「とくにある日々」について書くよー
世界情勢は殺伐としているし、実家はゴタゴタしてるし、えぐい虫歯になるし、心がヘトヘト。こんなときには、愛と平和に満ちた百合を摂取したくなる。
というわけで最近、『とくにある日々』を何度も何度も読み返しております。
なか憲人著『とくにある日々』(2024年12月現在、5巻まで刊行)
別名義「犬のかがやき」でも有名な、なか憲人の日常系学園コメディだ。
椎木しいと高島きみどりは、変なオブジェがそびえたつ学校に通う高校一年生。仲良しの二人は、特に何をするか決まってない部活「仮部」を設立する。新しい十回クイズを考案したり、落ち葉をコピー印刷してカードゲームを作ったり、思い付きで遠出してカニを見に行ったり、そんなことばかりをして、モラトリアムな日々を楽しく有意義に過ごしていく。……そんな漫画である。
この作品は、一巻の時点では、あまり百合の気配はない。シュール要素のある、出来の良い学園コメディという塩梅だ。
だけど、二巻の途中くらいから様相が変わってくる。
しいは天真爛漫なきみどりのことが大好きだし、きみどりはクールで思慮深いしいのことをすごいなあと思っている。そんな二人の気持ちを見せるエピソードが、二巻目以降からちょいちょい挟まるようになるのだ。
それは別段、ドラマチックな話じゃない。日常の中で、ふと好意が言葉や仕草に出てしまった。そのようなエピソードだ。けして派手ではないけど、だからこそ二人の関係性がたまらなく愛おしくなる。
『とくにある日々』で描かれているのは、温かく優しい世界だ。
いい人ばかりで悪人が出てこないから優しい……そんなシンプルな話じゃない。
「大好きだよ、あなたのことが大事で大切だよ。」そう想いあっている二人の世界だから、ときどきシュールなのに、とても優しいのだ。
この作品はGLじゃない。しいときみどりを繋いでいるものは、恋ではなく友情である。だけど、例え恋でなくても、握りあった手の中にあるのは間違いなく「愛」だ。(と言いつつも、6巻からGL路線になっりしたら小躍りして喜ぶけど)
『とくにある日々』は、日常系学園コメディにして、上質な百合漫画だ。愛と平和がめいっぱい詰まっている。