「出会い系サイトで妹と出会う話」について書くよー
もちオーレ著『出会い系サイトで妹と出会う話』(短編集)
ビアン用出会い系サイトでマッチングした相手と会ったら、実の妹だった。しかし実は昔から互いに恋愛感情を抱いていることがわかり、そのままラブホテルへと赴く……。
設定だけ見れば、なんというかこう、めちゃくちゃインモラルで湿度の高い話だ。
でも実際はあっけらかーんと明るい作風で、気軽に楽しく読める。テンポよくギャグが挟まり、サクサク話が進み、コミカルで肩の力が抜けている。ハッピーエンドで読後感もいい。収録されている他の短編も同様だ。
この異様なライトさを支えているのは、なんといっても、この作者独特の絵柄。
何かのおまけ漫画みたいな、シンプルで愛嬌のある絵。
と言うと悪口みたいだけれど、決してそうじゃない。
2Dキャラの頭身を伸ばしたような、シンプルな造形のキャラクター。これが妙に安心感を覚えるのだ。ゆるキャラ感あるというか。どんなにやべーことやっても、この絵柄ならオッケー、みたいな。あと、単純にかわいらしい。
でも、いいのは絵の独特さだけじゃない。設定の作り方もいい。
というより、発想がアクロバティック。「え?そこから百合に持ってくの?嬉しい」という切り込み方をしてくる。読んでいて楽しい。次にどんな設定が来るかとワクワクする。
そして、どんなに倫理的にアウトな設定が来ても、絵柄のおかげで罪悪感なく読めるという無敵のシステム。
気楽においしいGLを摂取できる、スナック菓子のような百合。それがもちオーレ作品なのだ。
なのだ、けれど……。
どうもなんだか、作画担当・原作担当ご両人とも、ご自分の長所をわかっていらっしゃらない気がする。その後の作品遍歴を見るにつけて。
本当に勝手な意見なのは百も承知だけれど、2020年前後からもちオーレ氏は、味岡の望まない方向に変化していってしまった。
作画は唯一無二の画風を変えようとするし、原作は隙あらばシリアス展開に持っていこうとする。更には、ついに一時期には、作画担当を変えてしまったりした。
明るく楽しい百合漫画家をやめたい。そんな気持ちが見え隠れしている……ように感じられた。
もう、味岡の望むもちオーレは読めないのか……。
と、うっすら絶望していたときに始まったのが、『悪いが私は百合じゃない』だ。
(次話に続きます)