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神ゲームの最古参 ~私の師匠は猫さんです~  作者: ma-no
一章 猫に弟子入り

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8/10

008 待ち合わせ


「なんだかご機嫌ね」


 ここは現実の田村家のダイニング。上機嫌で晩ごはんを食べていたらお母さんに指摘されて恥ずかしくなる。


「うん。久し振りに思いっ切り走ったから……あ、ゲームの中の話ね? そこの猫さんがすっごくかわいかったの~」

「うんうん。そうなんだ~……猫さん??」


 お母さんは微笑ましく聞いてくれていたが、猫さんにめちゃくちゃ引っかかってる。説明しても何故か信じてくれない。


「ひょっとしてママもPHOしてたの?」

「ええ。若い頃にね。パパを何度もPKしちゃった。エヘ」


 そうか。半世紀近くも人気ゲームなんだから、お母さん世代もやってるよね。まさかパパもやっていて、ママが()ッたとは思いもしなかったけど……


「今は獣人も選べるのね。私の時はNPCだけだったのに」

「今も選べないよ。なんか猫さんはなりたくて猫になってるワケではなさそうだったけど」

「そうなの?」

「聞こうとしたら、愚痴を7時間聞かせることになるって言われて……」


 猫さんの話をしていたら、お兄ちゃんが「腹減った~」とか言いながらやってきた。もちろんママに「遅い。ゲームやりすぎ」と怒られてました。


「そっちはどうだった? 上手く歩けるようになりそうか??」

「うん。もう走ってる」

「おお~。さすが古参さん。やっぱり頼って正解だったな~」


 猫さんに教えてもらったことを喋れる範囲で掻い摘まんで説明してあげたけど、ゲームの中は夢の中だという理論はいまいち実感が持てないみたいだ。


「そういえばお兄ちゃん、猫さんと2人きりで何を話していたの?」

「障害者家族の心得えみたいな? あんまり一緒にいないほうがいいんだって」

「あ、それは私も言われた」

「あと、ずっと一緒にいたら悲惨なことになると脅された……」

「なになに? それは聞いてないな」


 お兄ちゃん(いわ)く、昔々仲良しの兄妹がいたそうだ。それは表面的な部分だけ。妹は構いすぎる兄から離れたくて仕方がなかったそうだ。

 それでも一緒にゲームを続けていたら、ボス戦のラストで事件が起こる。妹が兄を後ろから刺し殺したのだ。


『うふふ。お兄ちゃんにはボスドロップなんて一生あげな~い。うふふふふ』


 ささやかというか怖い復讐を狙って、妹さんは暗殺系のスキル構成にしていたんだって。パーティメンバーは何度も止めたらしいが、やめる気配がなかったから兄に死の理由を説明して引き離したそうだ。


「ふ~ん。なるほど~……」

「なんでそんな反応なんだ? 普通、怖がるだろ? まさか暗殺系のスキル構成にしないよな? な??」

「まっさか~……あ、ママ。ママの時代に、猫さんを見たとかいう人いなかった?」

「なんではぐらかすんだよ!?」


 私が明言を避けると、お兄ちゃんの声は大きくなる。なんだかこんなに言葉が飛び交う食卓は久し振りだったので、私達家族は終始笑顔だったのであった……


 あ、パパは残業でいなかったから、あとで「俺もそこにいたかった~」って泣いてたんだってさ。



 この日はネットで少し調べ物をしてからベッドに入る。よく覚えていないけど、幸せな夢を見たのか今日の朝は凄く清々しい目覚めだった。

 猫さんとの待ち合わせは午後からだったので、両親の出勤を見送って朝の内は夏休みの宿題をする。お兄ちゃんはゲームしてる。大学って夏休みの宿題ってないのかな? あってくれ~。


 お昼ごはんは自分で適当に用意して食べたら、予定の時間前にVRギアを被ってベッドにゴロン。集中して待っていると、少しの浮遊感のあとに目の前が開けた。開始位置のポータルに着いたのだ。

 ガヤガヤと雑音が聞こえるなか、キョロキョロしてみると猫さんの姿があった。正確には、昨日見せてもらったフード付きのマントを頭から被っている。


 私は駆け寄ろうとしたが、猫さんは右手を開いて「待った」というような仕草。そのあとにチョイチョイと指差した方向に歩き出したから私も続く。

 そして始まりの町を出て、人気(ひとけ)のない場所まできたところで猫さんは立ち止まって振り返った。


「こんにゃちは。コソコソさせて悪かったにゃ~」

「こんにちは。猫さんだとバレたら追われちゃいますモノね。クスクス」

「その通りにゃ~。あいつら、群れで来るから撒くの大変なんにゃ~」


 ちょっと雑談したら、猫さんはついてくるように言うので後を追う。始まりの町から離れているらしいので、私は歩く練習。猫さんはモンスターを木の棒で突いて倒しながら進んでいた。


「昨日より楽に歩けてるってところかにゃ?」

「はい。まだちょっと違和感がありますね」

「じゃあ今日も走る練習だにゃ~」

「できたら今日は猫さんの話を聞きたいのですけど……」

吾輩(わがはい)の話は愚痴ばっかりで面白くないにゃよ?」

「愚痴でもかまいません!」


 というか、その愚痴、絶対面白いはず!!


「そんにゃに聞きたいにゃら、長時間バージョンを披露しようかにゃ? 48時間コースにゃ~」

「え……7時間じゃ……」

「7時間は掻い摘まんだだけにゃ。昔、弟子にした子は48時間聞いたら、涙ながらに吾輩のことを励ましてくれたんにゃ~」

「は、はあ……」


 それは丸二日間も愚痴を聞かされたから、泣いていただけでは? 私、失敗したかも!?


 私のテンションがガクッと下がっているのに反比例して、猫さんは「にゃ~にゃ~」と鼻歌まじりに棒を振り回してモンスターを倒しながら進むのであった。


 猫さん、まだスキル1個で弱い武器使ってるんだ……どんだけこのゲームをナメてるんだろ……


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