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神ゲームの最古参 ~私の師匠は猫さんです~  作者: ma-no
一章 猫に弟子入り

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007 猫さんの指導


「もうそろそろ離れようにゃ。にゃ?」


 心のつかえが取れた私が猫さんを抱き締めて泣いていたら、迷惑そうに言われてしまった。


「まだ涙が止まらなくて顔を見せられません……」

「ウソ言うにゃ。10分ぐらい前からモフモフ言ってたにゃ~~~」


 バレてた。猫さんが止めるまでモフりまくってやろうと思ってたの……

 こうなっては仕方がない。またモフらせてくれるかもしれないし、ここは引いておこう。


 私が抱き締める手を緩めると、猫さんはスルリと抜け出して丸太の椅子に座った。


「さてと……にゃにからしよっかにゃ~?」


 今からこの不自由な体を改善してくれるのだ。私も椅子に座って背筋を正す。


「もう夕方にゃけど、時間は大丈夫にゃ?」

「あ、はい。7時ぐらいまでなら……猫さんが大丈夫でしたらですけど」

「そんじゃあ、今日のところはPHOの心構えと体の動かし方からやろうにゃ~」

「はい!」


 ちょっと言ってる意味はわからないけど、いい返事をしておく。


「まず、心構えの話にゃ。ここをどんにゃ場所だと認識してるにゃ?」

「ゲーム? ゲームの中です」

「うんにゃ。百人に聞いたら百人がそう答えるにゃ。でも、ちょっと違うんだにゃ~」

「違う??」


 もっと意味がわからなくなっちゃった。


「PHOを遊ぶためには、簡易版のVRギアとプロ用のマッサージチェアみたいのやベッドみたいのもあるんにゃ。それはどれも脳とインターネットを繋げる道具なんにゃ」

「はあ……」

「では、いま見てるモノはにゃに? って話にゃ」

「えっと……映像? あれ? 目で見てるの??」


 私、混乱。まったくそんなこと考えてなかったもん。


「正解は、夢にゃ。フルダイブ型のゲームは、ほとんど夢を見させているんにゃ。現実の体もレム睡眠の状態になってるんにゃよ~?」

「ああ~!」


 私、納得。でも、こんなにハッキリした夢ってちょっと怖いね。


「んでにゃ。夢の中にゃのに、どうして体が思い通りに動かないにゃ? いつも見る夢はどうにゃ? 走り回っていたりしないかにゃ?」

「どちらかというと、体が動かなくなる夢をよく見るんで……」

「悪夢にゃ~……恐怖が強いってことだにゃ」


 猫さんはヒゲを軽く引っ張って数秒考えていた。


「話は変わるけど、ここには四肢が欠損してる人もいるにゃ。片足がなかったり、全部なかったりの人もいるにゃ。その人は、どうやって歩いていると思うにゃ?」

「昔を思い出してとかですかね?」

「生まれた時からない人でも元気に走り回ってるにゃよ?」

「わ、わからないです」


 私が正直に答えると、猫さんは優しく笑う。


「にゃはは。これの正解も夢だからにゃ。欠損している人は、夢見がちなんにゃ」

「えっと、何が言いたいのでしょうか?」

「夢の中にゃんだから、にゃんでもできるってだけにゃ。今から見せることはリハビリギルドの秘術にゃから、お兄ちゃんにも秘密にするんにゃよ?」

「はあ……」


 猫さんはおもむろに立ち上がると、1メートルほどの棒の中央を握って右手を伸ばし、地面と平行にする。


「さあ、世にも珍しいゴム人間の妙技を御覧あれにゃ~」


 私が「ゴム猫じゃないの?」と心の中でツッコんだ途端、猫さんの右手はギュルギュルンと回転して、持っている棒は扇風機みたいになった。え? 気持ち悪っ。


「にゃはは。キモイにゃろ~? 関節だって逆に折れるにゃよ~??」

「うわっ! 痛い痛い痛い……」


 猫さんの足の関節が逆に曲がるのは恐怖映像にしか見えない。と思ったけど「ぬいぐるみならそんなこともできるか」とも思って恐怖は和らいだ。


「にゃ? にゃんでもできるにゃろ?」

「は、はい……これもバグ技ですか?」

「うんにゃ。ただ、相当思い込みが強い人しか使えないにゃ。だから、運営はこのバグは直さないんにゃ。リハビリギルドの訴えが通ったってのもあってにゃ」


 詳しく聞くと、どうやらこのバグ技は一度修正されたらしい。具体的に言うと、スキルや戦技を除く動作を、その人がリアルでできる範囲のことしかできなくしたそうだ。

 しかしそのせいで障害者の人が歩けなくなったりしたので、運営も大々的に知らせないならと目を瞑ったそうだ。



「とりあえず、認識は変わったかにゃ?」

「はあ……」


 とは言ったモノの、まだゲームと現実の狭間にいるけど……


「それじゃあ次は体の動かし方だにゃ。リハビリギルドでは、ある程度歩ける人は軍隊みたいなフォームで歩かせるんにゃけど……部活とか入ってなかったにゃ?」

「り、陸上を少々……」

「競技はにゃに??」

「短距離です。100メートルと200メートル」

「おお~。それはちょうどいいにゃ~」


 私が明らかに顔を曇らせても猫さんは何もなかったように話を続ける。


「走るフォームとか習ったにゃろ? その通りやったらすぐに走れるようになるにゃ。歩くより走るほうが早く覚えるってのは矛盾にゃけど、これはリハビリギルドでも実証されてるにゃ~」

「本当に矛盾してますね」

「にゃ~? ま、走るフォームで歩き方が引っ張られるってことみたいにゃ。まずはやってみようにゃ~」

「はい!」


 猫さんに言われた通り常識を捨てて、中学生の頃に習ったフォームを丁寧にゆっくりと繰り返せば、何度かコケたけどすぐに走れるようになった。


「にゃはは。速いじゃにゃ~い。ここでにゃら、世界記録、余裕で更新できるにゃよ~?」

「本当ですか? 勝ちたい選手がいたんです」

「それじゃあ速く走れるようになったら、陸上ギルドに行くといいにゃ。100メートル4秒台の強者もいるからにゃ~」

「それはいくらなんでも速すぎですよ~」


 久し振りに走ったからか、自由に走れるからか、この日の私はログアウトするまで、何度も何度も100メートルを行ったり来たりしてしまうのであった……


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