カルトなオカルトのアラカルト話(12)
この部屋を出る前に扉を塞いで、その間に。
「ガイド、すみません。マユさん、ガイドの骨折した場所に手を当てて癒し(クラチ)と」
「言うだけ?」
「はい。頼みますよ」
マユさんはそろそろガイドに近づく。小さく癒しと言うと例の黄緑の光が出た。
「あ、出た」
「え?」
魔法の発動を確認してから背を向け、音を立てないようにベッドを扉の前に移動させる。残りの死体2つと気を失なっているおじさんを乗せ、他に塞ぐものはないか探す。
「どう? ビジュアル的にめちゃくちゃ痛そうだけど、痛くない?」
夕食が乗ったままのテーブルをベッドの前におく。
「すごい……全然痛くないわ」
「それはよかった。マユさん後ろの首とって下さい」
「うん。……あのさ、これ本物?」
意味がわからない。
「ついさっき目の前ではねたじゃないですか。本物の首です」
「サンさんは悪魔の使いか何かかな?」
妙に明るい声だ。マユさんは首をつかもうとしていた手を引っ込めてしまったので私がつかみ、ぽいと投げる。うまくベッドに乗った。
「いやー、拷問するにしてもね、ペースが早いよ。あと、ゲス顔で楽しそうに人殺してくより、無表情で淡々とサイレントキルのが絵的に全く映えないけど、間近で見るとうわーってなるね」
「つまり?」
「敵にならず、ずっと僕を守ってください」
「元々そのつもりです。不本意と言えど拾ってしまいましたから。あなたを守るつもりです」
「え、ああ、そうなんだ……」
驚かれてる気がする。私は誰彼構わずでなく、武器や敵意を向けてくる奴らの首しかはねないのに。
マユさんもガイドも目の前の事態についてきてない。死体を見るのは初めてなのか。早く現実に帰ってきてもらわねば。
「いつまで腰抜かしてるんです。2人とも早く立って」
ガイド肩に手を置こうとすると思いっきり振り払われた。顔は青ざめ、ひきつっている。今になって面白いほどガクガク震え始めた。何か言おうとしてるのに、歯の根が鳴るだけだ。
しゃがんで少女に目線を合わせる。
「痛い思いをさせてごめんなさい。今、私はガイドを傷つけるつもりはないです。ガイドのおじさんも気を失っているだけで殺していません」
本当は右を選んで欲しかったけれど仕方ない。
「それで、神殿から出たゴミを捨てる場所を聞きたいのですが。もしあなたが自分の大事な家族やハニーを助けたいと本気で思っているのなら教えてくれませんか」
「……」
折れた腕で示された方向は昨日の昼見つけた場所と同じだった。
「村で共用…… 1つしかないんですか」
コクコク頷いている。
これなら思いきり飛び跳ねたら行けそうな距離だ。ガイドは飛べるからいいとして、マユさんは変な魔法発動されても困るから私が運ぶしかない。
「では私は先に向かいます。マユさん、絶対に声を出さず、静かにしてください。何があっても叫ばないでください」
「何するの? 変なことするつもり?」
「あなたをおぶって、ここからゴミ捨て場まで助走つけて飛びます」
「そんなことでき……るのかサンさんは。足場の悪い砂漠でぴょんぴょん跳ねてたね」
はい、としゃがむとマユさんがのってきた。しっかり肩をつかんでもらう。扉ギリギリまで下がる。ガイドはまだ震えていた。彼女は放っておいても大丈夫だろう。
「あれ? 助走ってどこから?」
「今ここから始まります」
勢いよく部屋を走り、窓縁を力一杯蹴る。横を見ると大きな満月で、ウサギがやっと餅をつくことが出来ていた。
サンのテンションだだ上がり。




