四 蚩尤旗
悪所は、変わりつつある。
赤い。
(うーむ)
あちこちに赤い布が結びつけられている。
赤い札が貼られ、陋屋の網代にも、赤い塗料で「丁」の字が書かれていた。
「丁」は、蚩尤の彫刻の、頭頂から生えている突起物だ。
兵主神の頭から生えている、弓か弩を表している。
衣類を赤く染めているものもいる。
赤い小旗をたずさえるもの、杖に赤い布を巻き付けているもの・・あの、彫刻の蚩尤と同じ、「人面獣身」に見える象貌が、あちこちに描かれている。
この赤い色と、兵主神の姿が、疫鬼を退散させる、という。
赤が、さまざまな場所を飾っている。
「あらたかですなあ」
世道が言う。
あらたか、とは、霊験や薬効がはっきりとあらわれていること。
赤は、蚩尤の色。
「功徳も、薄くはあるまい」
江戸時代でも、赤い色は、疫病を退けるとされていた。
兵主神社に、素戔嗚尊という、疫病封じの神がしばしば祀られていることを考え合わせられたい。
兵主部は、普請を終わらせた。
さつき廿日のことである。
兵主神社、と、ヘンガク(扁額)に大書した鳥居が立てられる。
兵主神社の文字は、赤い扁額に、金文字でしたためられていた。
境内は広々としていて、参道が石畳で舗装されている。
石灯籠には例の「人面獣身」じみた絵像が彫刻されていた。
赤い瓦で葺かれた拝殿「人面獣身」蚩尤像が描かれたのぼり(幟)や蚩尤旗がはためく。
どうにも、神社らしからぬ風景だ。
「きらぎらし」
みな、度肝を抜かれている。
刷雄が見る限り、これは、大陸のドウカン(道観、道教寺院)に似通っている。
(やりおった)
それら一切を見下ろす、牛頭六臂の、巨大な頭部を持つ祭神・・・




