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兵主部壱 長岡混沌京  作者: ずずつすず
牛頭の祝
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33/47

四 蚩尤旗

 悪所は、変わりつつある。

 

 赤い。

 (うーむ)

 

 あちこちに赤い布が結びつけられている。

 赤い札が貼られ、陋屋の網代にも、赤い塗料で「丁」の字が書かれていた。

 「丁」は、蚩尤の彫刻の、頭頂から生えている突起物だ。

 兵主神の頭から生えている、弓か弩を表している。

 衣類を赤く染めているものもいる。

 赤い小旗をたずさえるもの、杖に赤い布を巻き付けているもの・・あの、彫刻の蚩尤と同じ、「人面獣身」に見える象貌が、あちこちに描かれている。

 

 この赤い色と、兵主神の姿が、疫鬼を退散させる、という。

 

 赤が、さまざまな場所を飾っている。

 

 「あ(・)ら(・)た(・)か(・)ですなあ」

 世道が言う。

 あらたか、とは、霊験や薬効がはっきりとあらわれていること。

 赤は、蚩尤の色。

 「功徳も、薄くはあるまい」

 江戸時代でも、赤い色は、疫病を退けるとされていた。

 兵主神社に、素戔嗚尊という、疫病封じの神がしばしば祀られていることを考え合わせられたい。

 

 

 

 兵主部は、普請を終わらせた。

 さつき廿日のことである。

 兵主神社、と、ヘンガク(扁額)に大書した鳥居が立てられる。

 兵主神社の文字は、赤い扁額に、金文字でしたためられていた。

 境内は広々としていて、参道が石畳で舗装されている。

 石灯籠には例の「人面獣身」じみた絵像が彫刻されていた。

 赤い瓦で葺かれた拝殿「人面獣身」蚩尤像が描かれたのぼり(幟)や蚩尤旗がはためく。

 どうにも、神社らしからぬ風景だ。

 「きらぎらし」

 みな、度肝を抜かれている。

 刷雄が見る限り、これは、大陸のドウカン(道観、道教寺院)に似通っている。

 

 (やりおった)

 

 それら一切を見下ろす、牛頭六臂の、巨大な頭部を持つ祭神・・・

 

 

 


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