004 質問攻め
リョウガさんのアバターが消えて数十秒……
スキルを1個しかセットしていない猫さんが、凄く強いリョウガさんに楽々勝利したことにも驚きなのに、命を奪ったような発言をされたから私達は驚きのあまり声が出なかった。
「こ、殺したのか……?」
お兄ちゃんが声を振り絞ると、地面に座って何かをしていた猫さんがチラッとだけ振り返った。
「んにゃワケないにゃ。強制ログアウトしただけにゃ」
「強制ログアウト??」
「死ぬほどのストレスがかかるとにゃ。ゲーム内のプロテクトが発動して追い出されてしまうんにゃ」
死んでないと聞けて私がホッと胸を撫で下ろしている間も、お兄ちゃんの質問が続く。
「あれは? ゲーム中の死者数っての……」
「日本だけで何千万人やってると思ってるんにゃ。その1%以下って話を出しただけにゃ」
どうやらパンゲアヒストリーオンラインプレイ中の死亡者は、脳梗塞や心臓麻痺といった突然死が占めるとのこと。
因果関係は議論の余地はあるらしいが、日本における突然死の割合より低いから、安全なゲームだと制作会社は言い切っているみたいだ。
「てことは、ブラフで勝ったってこと?」
「うんにゃ。粋がったバカには効果覿面にゃ~。しばらくPVPなんて怖くてできないからにゃ。にゃはは」
「はあ……」
でしょうね。首を切られて血がドバーッとなったと信じきったら、私はログインなんてできないよ。やっぱりこの猫さん、物騒極まりないわ~。
私が怖い物を見る目で猫さんを見ていてもお兄ちゃんの質問は止まらない。弱い斧でどうしてダメージを与えられたと聞くと、クリティカルヒットは最低1のダメージが入って痛みがあるんだとか。
座って何をしてるかと聞くと、PVPをすると負けたほうのお金と持ち物が勝者に移動するから、内容を確認していたとか。しかも完勝すると、相手が持つ8割のアイテムとお金が手に入るんだとか……
追い剥ぎだ。追い剥ぎ猫だ。しかもしかも「よわっ。いらねぇにゃ~」とか言っちゃってるし……
「さってとにゃ。そんじゃあ楽しいPHOライフを満喫してくれにゃ~」
ドロップアイテムの確認が終わった猫さんは、颯爽と立ち去るのであっ……
「ま、待った!」
「待ってくださ~~~い!」
いや、聞きたいことがありすぎて、私まで大声出して呼び止めてしまうのであったとさ。
「にゃに~?」
猫さんを呼び止めたモノの、私達兄妹は何から聞いていいかわからない。猫の姿の謎は5時間の愚痴を聞かされるし……
「えっと……外のフィールドって、家とか建てられないと聞いたんですけど……」
お兄ちゃん、グッジョブ。当たり障りのないことから会話の糸口を掴むみたいだ。
「正確には、建ててもその日の内に大量のモンスターが壊しに現れるんにゃ。スタンピード並みににゃ。だから誰も建てないだけにゃ」
「じゃあ、なんでネコさんは建てられるんですか?」
「バグの話をしたにゃろ? バグっている場所は、AIが不正の検知ができないんにゃ」
言いたいことはわからなくもないけど……と思ったら、お兄ちゃんが聞いてくれる。
「そもそもどうしてこんなところにログハウスを建てたのですか?」
「木を切ったからにゃ」
「はあ……」
お兄ちゃん、そこで終わらないで!
「わ、私からもいいですか?」
「いいけど……お触り厳禁にゃよ?」
「なんでですか!?」
「女子はすぐ撫でてくるからにゃ~」
間違えた! 猫さんが変なこと言うから聞くこと間違えたじゃない。めっちゃ撫でたいけど……
「撫でるとかじゃなくてですね。どうして木を切ろうと思ったかを聞きたかったのです」
「う~ん……暇潰しとか言えないんにゃけど」
「ゲームの中にいるんですから、ゲームをしたらいいだけだと思うんですけど」
「ゲームの中にいてこんにゃこと言うのもどうかと思うんにゃけど……飽きちゃったみたいにゃ??」
どゆこと? 飽きたならゲームしなくちゃいいだけでは?? お兄ちゃん、チェンジ!!
「飽きたのは、ストーリーとかですか?」
「うんにゃ」
「なんでですか? 毎年みんな楽しみに待ってるんですよ? 俺もストーリーが楽しみで始めたんですから」
「そりゃ10年ぐらいは楽しめるにゃろ。20年やってみろにゃ。消化試合みたいになるにゃ~。30年やったら、使い回しだらけだと気付いて物珍しさもなくなるにゃ~」
確かに。私も似たような漫画を読んでいたらそんな感覚になった記憶がある。
「ということは、そんなに長くプレイしてるってことですか!?」
私とは違ってお兄ちゃんはちょっと尊敬の眼差しになった。何故に??
「にゃんてにゃ。吾輩、まだ10代の子猫にゃ~」
絶対ウソだ。鳴らない口笛吹こうとしてるもん。
「すげ~! PHOの古参さんだ~。古参さんに会えるなんて思ってなかったです! 握手してください!!」
意味がわからない。古いとアイドルみたいになるの?
「嫌にゃ。吾輩の肉球が目当てにゃろ」
「違います!? 尊敬してるだけです!!」
その手も潰されるの!? 猫さんはどれだけ撫で回されて生きてきたんだろ?
「PHOのこと教えてほしいんですよ~。猫師匠!!」
「師匠と呼ぶにゃ。あと猫付けるにゃ」
またお兄ちゃんはとんでもないことを言い出したと思った矢先、何人もの足音が聞こえてきた。
「ここに猫の獣人がいるんだって」
「あの幻の猫さんにやっと会える~」
「生産者ギルドに運べば、1億ゲアで売れるってのもいいよな~」
「絶対捕まえてモフモフしてやるんだから!」
どうやらプレイヤーが集まってきたみたい。この猫さんはそれほどの珍獣なのかしら?
「チッ……誰かスクショをアップしやがったにゃ……」
猫さんは苦虫を噛み潰したような顔をしたあと、宝石を空中に投げた。それと同時にお兄ちゃんは「騎獣だ!」と目を輝かせた。
「こいにゃ! ドラゴン!!」
よくわからないけど、騎乗する動物かな? 名前から察するに、猫さんはドラゴンに乗って逃げる気だ。
「ゴロにゃ~~~ん!!」
と思っていた時がありました。猫です! おっきな猫さんが突如現れました!!
「ふたりとも、質問攻めにあいたくなかったドラゴンに乗れにゃ。急げにゃ~」
「「は、はい!!」」
こうして私達は、クリーム色の大きな猫の背中に乗り込み、空を飛んだのであった……
正直、私が質問攻めにしたいです!!




