カルトなオカルトのアラカルト話(5)
うとうとまどろんでいるとひぇーだかひょえーだか奇声が聞こえた。マユさんだ。わかりやすい。
扉を開ける。廊下のランプは灯っておらず、月明かりだけの暗い静けさだった。
「うわああ、廊下寒、寒! いやそんなに寒くないかな、でも寒い。寒いもん。ていうか暗! どこだよここ。あ、サンさん無事? 僕たち落ちたよね、ケガは?」
混乱するとやたら早口で1人で独り言を言う癖でもあるのか。
「少し足をひねっただけです。1週間もすれば治ります」
「マジか。あんなところから落ちてそんだけとか……。そんなことよりここどこ? 船じゃないよ。サンさん治療受けてるみたいだけどあの世じゃないよね」
軽く引かれた。自分が魔法を使った記憶はないようだ。魔力の使い方を勉強してもらわないと今後が不安だ。ケガしたのはほぼ彼のせいなのだから。
「ちゃんと現世です。ここはなんだか信心深い方ばかりの集落ですかね」
国をあげて追われるカルト宗教の総本山と言えば混乱して余計なことを口走るだろう。それで洗脳なんてされたらたまったもんじゃない。ごまかすよう努める。
「船にいないタイプの人がいっぱいいる村なの?」
「そうですね」
日常生活で意識する機会はそうそうない。せいぜい博打を打つときくらいだ。
バタバタと女性数人がやってきた。さっき救護室まで案内してくれたソコケの給仕ーーガゾンゾもいる。確かガゾンゾって、おいでかわいい子という意味だ。あの犬巫女、そういう趣味があるのか。団長とドゥルジを当てがわせたいものだ。あいつら最高に最低だから。トクマルは……相手がどストライクでも結構紳士だから何もしないか。
「何かの鳴き声が聞こえましたがご無事でしょうか?」
マユの奇声は悲鳴と取られなかった。
「あれ僕の声です。目が覚めたら知らない場所だから驚いちゃって。起こしてしまってごめんなさい」
ペコリと頭を下げるマユに女性は目を丸くする。どうしてどうして、この可憐な見た目であの奇声が出ると想像できよう。
「あなたが?」
「うん。ごめんなさい」
「何かに取り憑かれた経験はありますか?」
思いっきり心配されている。あれはちょっとヒくものだ。
「ないよ! ちょっと驚いただけだって!」
ぷくーとほっぺを膨らませ抗議する。ちょっとどころの音量ではなかっただろう。
女性たちは顔を見合わせひそひそ話す。
「……大変失礼しました。おやすみなさいませ」
納得したのか、慇懃に頭を下げ女性たちは去った。
なんだか一気に疲れが出てきた。今ならぐっすり眠れる。
「おやすみなさい。ねむ……」
「えっちょっ、ちょっと待って」
声が裏返り、恥ずかしそうにもじもじしている。トイレか。場所を聞いてなかった。
「窓からしたらいいでしょう」
「何が? ……その、怖いわけじゃないんだけど、よかったら一緒に寝てくれないかなーなんて……だめ?」
潤んだ瞳で見つめられる。涙目になるほど怖いのか。ビビリを突っぱねる理由はない。
「寝相が悪くないならいいです。足蹴ったら投げますよ」
「ベットの上でも僕はおとなしいから大丈夫!」
妙な言い回しは気にしないでおこう。キングーが男女うんぬんと言っていたが気にしない。そんなドキドキイベントが起きるわけもなく、起こす気もない。お互い背を向けてベットに入る。廊下にいたせいか体はすっかり冷えてしまい、さっきまでの眠気も消えた。向きを変えようにも隣にマユさんがいるのでしにくい。ドゥルジやアシャなら気にしないのに、妙に意識してしまう。キレイな人間は見慣れているはずなのに、何故だ。
「サンさん、起きてる?」
小さな声で遠慮がちにそーっと訪ねてきた。
「どうしました」
「なんだか目が冴えちゃって」
夕方から今まで寝ていたようなものだからな。
「ここがどこかわからないけれどすごく山奥でしょ。団長さん達見つけてくれるのか不安になって。サンさんはどう?」
果たして団長は私たちを探しているだろうか。新人ゲットと喜んでいいたものの、こんな山奥を探すよりとっとと街に出て物売る方がよっぽど利益になる。私はいてもいなくても良い人材だし、探す義理もない。そんなことより私はここに無事に出れるかが心配の種だ。
「少しは心配ですよ」
「そっか。心配してるの僕だけでなくてよかった」
建設的な意見を出していないので安心するべきでない。話に付き合って欲しいだけなら付き合う気はない。
「すみません眠いので」
「えぇー」
「不安なら私の手を握ってください。ちゃんとあなたを守りますからご安心を」
「手を握ってて、そんな……」
とか言いながらしっかり手を握ってきた。肌色と同じく彼の体は冷たい。寒いのは彼の体が冷たいからと気づくと急に眠くなった。夏とか熱の時とか一緒に寝たいなぁ。
あと3話ほどぐでぐでだらだらした話が続きます。それが終わったら、主人公にダメなスイッチが入ります。




