序章 君ト同ジ血ヲ受ケ継グ者
君と2人で出かけたその日。
何の予定もなかったけど、僕は小さなブーケを持っていた。
黄色い花が数本。
この花を買った花屋の店員さんはやけに嬉しそうだった。
頼んでもいないのに桃色系の紙2枚を重ねて包み、パステルカラーのリボンで複雑にラッピン
グしてくれた。
明らかに男向けにはありえないアレンジ。
多分、彼女へのプレゼントだと思ったのだろう。
確かに女性宛ではあるけれど、相手の女性は彼女ではない。
前もって確認しておいた、彼女の実家。
もう誰も住んでいないよと笑った君は、少し寂しげだったから。
驚くだろうか?
彼女の手を引いて、電車に乗り込む。
目的地は2駅離れてて、駅からバスに乗ったあと更に20分ほど歩かないといけないらしい。
本来なら僕たち学生はいつもと同じく学校へ向かうべき日だ。
だからだろうか。
この車輌には僕たち以外では老人が1人、今時の格好をした若い女性が2人。
それだけだった。
「そのブーケ、何?」
他愛もない話をしていたけど、突然聞かれた。
彼女の指が指すのは黄色いブーケ。
あの店員さんが思いっきり女性向けにアレンジしてくれたやつだ。
少し黙って考える。
「そうだね、これは……」
今は亡き、君の両親や親類へのプレゼントかな。