カルトなオカルトのアラカルト話(11)
あっさり1番手が敗れたことを理解するのに、やや時間がかかっている。髪を手ぐしで直しつつ、また尋ねた。
「どうしました」
「3人でかかれっ」
話が通じない。
血が垂れると困るので斧を霧散させる。たまたま近くにいた男2人の首を折り、残りの若い男を床に叩きつけた。のしかかって動けないようにする。男の首に手を置いた。
「ぐあっ」
「変な動きしたら折ります」
「てめ……」
「おじさん? なんで、ここに」
ガイドが震えながら尋ねる。身内がいるとは好都合。
「今からそれを聞くんです。ではおじさん。これからインタビューをします。楽しいか苦しいかはあなたのお答え次第です。お覚悟はよろしくて?」
「はっ、お覚悟するのはテメェの方だぜ」
この状態でどう逆転する気なのだ。
「マジかお前ら」
マユさんが何か言ったけど、気にしない。
何から聞こう。あまり時間をかけられない。今1番必要な情報は何だろう。うむ、悩むな。
「誰にここに行けと言われましたか」
「誰が言うかってんだ!」
小物らしく噛み付く勢いで答えてくれる。
たまたまと言いださなくてよかった。ちょっと痛め付けたら正直に言いそうである。男の左腕を動かせないように手で押さえた。
「ガイド、おじさんの指を折りなさい」
「!?」
「聞こえませんでしたか。早くおじさんの指折りなさい」
少女の顔がひきつり、半笑いになった。言葉がつっかえる。
「な、なんで、そん、な……」
「ただの気分ですよ。薬欲しいんでしょう。家族を助けたいんでしょう」
「薬ぃ? やっぱりおまえぐぁっ」
男の喉を少しきつく抑えるとむせて黙った。
ガイドをじぃっと見つめる。大きくごくりとツバを飲む音が聞こえた。息は荒く、冷や汗をダラダラ流している。血の匂いによって正気が揺れてきたか。ゆっくりズルズル這ってきた。叔父の顔と指を交互に見る。
「指を、折ったらいいの……?」
「ええ」
ガイドが震える手をゆっくり近づけてくる。おじさんは声にならない声を上げ抵抗しようとしている。ポキっと軽い音がした。大したものだ。
「わ、私、私の指折るから、おじさんにひどいことしないで……」
フゥーッ、フゥーッ。涙目で必死に痛みを堪えている。左の人差し指が手の甲についていた。なんて殊勝な心がけ。
「優しいですね。でも私だったら倍は折ります。身内が傷つけられるってとっても嫌ですから」
「……!」
ガイドは目を大きく見開く。
男の首を絞める手を緩めた。
「やめろ! 言うから、しなくていい!」
「じゃ、すぐに教えてください」
姿勢を変えて男の背中にしっかり座る。私の両足を彼の太ももに勢いよく降ろした。
「うっ!?」
変な声を出していないで言えというのに。
「時間稼ぎは感心しませんね」
ガイドの指をぐんと反る。ポキ。
彼女は右手で床をばんばん叩いた。それでも声を出そうとしない。我慢強いのは結構だけど、今はおじさんに言わなきゃと思わせてほしい。
「今から5秒以内に言ってください。5、4、3、2、1……嫌なおじさん!」
ポキ、ポキ。
「はい、5秒以内に」
「やめろー! ガイドは関係ないだろ、なんで手を出すんだ!」
「じゃあ言いなさい」
軽く足でガイドの腕を蹴る。変な音がして、肘が反対方向に曲がった。
「おっ、お前に心はないのか? 人間を傷つけるなんて」
自分が傷つけられないから、なんとか言葉で説得しようとしている(彼は何をするためにこの部屋に来たんだろう?)。彼女ような自己犠牲精神は見当たらない。これはかわいいかわいい姪っ子を殺しても吐かないだろう。
男の羽をぶちぶちっと毟る。
「!? なんでオレを」
自分に矛先を向けられて急に慌てだした。この男、最低である。
「気分です」
「や、やめ……」
この状況でまだおじさんを庇うのか。つけあがるから止せばいいのに。ぶっちぶっち。風切り羽はどこだ。
「給仕長だ!」
最初から素直に私がこいつをぶん殴ればよかった。どうも、変にひねるとうまくいかない。ガイドには悪いことをしてしまった。
「誰ですそれ。私見たことありますか」
「ネコのガゾンゾだ! あいつ、あいつがあれでも給仕長なんだ」
だから客人のお世話係なのか。かなりそそっかしそうなのに。
次は何を聞こう。
「ここで出たゴミってどこに捨ててるんです」
「ど、どういう意味だ!?」
質問の意図がわからず、焦っている。この状況だと怖い質問だからだろう。
「あなたの死体を捨てるわけではないです。息抜きの質問です。そのままの意味で受け取ってください」
「オレが、知るわけないだろ」
「そうですか。ガイドは知ってますか」
「ええ……」
腕をだらんと垂らし、じっと私を見つめる。
「ちゃんと答えるなら、私は何もしませんよ。……マユさん、何か知りたいことありますか」
「へ」
間の抜けた声。自分に話が振られると思ってなかったようだ。ずーっと大きく口を開けて、ぽかんとしていた彼はやっと頭を働かせる。アゴに手を当て少し思案してから。
「秘密の抜け穴とかキングーさんの非常脱出口とか、あるなら知りたいかな。あと、壁の外との連絡方法ない?」
「巫女様が外に出るわけないだろ!!」
「あ、すみません」
すんごいブチ切れられた。あったら知りたい程度で、答えは期待してなかったようだ。もう何を聞いたら思いつかないので、尻すぼみ感がすごいけど次で最後だ。
「最後に1つ。テーブルの料理、右と左どちらを食べますか」
この質問はかなり堪えたらしい。一瞬ガチガチに固まった。
「うおおあっ!?」
せっかくの機会を不意にするとはもったいない。遮二無二叫んで暴れようとしたので、頭を床に2度3度叩きつける。すぐに気を失った。額が割れ、鼻も口も潰れて血まみれだ。
せっかくだから、ガイドに選ばせよう。
「ガイド、どっちにしますか」
「何か意味があるの?」
「質問に答えてください」
彼女は大きく体を震わせた。ちゃんと答えるなら、怖がることはない。
「ひ、左、で」
マユさんが食べようとしていた肉を男の口に突っ込む。男に変化はない。気を失っているから食べることも出来ないようだ。ま、私が食べた肉ならすぐに死んでいるだろう。運のいい奴だ。




