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世界を×××、小悪党ども  作者: つちのえーたつ
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カルトなオカルトのアラカルト話(9)

 カルト村に来て2日目。足の痛みは驚くほど引いている。

 船からそう離れていないはず。上空を飛んだらでかい石造りの壁がすぐにわかる。頑張って自力で脱出しよう。これならマユさんを抱えて壁を越えられるかもしれない。

 朝食を下げるためガゾンゾが入ってきた。少し焦っているように見える。

「忙しそうですね。何かあるんですか」

「今日はミサの日なんです。いつもお菓子を配っていて、もう洗い物が溜まって溜まって大変なんです!」

 前日に作ればいいのに。クッキーなんかは1日置いた方が味が馴染む。

「ミサって何するの?」

「巫女様のありがたいお話を聞いたり、歌を歌ったり。ハニーやガイドも歌います。よかったら聞いて上げて下さい!」

 歌はまだいいけど説法は寝てしまいそうだ。めんどくさそうなんでと断ったけど結局行くことになってしまった。

 マユさんは昨晩のキングーの話ですっかり不信状態だ。

「入った瞬間囲まれて、信じなきゃ生贄とか食べらるとかないよね?」

「言語を理解するものを食べるの基本アウトですけど。ここは国教と違うからわかりません」

 顔色が悪くなった。ため息と一緒に小さな声で。

「……逃げたい」

「足がましになったら、あなたを連れてすぐ逃げるのでご安心を」

「ありがとう。早く治るといいね」

 あからさまにげんなりしている。

 同族食いか。好む奴は少ないけれど、ここは閉じられた村だ。何かの弾みで、ヒトということがばれてしまったら。

「ヒトの心は勇気の証」

「え?」

「肉は力を 血は知恵を 

 脳は権力 皮膚は金

 人は余すところなし」

「なにその不吉な歌!?」

「人食いの歌と言う童歌です。その部位を食べたらっていう。迷信ですが強く信じる人間もいます。ですから」

「自然になります!」

 付け耳がはまっているかしっかり確認。多少はましな態度になったので安心した。おどおどはしてないが、変なポーカーフェイスだ。髪形がうまく決まったのでイケメンな表情を試みているガキのようである。

 ミサの会場で出口に近い1番後ろの席に座る。少しばかりめかし込んだ衣装を着たハニーとガイドが見えた。化粧をしているはずなのにガイドの顔色が少し悪い。体調を崩しているのだろうか。

 巫女をたたえる歌とキングの説法が終わりすぐハニーとガイドに会いに行く。控え室にガイドはいなかった。なんでも今朝妹が熱を出して心配でたまらず、歌い終わって飛んで帰ったようだ。

「顔色が悪いと思ったら、妹さんを心配していましたか」

「あんな小さい子が……そりゃ心配だよ。薬とか栄養のあるものないかな」

「薬? だめだめ、そんなの。巫女様に祈ってもらわないと!」

 ハニーの言葉にマユさんは絶句する。薬を飲むのが当たり前って金持ちか。

「調合に手間のかかる薬よりも、寝たら回復する魔力でとっとと魔道士が治療した方がいい場合もあります。だから薬がなくとも驚くことはありません」

「そ、そうなんだ。うちはカゼのとき、薬飲んでご飯食べて寝て治すのが基本だったから」

そういうことは覚えているのか。家族のこと、思い出してきているのかな。

「外はお祈りじゃないんだ」

 へぇーとハニーは感心した。

 治せるものに限度はあるけども、ただの風邪ならちょっとした魔法をかけて安静にしていれば治る。

「ガイドさんに出会ったらお大事にと。お二人ともなかなか可愛らしかったですよ」

 そう言って私たちは部屋に引っ込んだ。斧の素振りをしながら話す。

「妹ちゃん早く治るといいなぁ。……みーんな風邪ひいてさ、外から来た僕たちのせいだ! なんて言われて狩られたりとかないよね?」

 また変なことを、と言いたいところであるが。

「あと2 、3日もすればそうなるんじゃないですか。私たちのこと変な目で見ている方も多かったです。風邪や病気でなくてもちょっとした不幸が重なったらやばいです。これであの妹さん死んだら終わったと思ってください」

「縁起でもないこと言わないでよ! どうしよう…」

「壁の近くまで行って壊せるか登れるか調べてみます」

「なんで登るって選択肢があるの」

「扉が開かないならそうするしかないでしょう」

「そりゃまあ……」

 なんだか釈然としない顔だが気にする事は無い。私は腕力よりも脚力が強いので登ろうと思うだけだ。今の状態でも壁を登るぐらいなら彼をおぶってでもできる。問題は崖だ。足場が壁よりずっと不安定なのでなるべく完治に近い状態で出たい。

 ガゾンゾにぶらついてくると言って神殿から出た。農作業に出ているおっちゃんおばちゃんに挨拶しながら壁に向かう。付近には誰もいない。軽く叩くと、いかにも丈夫ですと言う音がした。

「高いけどサンさん、登れるの?」

「走り登る感じです」

「人間辞めてるの? それとも史上最強の格闘家なの?」

「いいえ。ただの鍛治士です」

「何をしているのですか!?」

 うだうだ話していると、神殿の給仕が血相変えた飛んできた。ハ類だ。たぶん、スキンク。頬を覆う鱗は紅褐色で、首筋からチラリと見える藍と白のコントラストがいい。見た所、給仕にはスレンダーが多い。キングーの趣味だろうか。そこは分かり合えるかもしれない。

「あの、何をして……」

 ジロジロ見すぎてしまった。ヒかれている。

「どこかに出口でもないかと見ています」

 給仕だけでなくマユさんにも驚かれた。

「えっ、なんで」

「私達を助けてくれた方の家族が熱を出したんです。ここに来る途中、解熱剤になる薬草を見た気がするので取りに行こうかと」

「外出許……」

「キングーさんは忙しいのでしょう。赤ん坊は体力がないから、早くなんとかしないとと思いまして。命を助けていただいた恩に報おうとするのはいけませんか」

「その心は大変素晴らしいと思います。ですが壁の外に出るのは大変危険です。巫女様も1番いけないと仰っています」

 入退信自由じゃなかったのか。1番いけないとは、笑わせてくれる。ここでゴネても仕方ない。

「わかりました。では回復を祈るだけにしときます」

「それはいいですね! 礼拝堂に」

 大層喜ぶ。祈りが良いと本気で思っている。

「今は身体を動かしたいので、後で行きます」

 そうですか、と残念そうな給仕に手を振り、散策を再開した。

 壁に沿っていい感じの穴がないか探すも見つからなかった。誰かに見つかるたび何をしているか尋ねられた。

「動かないと体が鈍ってしまうので散歩です」

 こう答えるとみんな納得して怪しまれない。筋肉は偉大だ。壁付近を1周しただけで終わってしまった。

 村の外れに共用のゴミ捨て場を見つけたので少し漁ったけど、何も見つからずマユさんに少しヒかれただけだった。

次話からサンがヘイトあげまくります。

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