジは自分が着ている騎士団の服を腕を広げて不安げに見回した。

 メイジの役は王子の護衛なのだから仕方ないのだが、普段着ないせいかどうにも落ち着かない様子だ。

 彼の服は騎士団長をイメージした青色の服で、腰に掛かっている一振りの剣が彼を騎士団長と思わせるほどの凄さをかもちだす。


「よう、僕のナイト君。元気?」


 ユーリは不安げな表情のメイジとは違い、いつも通りの明るさだった。

 ユーリの役は王子様で、服装もあってか普段よりもイケメン王子に磨きが掛かっている。


「これが元気に見えますか。......コミュ障の僕がお姫様に上手い受け答えできるわけないのに」

「まあ大丈夫っしょ。メイジは質問されたらい一言話せばいいだけだし。

 どうせ場の空気にすぐに馴染むだろうし、

あとは俺がお姫様をベッドに連れ込んでピーして性#隷にしちまえば即完了って

「こんな公衆の面前で変態発言をするな変態王子ッッ!! 」


 突然のメイジのお怒りにさすがのユーリもびくついた。


「あんた本当に彼女さんを悲しませるなよ。

 毎回のように浮気を見て自殺をしようとするあんたの彼女をいったい誰が抑えてると思ってんだよ!!」

「はっ、メイジお前キャラが変わってない。

 ほら前はもっとこうクールっていうかさ」

「うるせー! もっと彼女を愛してやれよ。

なに彼女ほっといて他の女に手を出すんだよ。

ハーレムでもする気かよ! このハーレム変態王子がッッ!!」


 王子ことユーリはメイジの怒りを抑えきれずに逃げ出した。

「あ、逃げんな、まちやがれ!」

「ふざけんなよ、どこの国に自分の護衛に殺される王子様がいるんだよッッ!!」

 メイジが切れるのも無理はない。 

 彼は毎回ユーリのせいで悲しみにくれ、自殺しようとするユーリ彼女を抑えなきゃいけないのだ。

 誰かが悲しむのを見たくないメイジにとって、ユーリは悪の元凶でしかない。


 そうして、自分の護衛に殺されないように無様に逃げ回る王子様という光景が出来上がった。


 その後2人は疲れきってへなへなと座り込んでしまった。


「お姫様が来るの、後何分くらいだっけ?」

「王子、少し待ってて、ラルに聞くから」


 どっこいしょとメイジは力の抜けた体を無理やり動かし、ラルを探した。

 周辺を見渡すと、メイド服のラルがどこぞやの男性にアプローチをされていた。

 ラルはやんわりと断っているが、男の方はめげない。

 ラルはわざと地味なメイド服を着て、目立たないようにしたつもりらしいのだが、

 彼女の明るいドジっ子属性をさらに高めていて、恥じらう技術まで身につけている。

 なおかつメイド服のサイズが小さいせいか豊富な胸元がさらに強調され、見るものの視線を集めてしまう。

(......天使すぎるだろ)


 だが、メイジのそんなお気楽な思考は男の会話によって消え失せた。


「オレ様はお偉い貴族だからあんたを雇うことはたやすいんだよ。あんたがそんなに結婚がを嫌がるなら奴隷にするぞ。そん時はたっぷり可愛がってやるぜ」

「あの、そんな......私は」


 男の強引なアプローチ?にラルは涙をこぼさないように必死にスカートを握りしめて耐えようとしている。

 今にも泣きだしそうなその目は誰かの助けを待っているように思える。

 

 「まぁためんどくさい事に絡まれてるなぁ」

 

 メイジはうんざりしたように髪をボリボリと掻いて、足を進めた。



「だ、か、ら、オレ様の女に ドンッ

「はい、そこどいてー。」


 2人の間にメイジは割って入っていった。


「えっ、先輩」

「誰だお前!」


 突如現れたメイジを見ると驚いていたが、ラルは顔をぱぁっと明るくさせ、すぐにメイジの背に隠れた。


「先輩、助けに来てくれたんですか」


 その声には安堵が含まれている。

 ラルの目は潤んでおり、相当怖かったのだと物語っている。

 一方メイジは無関心顔そのもので今までの出来事に興味がない様子でラルに聞いた。


「ラル、お姫様来るの後何分?」

「えっ、あ、え~とですね」

  

 メイジが見当違いな質問をしたので一瞬慌てたが、ラルはふうぅっと一呼吸し、落ち着きのある表情になった。

 そして、目をつぶり瞑想を始めた。

 五感を使って何かを感じ取ろうとしているようにも見えた。

「おい、これは

「あんたは黙ってて」


メイジは貴族男が質問するのを静止し、ラルの次の返事を待つ。

 およそ10秒の時間のすえ、ラルは目をゆっくりと開けた。

「彼女の粒子はさっきこの世界に入り込んだそうです。

 なので......まずい!後30秒で来ます!」


 ラルはもの凄く慌てた顔をメイジに向ける。

 それを聞くとメイジの顔からも落ち着きは消え、辺りを見回した。


「僕はユーリ先輩のとこ行ってくるんで、ラルはここで待機いいね」

「了解です先輩」


 貴族の男は2人のやりとりに訳がわからずただポカンと見ているだけだった。

 そして自分の求婚を邪魔した男が走りゆくのをただ遠目で見送る。


「なんだ、あんたたちは......」


 その声は徐々に騒がしくなる会場の音に掻き消され、誰の元にも届かなかった。


------


「王子、もう来ます」

「わかった。始めるか」

 

 メイジの言葉を聞き取ると、ユーリはマントをなびかせながらマイクを持ち、会場全体に聞こえる声で叫んだ。


「第一ダンス隊ッッ! ダンス始めッッ!!」


 その声が合図となり、会場に響きわたっていた曲が変わり、同時に会場にいる半数の人が二人一組となって、踊り出した。


 「これが舞踏会かぁ。縁がない事だからわかんなかったけど、凄いな」

 

メイジは会場一体となって絵になっている光景に楽しそうに呟く。

 

「......ん、」


 ふと、窓を見ると何やら光る物がどんどん数を増し、外からこの会場内に入ってくるのだ。

 

「何ですか、これ」


 恐る恐るユーリに尋ねると彼は緊張ごもった声で答えた。


「あれが今回のお姫様だよ」


 それは人の形をしておらず、光の粒子といった方が当てはまる形だ。

 その粒子は会場の真ん中で集まる。

 この光景をメイジは目を丸くして見ていたが、ほかのものはさして気にする様子もなく踊りやらを続けている。

 ただ一人、メイジは自分がいつも見ていた夢えの登場の仕方に息をのんでいた。

 

「これが、感情粒子。本当に現実世界から粒子となって来るのか」


 会場の真ん中で集まった粒子は突如一斉に光りだし、会場全体を包み込んだ。


 「何......何が、えっ」


 メイジは驚きのあまり、声を失っていた。

 さっきの光源には既に粒子はなく、

 水色のドレスに身を包んだ10代前後の金髪少女がそこにいた。

 その少女は金髪碧眼で整った容姿、その肌は透き通るような白さ。手足は細く、不健康そうにも見える。

 水色のドレスは下のスカートが広がる形になっており、絵本の中からやってきたようにすら思えるその姿は年齢よりも大人びて見える。

 そして少女は不思議そうに辺りをキョロキョロ見て、急に大声を上げた。


「嘘、ここどこ、それにこの格好。ここはお城。凄い凄い。

 だとしたら私はお姫様なの」


 嬉しそうにはしゃぐその姿は子供の姿としか見えない。

 そこに

 王子がはしゃぐお姫様にゆっくりと歩み寄りった。


「ようこそ僕のお城に。僕はこの城の王子です。

どうかよろしく、プリンセス」


 王子から解き放たれたるその笑みはすぐさまお姫様を魅了したのか、その後2人は会話を楽しんだ。

 メイジはその光景を少し離れた所から見ていた。

 「取りあえず今のところは順調かな」


 メイジが呟くや否や、お姫様がこちらを見ている事に少し遅れて気づいた。

 メイジがお姫様に目を合わせると、彼女はこちらの方に歩み寄っていった。

 お姫様はメイジの手前までくるとスカートをつまみ、軽く会釈した。

 会釈仕返すと、ふと、ほのかに漂う甘い香りがした。

 気づくと、お姫様はメイジの顔をのぞきこんでいた。

 2人の距離わずか20cm。


「わぁっ、」


 突然の事に思わず体を後退するメイジ。

 だが、お姫様はその反応を面白く思ったのか距離を積めてくる。

 護衛の服装を一瞥し、顔をもう一度見ると


「失礼ですが、あなたはどちらの護衛なのですか?」


 興味深そうに尋ねてきた。

 その声音は優しく、丁寧で、でも礼儀作法がまだ覚えきれてないところがまた愛らしい。

 僕は台本通りに書いてあった数少ないセリフの一つを口にした。


「ぼ、自分は王子様の護衛であります。

 今回はあなた様の護衛も務めさせて頂きます」


 彼は表情を崩さずに役を演じた。はず


「あら、言葉を詰まらせるなんておかしな兵隊さん」


 お姫様は微笑んでいた。それはとても十代とは思えないほど大人びている。

 その美しい顔からは魅惑的ともいえる何かをメイジは感じた。

 だが、その顔が悪戯っぽくなっていたことまでは気づけなかった。


 「わたくしはあなたが気に入りましたわ。

 少し外に出たいのでその護衛をお願い出来ないかしら?」


「「はっ?」」


 メイジとユーリは驚いてしまった。 

 無理もない。さっきまで王子様の虜だったはずのお姫様は王子を置いて護衛と出掛けると言うのだから。


「お待ちをお姫様。護衛ならば僕が

「必要ありませんわ王子様。わたくしは少し涼みに行くだけですので、」


 ユーリの提案も虚しく散った。

(まずい、日の浅いメイジに出来るのか)


 メイジの表情を見るとやはり混乱を隠せていない。

 自分にはただ見守ることしかできないと悔しく思うユーリはただアイコンタクトでメイジに

 「お前なら出来る」と伝えた。

 メイジの方は不安げながら頷いた。


「で、では参りましょう姫様」

「ええ、わたくしのナイト様」


 メイジが差し伸べた手をお姫様が手にとり、2人は外へと出て行った。

 

 「ユーリさん、これはどうしたら......」


 今の行動を見ていたラルが不安げな顔色を見せながら聞いてきた。

 ユーリにもそれはわからない。


「あとはあいつ次第だよ。俺たちは陰であいつをサポートしてやろう」


 これぐらいしかいう言葉がなかったが、これが2人に出来る最大限の努力だ。

 そしてユーリもメイジの後を追った。


 一方姫様とメイジはお城の周りにある森の中にいる。

 満月が大きく、2人が歩く一本道を明るく照らしている。

 木々は等間隔ですらっと並び、どこからか聞こえる虫の音は、ふわりと吹く風と共にこの森中の木々を優しく揺らす。

 この森はいるだけで心地がいい

 聖域の森とは違い、落ち着く事の出来る森だ。


「涼しいですね姫様」

 髪の毛を微かに揺らす程度の風がなびく中、メイジは散歩している気分だった。

 対するお姫様の表情はさっきとは打って変わって冷めていた。


「あんたのそれは本心なの?」

「はっ?」


 突然の口調の変わりようにメイジは少女の顔を振り返ってしまった。

 お姫様の口からはさっきまでとは違い、温もりなど感じない冷めた物言いが感じられ、態度も素っ気ない。


「ばかじゃないの。あんたたちがやってるのは子供のおままごとよ。 

 私を馬鹿にしてるの、私はもう10歳よ!」

 

 少女は人差し指をメイジに突き立て、信じられないといわんばかりの顔を向ける。

 言葉に品なんてものはなく、まるで別人のようだ。

 態度も品のあるお姫様から一変し、わがままなガキへとメイジの目には映っている。


「あの、姫様? さっきと性格違いますよ......えっ、普通は場の雰囲気でハッピーになるんじゃなかったの。何がどうなってんの」

「あら、あなた達がおかしな事をやっていたから乗ってあげただけよ。

こう見えて演技だけは得意ですからね。見破るのも」

 

 メイジは少女の変わりようにどうしていいかわからず頭を混乱させている。

 少女はその顔を呆れた表情で一瞥し、ため息をついている。



「あなたの演技はわかりやすすぎよ。

 慣れない自分の呼び名、護衛のくせに近くまで接近されないと気がつけないとか失格ものよだいたいあなたは......」


 その後はひたすら10歳の少女によるダメ出しが続き、メイジの心は折れそうだった。

 ただ内心毒舌ではなくて良かったとしみじみ思った。


「まあそんな事はどうでもいいのですけどね。

 さぁわたくしのナイト様。 参りましょうか」


 彼女はニヤニヤと笑いながら夜の道を進んでいった。


「ちょっ、姫様どちらに!」


 月明かりに照らされ、よりいっそう輝きを増した金髪を払い、彼女はきょとんとした顔をしていた。


「どちらにって、町ですけど」

「いやいや、姫様勝手に町にいったらいろいろ困りますですので

「うるさいですよ、あなたは私のナイトなんですから私に黙ってついて来る」


 メイジの説得を遮ってわがまま少女は森の向こうに見える町へと走って行った。


 メイジはこのイレギュラーすぎる事態にただ戸惑い、渋々彼女はの後を追っていった。

 


 

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