003 PVP見学
私たち田村兄妹が未知との遭遇をしていたら、強そうなオジサンプレイヤーが乱入。猫さんに5年前に瞬殺されたらしいが、忘れられていたからずっと怒っていて怖いです。
「この大剣! 見覚えあるだろ!!」
「にゃいです……てか、5年前から装備はそのままにゃの?」
「違うに決まってるだろ!!」
「理不尽にゃ~~~」
うん。私もそう思う。オジサンもハッとした顔になったよ。
「ま、まぁ、アレだ。忘れてるなら思い出させないとな。俺様はリョウガ。もう間もなくスパルタスと呼ばれるほどの有名プレイヤーだ。名前ぐらい聞いたことあるだろ?」
「知りにゃせん……」
「はあ? それほどの力があってなんで知らない!? 普通、強いヤツは調べるだろ!?」
「ここ数年は引きこもってたからにゃ~」
リョウガさん、また怒り出した。猫さんに負けてから鍛えたとか言ってるのに、その猫さんはスローライフを送っていたとか言ってるから致し方ない。
しかも町の外にログハウスなんて建てられないんだって。どうやってるんだと怒られてるよ。
うん。なんとなくわかってきた。この猫さん、見た目もそうだけど行動も不可解その物みたいだ。
「うっさいにゃ~。そんにゃことどうでもいいにゃろ~。にゃにが目的なんにゃ。吾輩に用があるんにゃろ?」
「ハッ!?」
猫さんも苛立っているのか目的を問うと、リョウガさんは自分は何を喋っていたんだと気付いた。
「俺様と勝負しろ!」
「あぁ~。そゆことにゃ……PVPは久し振りだにゃ~」
「フッ。負けた時の言い訳か?」
どうやらリョウガさんは負けたことに根を持っていて、やり返しにきたみたい。言い訳も何も、猫さんは状況を説明しただけだと思うんだけど。
「ま、暇潰しに相手になってやるにゃ。かかってこいにゃ~」
「強気だな~……さすがは俺様を一度でも倒した猫だ。だが、あの頃の俺様とはまったく違うぞ! 強くなった俺様の力を篤と見よ!!」
「あの頃を知らないんにゃけど……」
「うるさ~~~い!!」
こうして猫さんのテンション低いツッコミと私達の頷きと共に、いきなりリョウガさんが駆け出したのであった。
先制攻撃はリョウガさん。凄く速く動いて気付いたら大剣を振り抜いたけど、猫さんにヒョイッと避けられた。でも、リョウガさんは馬鹿笑いしてる。
「ワハハハハ。おっそ。どうやら俺様は強くなりすぎてしまったようだな! ワハハハハ」
なぜ避けられた人が笑っているのかと首を傾げていると、猫さんが遅い理由を教えてくれる。
「あ、スキル、錬金しかセットしてなかったにゃ。にゃはは」
たぶんだけど、猫さんと初めて戦った時と比べてすっごく遅かったんだろうね。お兄ちゃんによると、スキルを何個もセットしておかないとステータスがかなり低くなると聞いてるし。
「ククク。PVPを受諾したってのに、スキルの確認も怠ったのか。間抜けすぎる。素人以下だな!」
「だから久し振りって言ったにゃろ~。ちょっと待ってろにゃ」
「誰が待つか! この一撃で殺してやる! そのあとなら再戦を受け付けてやるぞ! ワハハハハ」
「ちっちゃいにゃ~」
確かに器が小さい。リョウガさんの半分ぐらいしかない猫さんに小さいとか言われたくないだろうけど……
笑いながら斬り付けたリョウガさんの大剣をまた猫さんはヒョイッとかわす。そこからもリョウガさんは何度も大剣を振っているが掠りもしない。お兄ちゃんも「どうなってるんだ?」と呟いた。
「猫さんが上手く避けてるだけでしょ?」
「それはそうなんだけど、スキルを1個しかセットしてないってことは、ほぼ初期値だろ。あのリョウガって人は、最低でも10。マックス20個をセットしてるはずだ。10倍から20倍のスピード差だぞ? 避けられるワケがない……」
そう言われてみると変だ。私達はまだセットできるスキルは5個だけ。お兄ちゃんでもリョウガさんの攻撃を避けられる自信がまったくないらしい。
それなのに猫さんは20回以上避けてる。リョウガさんもおかしいと思ったのか、飛び退いた。
「スキル1個なんて嘘ついたな!!」
「嘘じゃないにゃ~。てか、お前、弱すぎにゃ。それじゃあスパルタスと呼ばれるまで、あとにゃん10年かかるんにゃろ?」
「はあ!? 俺様が弱いだと……」
「うんにゃ。そもそもスパルタスとは、戦闘狂と認められた馬鹿に与えられる不名誉な称号にゃ。相手に全力を出させない時点で失格にゃ~」
「だ、だったら全力で相手をしろ。待ってやる!」
「お前程度、スキル1個で充分にゃ~」
「ふっざけやがって~~~!!」
リョウガさんがまた怒りながら攻撃を再開すると、私はお兄ちゃんに質問する。
「2人が言ってるスパルタスってなに?」
「PHOで上位、数百人に入る戦闘力を持つ人の名称ってネットには書いてたけど……」
「猫さんの認識と違うみたいね」
「ああ……てか、あの猫、もしかしたらそのスパルタスじゃね?」
「馬鹿で不名誉とか言ってるから違うんじゃない?」
お兄ちゃんは何故か目をキラキラさせているのは放っておいて、戦闘に目を向けると猫さんの持つ斧がリョウガさんに当たった。
「ワハハハハ。なんだそれ! まったくダメージになってないぞ!!」
「強い斧だと木がすぐ切れて面白くないんにゃもん」
スキル1個に加えて、武器まで酷いの使ってたんだ……初心者の私が言うのもなんだけど、ナメすぎじゃない?
「それでどうやって勝つつもりだ? ダメージなしだそ? 今なら許してやるから、フル装備しろ」
「ザコにメイン武器も必要ないにゃ~」
「誰がザコだ~~~!!」
猫さん、煽るの上手すぎ。いや、リョウガさんが短気すぎ。でも、すれ違ったあとにリョウガさんの動きが止まった……
「にゃあ? いま、ビビってるにゃろ??」
「な、何がだ!?」
猫さんが勝ち誇ったように言ってるけど、何があったの??
「右の手首にゃ。内側を切られたから、血が吹き出して出血多量で死ぬとか思ったにゃろ?」
「思うか! これはゲームだ!!」
うん。私もそう思う。でも、リョウガさんは何をそんなに焦ってるの?
「話は変わるけど、PHOプレイ中の死者数って知ってるにゃ?」
「知らん!」
「日本だけで年間百人前後にゃ。さて……死因はわかるにゃ? ま、ここまで言ったらわかるよにゃ~??」
「PHOは安全安心のゲームだ! そんなことあるか~~~!!」
私もゲームの影響を受けて死ぬなんて信じられない。
それなのに2人が接近した次の瞬間にリョウガさんは首を左手で押さえ、両膝を突いたあと、アバターが散り散りになるエフェクトを残してこの場から消えたのであった……




