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自覚しました




ふわふわしてとっても気分が良かったお祭りの日。

収穫祭の締めにダンスがあって、あたしは上機嫌でエーネと踊ってた。

ダンスを踊ったことなんて全然なかったけど、エーネのリードが上手くて体が勝手に動いてたような気がする。

すっごく気分が良くて、エーネを見上げてへらへら笑ってた記憶で・・・終わってる。



どういうこと?

どうしてこんなことに?

なんでエーネが隣に寝ているの?

なんでエーネのシャツの前が開いてるの?

あ。暑かったから?そうよね?それだけだよね?

硬いベッドの上、日の光を浴びて眠っているエーネをちらりと見てから慌てて逸らす。

はだけたエーネの胸を見ないようにしながら、ベッドから下りようと静かに起き上がり、んなーっ!?

咄嗟に悲鳴を飲み込み思いっきり服の前をかき合わせた。

何このかっこ!

えーっ!なんであたしまでー!?

起きてもないエーネに背中を向けて、胸元まで開いたワンピースのボタンをせっせと留めていく。

細かいボタンと、焦ったせいで指が震えて少し手間取ったけど何とか留め終わり、そっと隣を見るとエーネはまだ眠っていた。

そのままエーネを起こさないように気をつけながら、ふらふらする足と心で部屋を抜け出した。


自分の部屋に入って扉を閉めると、ちらっと襟ぐりから中を覗いてずるずるとその場にしゃがみ込んだ。

良かった。噂の“虫刺されのようなもの”がなくて。

はあーっとため息を吐くと、足を抱えて目を瞑る。

・・・うーん、思い出せそうで思い出せない。

ダンスの後、誰かにおんぶされてた・・・ような、気も、する。

うわぁ、でもこれを確認するのはちょっと・・・

真相を知ってるのがエーネだけだとしても、無理だ。気まずすぎる。

だってせっかく注意してくれたエーネにあんなこと言っといて、最後は酔っ払って倒れたってことでしょ?

・・・最悪だ。

うーんうーんと唸っていると、控えめな足音が聞こえてきて後ろで止まった。


「・・・ナーナ?」


一瞬、扉越しのエーネの声に何か思い出しそうで、両方のこめかみを押さえる。



最近じゃない・・・


ここへ来る前に、どこかで・・・


とても大切なことを・・・



『・・・必ず・・・』

「っ!」



はっと目を開いたとたん、ずきっとした痛みがあって思い出しかけた何かはあっさりと消えてしまった。

鈍い痛みもすぐに治まっていく。


「ナーナ?」


そのまま頭を押さえて蹲っていると、エーネがもう一度、今度は扉の近くに口を寄せたようにごく間近で呼びかけてきた。

その心配そうな声に少しだけどきっとする。


「うん、大丈夫。なんでもないよ?」

「・・・・・開けても?」


あ、それはちょっと待って!

今開けられると押されて転がるから!


「ごっ、ごめん!今はちょっとその・・・」

「ぇ、あ、ち、 違う!あれは誤解だ!苦しそうにしてたから緩めただけで!」


どこか必死そうなエーネに首を傾げてすぐに思いあたった。


「あー、それならうん。エーネが何もしないことくらいわかってるから。安心して?」


少し笑って言った自分の言葉に、ぎゅっと苦しくなった。


・・・エーネはただの使者なのに。

王様の命令でやって来ただけで、あたしと何かあったりするはずないのに。


それがどうして、こんなに、寂しいんだろう・・・?





・・・・・え?


・・・あ、あ、あ・・・あーっ!


こ、こ、こ、これって来い、じゃなくて濃い、でもなくて恋なんじゃ!?



あたし、エーネのこと・・・好きなんだーっ!!




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