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神ゲームの最古参 ~私の師匠は猫さんです~  作者: ma-no
一章 猫に弟子入り

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006 アニマルセラピー


 第4エリアの平野で猫さんに教えてもらったバグ技のまま動いて前にジャンプすると、そこはたいして変わらない景色。お兄ちゃんが嬉しそうに立っている以外、違いはなかった。


「これでバグ技っての、成功してるの?」

「ああ。こっちからだと、2人とも見えなかったぞ」

「へ~。本当だ。猫さんがいない」


 振り向くと立っているはずの猫さんが居なかったから実感は持てたけど、その瞬間に猫さんが空間に飛び込んできたからぶつかってしまった。


「大丈夫だったにゃ?」

「はい。モフモフです~」

「顔を揉むにゃ~~~」


 でも、モフッとした感触だったのでうっとり。思わず抱き締めて頬ずりしていたら、お兄ちゃんに引き離されてしまった。このケチ……


「ちょっと待っててにゃ~」


 猫さんはそう言うと、アイテムボックスというプレイヤー全員が持っている倉庫みたいな所から丸太を取り出して、剣で輪切りに。丸太の椅子とテーブルを作ったら、そこにお茶とお饅頭まで出してくれた。


「あ……美味しいです。このゲーム、味覚とかもあるんですね」

「それが醍醐味みたいなもんだからにゃ」


 お兄ちゃんはあっという間に完食して物欲しそうに猫さんを見ていたが、猫さんは無視して話をする。


「それで、相談ってにゃに?」


 その言葉でお兄ちゃんも背筋を伸ばした。


「実は妹のカノのことなんですけど……ASLって病気で、最近歩くのも辛いみたいで……ASLってわかりますか?」


 猫さんは私の顔を見てから質問に答える。


「筋肉が萎縮(いしゅく)する病気にゃろ? そんにゃの相談されても治せないにゃ~。病院行ったらどうにゃ?」


 その答えに、私はズルッとお尻が滑った。お兄ちゃんの質問も質問だけど、猫さんの答えも答えだ。


「いや、そういうことじゃなくてですね。リハビリギルドは要介護2からしか受け入れしてなくて、妹の助言もしてもらえなくて……」

「あぁ~……いまは新規プレイヤーが多いんにゃ。じゃあ、中小の障害者支援ギルドを当たったらどうにゃ?」

「それも調べてみたら、中小ギルドは変なところが多いみたいで。親切にしてくれてるように見えて、宗教とか高いけど効かない薬とかを売り付ける人が多いみたいなんです。俺達じゃ見分けができないし……」

「ま~た増えてるんにゃ~……あいつら、潰してもまたすぐ湧いてくるんだよにゃ~」


 猫さん、意外とこのことに詳しい? いや、意外となんて言っちゃ悪いね。年の功??


「それで他を頼れなくて、吾輩(わがはい)ににゃんとかしてくれってことかにゃ?」

「まぁ……できれば俺も鍛えてくれたら嬉しいんですけど……」


 お兄ちゃん! 本心が漏れすぎ! 猫さんも嫌そうな顔してるじゃない!!


「う~ん……お兄ちゃんだけ、あっちで話そうにゃ。妹ちゃんにはケーキサービスしてやるから、ちょっと待っててにゃ~」

「はい……」


 猫さんはお兄ちゃんと離れると、そこで立ち話をする。私はなんの話をしているか気になるが、ケーキが美味しすぎてしばらく目を離してしまうのであった。



 私が猫さん達に視線を戻したら、猫さんはずっと腕を組んで話をしており、お兄ちゃんは身振り手振りで何かを言っていた。それから5分後には、お兄ちゃんは笑顔で戻って来たけど、どゆこと?


「あぁ~……カノ。カノのことはネコさんが上手く歩けるようにしてくれるって。すぐに冒険とかに出れるらしいぞ」

「……お兄ちゃんは? その間どうするの??」

「俺は邪魔みたいだから、レベル上げに専念する。いつになるかわからないけど、一緒にクエストとかやろうな」

「うん……わかった」

「じゃあ、ネコさん。妹をお願いします。俺は一旦ログアウトするな。晩ごはんまでにはログアウトするんだぞ」


 お兄ちゃんはそう言うと、本当にログアウトしたのかリョウガさんみたいに急に消えちゃった。あの心配性のお兄ちゃんが……解せぬ。

 猫さんは何も気にすることなく私の前に座ったから聞いてみよう。


「あの……お兄ちゃんは本当に納得してログアウトしたのでしょうか? 私を置いて離れるとは思えないのですが……」

「まぁ最初は一緒にやるとか言ってたにゃよ? でも、妹ちゃんはうっとうしいにゃろ? だから適当なこと言って排除したにゃ」

「……はい??」


 猫さん(いわ)く、リハビリギルドは家族だけで長期間プレイすることは推奨していないとか、本当にあった障害者家族の軋轢なんかを説明したらしいけど、なんで私がお兄ちゃんをうっとうしいと思ってると思ったんだろう……


「私、お兄ちゃんのこと、うっとうしいなんて思ってませんよ? いつも助けてくれるから感謝してます」

「うんにゃ。だろうにゃ。でもにゃ。ここはゲームの中にゃ。家族の助けもなく自由に動ける場所にゃよ? そんにゃ場所に毎日顔を合わせる家族と一緒にいる必要はないにゃ。障害者にも息抜きが必要にゃ~……と、リハビリギルドの受け入りだけどにゃ。妹ちゃんも、ここではワガママ言っていいんにゃよ?」


 ワガママ……ASLだと診断されて大泣きしてから、そんなこと言ったことなかったかも……


「未来を考えると不安だもんにゃ。頼れるのは今いる親兄弟だけにゃ。親が亡くなったら兄弟を頼るしかないにゃ。そりゃ申し訳なくてワガママも言えなくなるにゃ~……若いのに、今までよく頑張ったにゃ。吾輩でよかったら、好きなだけワガママ言ってくれにゃ。あ、モフるの以外でにゃ?」


 気付いたら、自然と涙が流れていた。私はこんなに我慢していたんだ……


「フッ……フフフ。アニマルセラピーは除外しないでください。フフフフフ」

「致し方にゃい。今日だけだからにゃ~?」


 人生初の、笑い泣き。猫さんの言葉全てが嬉しくて、私は笑っているのに涙が止まらなくなり、猫さんを抱き締めながら泣き続けるのであった……


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