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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 第二幕 殿の兵士

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第69話 『戦いの謳歌』

「ここまで妨害は無しッスね」


 セルギは『骨』を使い、身体能力を上げて砦内部――中心拠点の城門の上に飛び登ると様子を確認。【オールデットワン】の姿は無かった。


「大丈夫ッス!」


 上から声をあげて、待機している面々に伝えると、フレイが鋼鉄製の門の隙間に手刀を入れ、鉄の閂を焼き切る。

 グランが土魔法で地面を隆起させて人が通るには十分な隙間を門に作ると全員が中へ入った。


「これはどう言う事でしょうか?」


 マリアには理解出来なかった。

 前に特務任務隊と『グリーズアッシュ砦』に来た時は、外門の前で【オールデットワン】が現れたのだ。しかし、今回はここまで全く姿を見せない。


「……嫌な空気よ、マリア」


 ソイフォンは暗殺者故に、危険性を感じるセンサーが面子の中でも特に秀でていた。ソレがゾワゾワと警告してくる。


「――――」


 エクレアは中心拠点を全て覆う程に索敵範囲を広め――気がつく。


「! 全員私の傍に寄ってください!」


 それは雨だった。しかし、その雫は傘で防げる水玉などではなく、無数の剣、槍、斧――などの武器が自分達を狙って広範囲に降り注いだのだ。中には魔法武具も混じっている。


「『磁界制御』」


 ヴォンッ、とエクレアは魔法の支配領域の魔力密度を上げ、金属となる武器の雨を自分達から反れる周囲に避けさせた。

 グランで防ぐ事も考えたが、この状況で視界を塞ぐことは危険ゆえの選択だ。

 自分達に当たる武器を全て反らしきると、距離を置いた正面に、トッ……と全身を影に塗りつぶされた様な姿の【オールデットワン】が着地する。


「総員――」


 その着地を隙として突く様にエクレアは己に『身体強化』と『雷魔法』を併用して高速で接近する。


「戦闘開始」


 エクレアの蹴りが【オールデットワン】を捉える。【エレメントフォース】はリーダーの一番槍に各々の役割を遂行する為に動き出す。






「『戦いの謳歌』」


 マリアが『聖歌(ホーリーソング)』で皆に身体強化と五感の底上げを行う。


「…………」


 【オールデットワン】はエクレアの蹴りを屈んでかわすと近くに刺さった剣を己から漏れ出る“影”で引き寄せて手に取る。

 エクレアは近くの剣を『磁界制御』で引き寄せると逆手に握る。そして――


「――――」

「…………」


 【オールデットワン】とエクレアは剣を交えつつ、戦闘域を三次元に展開。縦横無尽に中心拠点を高速で移動しながら戦闘を始めた。


「うお!? エクレアさん本気か!?」

「ちょっと、ついて行けないって! リーダー!」


 割り込もうとした水月とフレイは【オールデットワン】とエクレアの動きを目で追うだけで精一杯だった。


「『戦いの謳歌』。噂以上のバフだな」


 グランが場に“仕込み”をしながら分析。普段の倍以上の能力が出ていると見てとる。


「あれは……無理ッスね」

「私たちはマリアを護るわよ」


 セルギとソイフォンは、あの流れがこっちに来た時に備える。マリアが『戦いの謳歌』を歌い続ける限り、自分達は普段の倍以上のステータスを得ているのだ。


「それでもやっぱり化け物ね。【オールデットワン】は」


 エクレアも普段の倍以上の実力が出ているハズ。しかし、【オールデットワン】はその初手から対応していた。


 やることは事前に打ち合わせした二パターンのみ。


 一つはゼウスが合流するまで時間を稼ぐ事。もう一つは、【オールデットワン】の足を止めて、オフェンス陣の倍加した火力で仕留める。


「どっちしろ、私の出番は必要そうね」


 ソイフォンは自分の“縫い”が必要になると察しその隙を伺う。






 ここまで速いとは――


 エクレアは『戦いの謳歌』によるバフを込みした自分の速さに【オールデットワン】がついて来ている事に驚きを隠せなかった。

 それどころか――


「っ!」

「…………」


 剣が弾かれ始めた。速度は互角でも膂力はあちらが上。壁面を足場に戦っていたが、少しずつ実力差が見え始める。すると、タンッと壁を蹴った【オールデットワン】の姿が消えた。


「!!」


 側面から剣が飛んで来た。いや、死角へ高速で移動した【オールデットワン】が投げたのである。何とか反応して避けつつ、ナイフを投げる。


「…………」


 ナイフは【オールデットワン】の肩に刺さるが勢いは止まらない。

 【オールデットワン】はエクレアへ投げた剣を高速移動で拾うと更に壁を蹴って切り返し、宙に浮いた彼女へ刃を向ける。


 こちらの一呼吸の間に二手三手動く。そんな事が人体に可能なの!?


 無理矢理の軌道変化による肉体への負荷は【オールデットワン】にも及んでいる。しかし、ソレは瞬時に再生している故に、常に限界を越えた機動を続けていた。

 倍加した程度で届くのなら、とうの昔に【オールデットワン】は討伐されている。


「しかし、それでも――」


 雷は瞬きよりも速い。『磁界制御』で剣筋を反らすと【オールデットワン】と密着するようにぶつかる。エクレアは【オールデットワン】の肩に刺さった己のナイフを握った。


「『雷撃刃(ボルトブレイド)』!」


 刃を通して『雷撃刃』を【オールデットワン】に叩き込む。落雷を体内に直接食らったに等しい一撃が【オールデットワン】の内部を焼く。

 至近距離故にエクレアも余波を受けるが何とか外に流して軽減。


「くっ!」


 バチッと弾ける様に爆発すると、エクレアは苦悶を洩らしつつ皆の元へ何とか着地。

 【オールデットワン】も離れた距離に着地するが、肩は焦げてそのまま片腕がボロボロと炭化して朽ちる。ダメージは深刻だ。片膝をつき停止するが高速での再生が始まる。そこへ――


「これで決めるッス!」

「あたしが殺る!」

「卑怯って言うなよ!」


 セルギ、フレイ、水月の追撃が入った。

オールデットワン

挿絵(By みてみん)

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