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世界を×××、小悪党ども  作者: つちのえーたつ
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カルトなオカルトのアラカルト話(2)

「うぅわあああああ!!?」

 落ちている。幻術にでもかかっていたのだろうか。崖に気づかず2人とも落ちるなんてあり得るのか。とにかく、このまま地面にぶつかったら死んでしまう。ちょっと金がかかるが仕方ない。

「マユさん、ちょっと」

「ぴゃあああああああ!!」

 ひときわ変な声で叫ぶと、彼は両手を合わせる。以前砂漠で見た、淡い黄緑の光が出る。

 --ザザザザザザッ。

 木の根や蔓が尋常でない速さで伸びてくる。私たちを受け止めるため複雑に絡み網のようになった。

「なるほど。これなら」

 マユはうまく受け止められたが、私は重いせいか勢いよくズバンと網を突き破った。

 最悪だ。

 私を受け止め損ねたことに気づいた網が迫ってくる。

「いいですよ。私飛べますんで」

 言葉が通じるわけもない。蔓が左足に絡み、根を張り一瞬宙吊りになる。

「その止まり方をされたら」

 落下の衝撃が全て左足にかかった。反動で起きあがりこぼしのようになる。股から裂けて死ぬかと思ったがそんなことはなかった。ただ、むちゃくちゃ痛い。

 何度かバウンドし、止まってからやっと地面におろされる。あと3尺ほどで地面だったので文句は言えないな。

 マユは気を失っているだけで目立った外傷はない。魔力ぶっぱすると気を失うのは確定的だ。体質だったら嫌だな。異世界の人間はたまに変な体質のがいると聞く。単にコントロールが下手なだけであることを祈る。

 ブーツを脱いで患部を確認。打ち身で捻挫まではいってない。我ながら丈夫である。今回は探しに来てくれるだろうか。魔物の気配がしないことを確認し、一服しながら待つ。少しぐらいなら生き物がいたっておかしくないのに、変なの。

 日はどんどん暮れ、霧がでてきて視界が悪い。しかも寒い。上から見つけるのは確実に無理だ、あきらめよう、野宿は嫌だと考えていると微かに足音が聞こえた。地面に耳を当てる。こちらに向かっている足音が2人分。マユの奇声を聞いて調べに来たのかもしれない。足音には怯えが混じっている。このまま出会ったら私は美少女を襲う暴漢に間違えられる可能性が高い。何かないかとポケットを探る。手鏡、犬笛、ランプ、コンパス。すべてお菓子のおまけで、コンパスは狂っていて役に立ちそうもない。叫ぶことにした。この距離なら気づいてもらえるだろう。大きく息を吸い込む。

「誰かいませんか? 友人が気を失っているんです。誰かー!」

 木がビリビリ震える。

「そこに誰かいるのか?」

「います!」

 やや高めの子供らしい声が反応する。この際子供でもいい。もう今日は船の救助は望めない。子供たちに見つけてもらおう。

 マユを抱いて立ち上がる。斧を具現してもたれかけた。動きやすいようブーツの長さを調整する。これでよし。

「おーい、そこか?」

「そこがどこかわかりませんが、私はここにいます」

「よし! 全然わかんないけどそこ行くな!」

 不安に駆られる会話だが、声の主は確実に近づいている。相手にわかりやすいようライターをともす。よく考えたら、タバコを吸うから火の元は常に持っていた。

「ライターの灯り見えますか」

「見える見える、大体合ってる!」

 木々の合間からチカチカ光が見える。聴力が優れている子なのかな。子供の話声も聞こえてきた。

「あのぼんやりした灯りのとこかしら?」

「たぶんそうじゃない? おーい、手を振ってくれないか! たぶん、近いと思うんだ」

 ライターの火が消えないようゆっくり腕を回す。見えた見えたとはしゃぐ声が聞こえる。

 やっと灯りの主たちの顔が見えるところまで近づいてきた。2人ともなかなかの上玉だ。少ししてからあっちも私たちを認識した。

「やっとたどり着い……ひぃ!」

 ランプを持つチ類の少女は腰を抜かしそうになり、声をかけ続けてくれたホ類の少女は毛を一気に逆立てた。予想よりずっとましな反応で安心する。こういう時は淡々としているのが一番いい、はずだ。

「こんばんは。先ほどから声をかけ続けてくれた方ですよね」

「その声……。そ、そうさ、友達って、その子?」

 何故友情がめばえたんだと言いたげな視線だ。私が話しても真実と捉えられないだろうから何も答えない。

「ええ、上から転がり落ちまして。この人は気を失うし、私は足を痛めて動けないしで途方に暮れていたんです。こんな場所だから友人たちの助けも当てにできなくって」

 自分が無表情なのは百も承知だが、なるべく困り感を出すように努める。

「外から来たのなら……ううん、崖から落ちたなら足を痛めるだけで済むとは思えないわ。あなた達、人型でしょ」

 チ類の少女はじっと睨む。疑われるのも無理はない。亜型や原型に比べて人型は脆い。反対に魔力は高いものが多い。

「この人が魔法で守ってくれたんです。それで魔力を使いすぎて気を失ってしまったんですけど。私が足を打ったのは不運というかなんというか」

「ふーん、あんたトロいんだなあ!」

 ホ類の少女はケラケラ笑って私の背中を叩く。警戒を解くのが早すぎて逆に心配になった。

「とにかく2人ともゆっくり休まないと。ちょっと離れてるけどあたし達の村があるんだ。歩けそう?」

「外の人間を勝手に案内なんて巫女様に怒られるわ」

「でも困っている人間を助けなさいって言ってるよ」

 巫女様とやらの言いつけが矛盾するようで困っている。

「私達はあなた方に何もする気はないです」

「ほら、こー言ってるしさ。悪者じゃないよ」

 何かする気の奴は正直に言わないだろう。

「……もし私達に施しをすることで、あなた方が不利益を被るなら何もしないでください。誰かいるとわかっただけでも心強いです」

 こういうとき笑えたらいいのに。でもチ類の少女は良心を刺激されたのか、ぐらついている。もう一息だ。

「霧が濃くなってきましたね。怪我人と歩いたら遅くなってしまいます。お家の方が心配するから早く帰らないと」

「私たちが帰ったらどうするの?」

「落ち葉ひっかぶって暖を取りつつ、友人の助けを待つしかないです」

「ご飯は?」

「木の根っこでも食べます。毒はないでしょう」

 少女が心の中の何かと葛藤している様子がよくわかる。子供にとって、偉い人の言い付けを破るなんて重大なことだからな。

「うう……! 村には入れられないけど、近くなら、近くに案内するぐらいならっ……」

 なかなかよい妥協点を見つけてくれて何より。良心の発達している子でよかった。

 お礼を言うと、ホ類の少女が得意げにない胸を張るのに、チ類の少女は罪悪感でいっぱいになっているのが対照的だった。

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