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世界を×××、小悪党ども  作者: つちのえーたつ
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カルトなオカルトのアラカルト話(3)

 道すがら自己紹介をする。先頭はランプを持つチ類ミツオシエ族のガイドさん、真ん中に斧を杖代わりにする私、殿はマユさんをおんぶするホ類ラーテル族のハニーさんだ。2人は村の外には冒険がてらちょくちょく出るそうだが生まれてこのかた外の人間を見たことがなく、私たちは珍しく興味深いようだ。間が持つので助かる。

「外に出るのはいけないんですか」

 好奇心旺盛な少女たちである。

「うん。巫女様が外は悪い人間がいっぱいで危険だからって言うんだ」

「父も母も、そんな外が嫌でここに来たと聞いたわ」

 世捨て人が集まって暮らしているのだろうか。しかし「巫女様」という単語が気になる。

「外はどれくらい悪い奴らがいるんだ?」

 賞金首のたまり場にいる私に聞く台詞ではない。だからといって全員が全員悪人かと問われれば、一緒に生活している分ではそう思えない。運が悪かっただけの奴も逃げてきただけの奴もいる。最も団長に言わせると、私は赤ん坊だから自分に親切にしてくれる者を良い人間と認識しやすいだけらしい。そういえば彼は、ことあるごとに私を赤ん坊という。御せない魔物というより口当たりがいいのかもしれない。

「ま、それなりです」

「それなり!?」

 ガイドさんが青くなって口に手を当てる。

「大丈夫、あたしがガイドを守るから!」

「あなたそんなところにいて、よく生きてこれたわね……」

 涙ぐまれた。どんな末法の世を想像している。この筋肉野郎な見た目でも、ウサ耳だからひ弱に見えるのか。

「すべて悪人ではありません。良い人間だってたくさんいて、そういう方たちで助けあって生きてますよ」

 私は自力自衛で生きてきた部類の人間だろうけど。園芸用の土に芋をぶち込んだものをしょって冬の山を越すとか。これは自力というよりバカの部類な気がしてきた。

「母さんが言ってた。助けてもらったって言える人間はいい人間だって!」

 なんだか好感触。このまま飯にありつけたら嬉しい。

 村をぐるりと囲むどでかい壁までたどり着く。霧のせいかてっぺんが見えない。半里もないのに、視界と足場の悪さで随分遅くなった。

「ありがとうございます。ハニーさん、疲れていませんか」

「全然! この子軽いから。てゆーかさ、別にさんづけじゃなくていいよ。ねえ?」

「そうね。そんなかしこまらなくていいわ」

「わかりました、ハニー。ガイドもありがとうございます。こんなに遅くなって、お家の方もきっと心配してるでしょうに」

「困っている者を助けることは当り前だわ。ま、まあ、事情を離せば両親もわかってくれるはずだわ」

「あたし達はいったん戻るよ。セイント達を中に入れていいか、巫女様にお伺いを立ててみる。もしダメでもご飯や包帯は持ってくるから安心して」

 十中八九、家のモノに見つかってもう今夜は外に出るのダメコースと思われるので気持ちだけ受け取る。

 ハニーはしゃがみこみ、抜け出たという穴を探す。しかしなかなか見つからずハイハイでうろついている。

「ない? なんで!?」

「ええ? 外から門は開けられないわ。どうしたら……」

 2人ともみるみる涙目になっていく。どうやって慰めたらいいのだろう。謝ってもどうにもならないからな。いい案がないか考える。ガイドから落ちた羽が目に入った。別に悲観することはない。チ類は飛べた。

「ガイド、あなたが壁を飛び越えて、上からロープを垂らして引っ張り上げるのはどうでしょう」

「その必要はありません」

 ボッボッボ。複数の火球が現れ、辺りを照らす。キツネかイヌの亜型の女性と鍬を持った男が数人。ハニーとガイドの両親には到底見えない。

「巫女様!」

 2人がはもる。巫女と言えば黒髪の少女を勝手に想像していたが全然違う。紫がかった赤毛で、鼻筋がしゅっと伸びた美人だ。胸もずっしりと重そうで(しかも複乳!)、手のひらに肉球があるのが見えた。トクマル大歓喜なタイプだ。こんな上玉に会えるなんて、崖から落ちてよかったかもしれない。

「ハニー、ガイド。門の外に出てはいけないと教えたはずです」

 涙目から一転、少女は居心地悪そうに俯いた。

「それに外の方をここに案内してはいけないとも」

「あうう……」

 私も黙って聞いているだけでなく、何かフォローしないとだめそうだ。

「あの、巫女様。私は見た目以上に脳みそゆるっゆるなので」

「!?」

「ここで何かしようという害意はないですし、勝手に村に入る気もありません。それにこの子らは親切心でここまで案内してくれただけですので、あまり責めるのも……」

 巫女は考え込むように私とマユを交互に見る。

「どうやってこの地に?」

「崖から落ちたんだって」

「巫女様はセイントに聞いているのよ」

「崖から? そもそも何の用でこの山に来たのです」

 そこから説明しないとダメか。正体不明を村に近づけるのはデメリットが大きいから仕方ない。

「私は武装商船アン・リタ団の船員、ホ類ウサギ族のセイントです。異世界専門の商船でして」

「……異世界?」

 やっぱり閉塞的なんだろう、食いついてきた。簡単に崖から落ちるまでの経緯を話す。

「それは災難でしたね」

「はい。部外者が入るのが不都合でしたら、何か暖をとれるものを貸していただけませんか。この子の体が冷えて心配なんです」

 マユの顔色はいつも通り悪い。何も知らない者が見れば少し気になるほどに。

「この子、身体すごく冷たくって、ほっといたら風邪ひくかもしれない。セイントも悪人じゃないと思うんだ。巫女様、お願いします。2人を助けてあげてください!」

 頭を下げる少女達。がんばれがんばれ。

 子供の清い心に大人は折れた。

「……例え教義を信じなくとも、困っている者を見捨てることこそ神の教えに反します。あなた達をお招きしましょう」

 思ったよりまともなのかもしれない。これはついている。

「ですが」

 巫女は近づくと、私が首からぶら下げているタバコ入れを取った。

「タバコなどの嗜好品は禁じられていますので」

 まじかふざけんな。

「困ります」

「なぜ?」

「死んでしまいます」

「吸う方が悪影響です」

「いえ、私でなく周りの方が」

「厭きれた言い訳ですね」

 くるりと背を向けると巫女は門に向かって歩き出した。

 追いつくと既に門は開いていた。担架も2つある。

「神殿まで距離がありますから乗ってください」

「どうも」

 私はデカくて重い。案の定、持ち手のおっさんはふらついた。

「歩けないこともないです」

「ケガしてるなら安静にしてろ」

「こっちの嬢ちゃんにみたいにおとなしくしてな」

 その人は男だ。言われた通りおとなしくする。途中でハニー・ガイドと別れ、両親らしき者に拳骨を食らっているのが見えた。

 石造りの寒そうな村で1番大きい建物--ティアマトの神殿に運ばれる。巫女は自室に戻り、代わりにネコ族ソコケの女性が案内してくれた。

 救護室は思ったより暖かい。足にしっかり添え木をしてもらう。マユはまだ起きる気配がない。しばらく眠り続けて、また記憶がないなんてことがないように祈る。そんなめんどくさいこと真っ平御免だ。

 松葉杖をつきながら、ソコケに巫女の部屋まで案内された。マユと離れるのは心配であるが、気を失っている者を連れまわすわけにもいかない。

 部屋では巫女がお茶を沸かして待っていた。

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