011 猫の呪い3
猫さんが猫になった理由を言ったあとに泣き崩れたので、私は慰めるために頭を撫で撫でしてる。チャンス到来だもん。
「お触り禁止にゃ~」
「あ……あはは」
「爪立てるにゃよ?」
「あははは……地味に痛い!?」
私が空笑いで乗り切ろうとしたら、本当に爪を立てられた。猫か。あ、猫だった。
「あの~……社長さんって、なんで猫さんだけ猫のままでいることを許可したのですか?」
猫さんが暴力的になったので、質問でごまかしてみる。
「吾輩のクランメンバーやフレンド、その他の外野のせいにゃ~~~」
猫さん、今度は泣きながら語る。どうやら運営は、猫さんと連絡が取れないから、猫さんの近くにいた人から聞き取りをしたそうだ。
そこで皆が揃って言ったことは、「あいつ、猫のアバターを消されたくないから、1人ストライキでログインしないだけ」との大ウソ。
さらには猫が好きで好きで堪らないとか、名前を『ネコ』にしようとして打ち間違えて『ネロ』になってしまったと追加。あとはパンゲアヒストリーオンラインへの愛。
こんな猫になれるゲームを作ってくれてありがとうと、周りの人々が口を揃えるものだから、社長は感動して猫さんにだけ、猫のアバターを残しただけじゃなく、永久に猫でいられるようにアバターの変更不可にしたんだって。
「あのアホ社長……ウソにコロッと騙されやがって~~~」
「フフ。猫さんは皆さんから愛されていたんですね。じゃなかったら、皆さん同じこと言いませんよ」
「い~や。5人目以降は、多くの関係者と関係者以外を集めて質疑応答の見本を配ってたんにゃよ? これ、イジメにゃろ? にゃあ!?」
「はい……イジメですね……」
猫さんの仲間、徹底的だな。どれだけ猫さんのアバターを残したかったんだか……でも、それだけするってことは、愛されてたと思うんだけどな~……猫さんって、すっごく有名な猫だったのでは?
「ちなみになんですが、猫さんって有名人だったんですか?」
「吾輩はボチボチかにゃ? クランとマスターがめちゃくちゃ有名だったから、お零れみたいにゃ??」
「なんというクランで、マスターの名前はなんですか? ちょっと調べてみたいです」
「う~ん……黒歴史が多いから恥ずかしいにゃ~」
猫さんは本当に照れてこれ以上は教えてくれなかった。でも、18年前に有名なクランに所属していたと聞けたから、調べられるはずだ。
「あ、そうそう。ドラちゃんって、本当はドラゴンなんですか?」
「そうにゃ~。うちの子まで猫にするにゃんてあんまりにゃ~。卵から大事に大事に育てたんにゃよ~? 猫は哺乳類にゃ~~~」
うん。これは本当に不憫だな。ドラちゃんも変更不可なんて、かわいそうすぎる。でも、そのおかげで背中に乗せてもらえたから、私は社長を支持するよ。それにしても、ドラゴンにドラゴンって名前を付ける、猫さんのセンスよ……
「あ、そろそろ夕方ですね。もっと長くなると思っていました」
気付いたらあっという間に夕方。話もちょうど終わったみたいなので、私はどうしようかと考える。
「にゃ? ここからが本題にゃよ?」
「本題ですか? 猫さんが猫になった理由もドラちゃんのことも聞けたじゃないですか?」
私が首を傾げると、猫さんは勢いよく立ち上がった。
「愚痴にゃ! 社長も吾輩を畜生にまで落としたヤツらも死にたくなるようにゃ愚痴をまだまだ言ってないにゃ! ヤツらを呪い殺せるようにゃ言霊を乗せた愚痴よ! 吾輩の口から溢れ出せにゃ~!! にゃ~はっはっはっはっ」
「ええぇぇ~~~……」
猫さん、これまで以上に口が悪い愚痴が止まりません。逃げ出したいけどドラちゃんを召喚して抱き締めさせるから、私は白目剥いてモフモフするのであったとさ。
「だ、大丈夫? なんか苦しそうにモフモフモフモフ言ってたよ?」
「ママ! 命の恩人だよ~~~」
「ええ~? 何があったらゲームで死にそうになるの??」
ここは現実の私の部屋。時刻は夕食時なので、ママが強制ログアウトしたと思う。あのまま猫さんの愚痴を聞いていたら、死にはしないけど性格は悪くなっていたはずだ。
ひとまずママには「大人の愚痴って死ぬほど重たいね」と言ったら、「大人はそれに耐えて仕事してるのよ」と大人対応された。マジ、リスペクト。
やはり夕食の時間になっても私がダイニングに来なかったから呼びにきたみたいなので、そちらに向かって晩ごはんだ。
「あれ? パパだ……」
「ここ、パパの家だぞ!? いちゃ悪いか!?」
最近、帰りが遅かったから不思議に思っただけ。まだ忙しいのに、家族とゲームの話をしたかったから残業しなかったらしいけど、それはそれでどうなんだろ?
「PHOどうだ? 楽しいか??」
「そこそこ? ひとまずソロでレベリングしてるけど、そろそろパーティ組もうかと考え中」
パパの質問にお兄ちゃんは面倒くさそうに返しているけど、楽しいが前に出すぎだ。そこそこの人は次のことなんて考えないと思う。
「カノはどうだ?」
「私は~……昨日は楽しかったけど、今日のことで楽しくなくなった」
「な、何があったんだ??」
「それがさ~。猫さんの愚痴、トータルで4時間は聞かされたんじゃないかな? まさか本当に愚痴だらけだと思わなかったよ~」
「う、うん……大人の階段上がったんだな……てか、猫さんってなんだ?」
「PHOにいる、たぶん古参の人。口が悪いのなんのって」
「大人が高校生に愚痴だと!? パパはその猫と付き合うのは許しません!!」
パパはパパでなに言ってんだ? 猫となんか付き合うワケないのに……
ちょっとタイトル変えました




