「明日ちゃんのセーラー服」について書くよー
はじめまして、味岡です。百合が好きです。
新しい百合小説書こうと思ってるのに、どうもなんか筆がこう、なんかです。だらーっとしてまう。漫画とか読んだり。
それじゃあってわけで、百合漫画の紹介とか感想とかを今から書きます。気晴らしに。逃避ですよ。
最初の作品は明日ちゃん。新巻出たしね。新巻の感想じゃなく、全体のざっくりした感想。
ちなみに、あらすじは味岡の主観入りまくり。「そんな話じゃないんスけど」って思ったらゴメン。あと、紹介と感想なんで、あらすじが超長いよ。明日ちゃん知らん人に向けてね。
明日ちゃんのセーラー服/博 2024年11月現在、14巻まで刊行
あらすじ
明日小路は、中高一貫の女子校蝋梅学園に通う中学一年生。
過疎地育ちで、同級生0の小学生だった彼女にとって、中学校の集団生活は刺激に満ちあふれたものだった。無垢な瞳を輝かせて、同い年の少女らと様々な「初めて」に飛び込んでいく。
小路の眩いほどの天真爛漫さに、クラスメイトはみな次々と魅了されてゆく。学園きっての才媛である木崎江利花も、小路の輝きに魅せられた一人だった。
生粋のお嬢様である木崎江利花。彼女は自由奔放な小路に、自分の持っていないものを見出し、激しく惹かれてゆく。一方で小路もまた、美しく気丈な江利花と、「仲良くなりたい」と強く願っていた。お互いがお互いに憧れあう。そんな二人は、体育祭や旅行を通じて、次第に深い友情を育んでいくのだった。
季節は巡り、文化祭のシーズン。小路と江利花は、演劇部のステージで恋人を演じることになる。
しかしそれは、二人……特に恋を知らない小路にとって、難しい役柄だった。演劇部部長に「その好きじゃない」「これからの関係を変えてしまう告白 相手を仕留めるような」「決死の思いが足りない」と諭されてしまう。それでも恋愛未経験の彼女には、恋について深く考えられない。
悩みの日々の中、不意に小路は江利花から、蝋梅学園の高等部には行けないかも、と伝えられる。ずっと一緒にはいられないかもしれない。その想いが、小路の目つきを変える。恋について、そして木崎江利花について、真剣に向き合い始める。
自分の中の様々な想いに気付き、迷い、悩む少女達。そんな間にも時は過ぎ、文化祭が間近に迫ってくる。
劇のための「触れあい」を何度も繰り返し、やがて二人の想いも高まってゆく。抑えきれなくなる気持ち。そしてついに江利花は勇気を振り絞り、「小路とデートに行きたいです。」と書いた手紙を渡した。それは初心な中学生である彼女にとって、告白に等しい言葉だった。
翌日。江利花は、期待と不安で居ても立ってもおられず、朝早く学校に登校する。誰もいないと思っていた教室には、すでに小路がいた。二人きりの教室で、江利花は小路の答えを聞く。
「よろしくお願いします」
ところが、そんな彼女達に衝撃的な事実が宣告される。演劇部の文化祭ステージ参加が、急遽認められなくなったのだ。
絶望する小路。彼女を気遣う江利花は、余計なことを考えないようにと、デートのいったん取りやめを提言する。
しかしその夜。なんと小路が家を抜け出し、江利花の元へとやってきてしまった。
「またいつかなんていやだよ」「お休みの日なんて…まてない」「今日だってもう… 寝れない」「今からデート… してください」
真夜中に、今からデート。江利花は一瞬とまどうものの、すぐにその言葉の真意を理解する。
「今から… 私の部屋に来たいってこと?」
そして、真夜中のデートが始まる。
以下次号。
感想
「耽溺」という言葉が、こんなに似合う漫画もない。ページをめくれば、他の全てを忘れてうっとり夢中になってしまう。美麗な絵。繊細な心理描写。高レベルな構図やコマ割り。胸を打つストーリーライン。唯一無二の青春漫画だ。
そんな素晴らしい本作だけれども、ときどき「フェティッシュで気持ち悪い」という声も聞いたりする。
それに対して「でもストーリーは感動的だから」と反論するのは誤りだ。その感動的なスト―リーも、気持ち悪さと地続きのものだからだ……と味岡は思う。
この作者は、圧倒的筆致をもってして、少女の生態を緻密に描く。髪のうねり、唇のしわ、服のよれまでをも丁寧に描写する。その丹念さは凄まじく、狂気すら感じられるほどだ。
それと同じくらいの精度で、この作者は、キャラクターの内面も丹念に描き出す。じっくりと克明に。
自分の産み出した少女らの、憧れ、純情、嫉妬、劣等感。そんな秘するべき心の襞を、指で押し広げるように読者の目前にさらけ出してしまう。心を丸裸にして、剥き出しにしてしまう。読んでいるこちらの顔が赤らむくらい。
「明日ちゃんのセーラー服」を読んで読者が胸を打たれるのは、まずそのような下地があるからだ。
鼓動や息遣いさえ聞こえるような接写的描写。
それがこの漫画の、感動の源だと思う。引く人がいるのも仕方がない。体も、そして心も、気持ち悪いくらい丹念に描く……だからこそ、こんなにも魅力的なのだ。
そんな「明日ちゃんのセーラー服」が、目下、作品史上最大のテーマに挑んでいる。明日小路の恋。
9巻あたりから始まったこのテーマは、この作品らしく、とてもゆっくり丁寧に進んでいる。14巻に至っても、いまだに小路の江利花に対する感情が、恋なのか定かではない。
江利花の小路に対する感情は、これはもう明々白々だ。
迫られると赤らむ頬。嫉妬を示すモノローグ。気持ちを伝えることの期待と不安。一目で恋に落ちているとわかるように、作者は江利花を描いている。
そもそも思い起こせば、9巻の<その好きじゃない>という警告も、小路だけに出されたものだった。
一方小路においては、そういったわかりやすい描写が希薄だ。
<ずっと一緒にいたいって思ってる>等、どこか、友情の範疇での「好き」である可能性を残しつつ描かれている。
というより、<わかった 私 恋をする>という決意から始まった恋には、どうしても本気度に対する懸念がつきまとってしまう。例えば江利花は、わざわざ恋をするなんて決意をする必要はない。もう恋に落ちているからだ。
だから小路が恋をするかどうかは、本人が言うように<この先どうなるかわからないの><私の…がんばり次第>なのだ。部長が言うように、<まだ足りない>のだ。
それでも、少しずつ変化はおとずれている。
この漫画らしい、じっくりとした足取りで。友情から特別な好きへ、特別な好きからそれ以上の感情へと。
14巻の現時点では、「江利花の恋が、自分に向けられるのが嬉しい」という段階だろうか。あともう一歩で恋になる、そこまで「好き」を積み重ねてきた。期待は高まるばかりだ。
よく考えれば、今の段階で<まだ足りない>とキャラに明言させるということは、「いずれ(来たるべきクライマックスで)足りますよ」、という作者のメッセージとも読める。だから、好きが恋に変わるまで、きっともう少し。胸が高鳴る。その瞬間を見逃すわけにはいかない。目が離せない。
面白いのは、そんな読者の反応を、まるで見てきたように透子と靖子にやらせていることだ(13巻冒頭)。全て作者の手のひらの上なのか。
友情と恋愛の境い目でゆれる繊細な乙女心を、丁寧に丹念に緻密に克明にじっくりねっとり圧倒的美麗な筆で生々しく描く。こんな狂った芸術品のような漫画連載を、リアルタイムで読めるなんて、こんなに嬉しいことはない。
「明日ちゃんのセーラー服」が描いているものは、濃密な……濃厚で高密度な、少女達の心の絡みあいだ。読者の私達はただ、極上の百合に溺れる。息もできない。