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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 第二幕 殿の兵士

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第67話 グリーズアッシュ砦

 たまに……意識が戻る。しかし……身体の自由は効かない……

 どれくらいの……間……意識が途絶えていたのか……それさえも……解らない……

 前に……意識を失ったのは……いつだ?


「――――」


 ここは……中心拠点の塔の最上階。砦の様子を俯瞰できる為、皆でここを拠点に敵を迎撃していた。


「…………」


 【オールデットワン】となった親友(ダズ)を止める為にオレも【オールデットワン】を発動した。そこから……ダスを殺した時……あいつが――


 ローハン……すまねぇな……


「……オオォ……」


 どうすれば……いい? どうすれば……【オールデットワン】を……抑えられ……る……?

 駄目だ……また……意識が……クソ……誰か……オレを……


 殺してくれ――






「ここがそうなのね」


 (わたくし)達は見上げる程の大きな砦を前に一度馬車を止めた。


 『グリーズアッシュ砦』。

 巨大な城壁が砦をぐるりと円形に囲み、ツルツルとした質感の壁は昇る事を拒否している様だった。

 城門を抜けると、内部には更に同じ様に円形に通路を造るように城壁が待ち構える。そこに開いた射撃窓は一方的に撃ち下ろす事が出来る様になっていた。

 わざと破壊しやすい門を設置し、円形の壁は外からの攻撃や乗り越えを防ぐ様な造りになっている。


 砦の俯瞰図を見たのだが、ぐるっと渦を巻くように城壁は続いており、奥に進むに連れて狭くなっている。

 三ケ所ある、どの入り口から入っても全てがその仕様となっており、更に若干の坂道にもなっている事から攻城兵器も通しづらい。少ない人員で100倍近い兵力を耐えきれる様に設計されていた。加えて、


「『再生』もかけられているのね」


 古代魔法『再生(リバイバル)』。それは無機物のみに作用する失われた魔法と言われているわ。


「はい。サイクルは12時間。その間にどれ程の損傷を受けようとも、砦は完全修復されます」


 例え、城壁や城門を壊して進行したとしても12時間でその全てが元に戻る。これが『グリーズアッシュ砦』が永久に存在し続ける理由である。


「少数精鋭による制圧が基本です。最も奪取を有力視されていたのは、練度も高い【解放】ジャンヌ大佐の率いる『ギリス王国第五騎士中隊』でしたが、【オールデットワン】に阻まれてます」


 エクレアは『グリーズアッシュ砦』の争奪戦において、必要なのは量よりも質であると解っていたわ。


「でも、弱点もあるわ」

「中の兵士様の事は何も考えておりません。まさに……戦う事だけを想定して造られています。なんと悲しき建物なのでしょうか」


 マリアはここで死した者達へ祈る。

 敵の侵攻に対して死角の無いと言う事は味方からの物資の搬入も困難だと言うこと。しかし、【オールデットワン】はその問題を全てクリアーしていた。

 アレストに見せてもらった資料から、【オールデットワン】に生物的な休息や補給は必要ないと言う結果が出ていたらしい。


「休む事も食べる事も必要無い……命をなんだと思ってるのかしら」


 (わたくし)は久しぶりに“怒り”の感情を感じた。命を蔑ろにする魔法は多くあるけれど……それらは結果としてそうなってしまった(・・・・・・・・・)魔法だ。

 しかし、【オールデットワン】は違う。それが前提として組まれた故に命と言う定義を全て冒涜している。放っておくワケには行かない。


「皆の準備は出来たかしら?」

「【エレメントフォース】は今すぐ戦闘行為が可能です」


 エクレアの意にフレイ、水月、グランはやる気まんまんね。


「私たち【トライシスター】もまた、争いを収める心は僅かな陰りもありません」


 マリアの言葉にセルギとソイフォンも問題ない様ね。


「砦の中心拠点。ここを目指しましょう。道中で【オールデットワン】が襲ってきた時は無理に倒そうとはしないで。(わたくし)が相手をするわ」


 (わたくし)がそう言うと、皆が満場一致で返事をしてくれたわ。

 ……残ってる【オールデットワン】は貴方なの? ロー……






 木製ながらもしっかりとした造りの城門は開ける必要なく皆で乗り越えて砦の内部に入ったわ。

 (わたくし)は乗り越えるのは少し大変だったから、グランの掘る穴を通って中へ。


「ありがとう、グラン」

「何て事はないぜ、ゼウス先生。こんな坑道は『炭鉱族(ドワーフ)』の俺からすれば呼吸と同じよ!」


 うんしょ、とグランに引っ張り上げてもらって砦の中へ改めて立つ。すると、


「――――凄いわね」


 目の前にはそびえ立つ壁。道は横へ伸び、今は数百の兵士が通れる広さがあるけれど、奥に進むにつれて、最終的には十人程しか横並びに通れない狭さになる。しかし、それ以上に――


「酷い臭いね」


 死臭が漂う。砦内部の壁は12時間事の『再生』によって清掃された様に綺麗なのだが、放置された遺体はどうしようも無く腐り果てていた。


「全てが終わりましたら、安らかな祈りを彼らに……」


 マリアは申し訳無さそうに遺体へ祈りを捧げているわ。すると、(わたくし)は壁に対してある効果に気がつく。


「……これは……ここまで考えられてるの?」

「どうかしましたか?」

「エクレア、壁に『消音(サイレント)』がかけられているわ」


 闇魔法『消音(サイレント)』。この壁と壁の内部でどれだけ派手に騒いでも、他の所へ音が漏れる事はない。


「……この事実は初めてです。つまり……門を三方向から同時に侵入しても互いに状況が解らないと言う事ですか?」

「ええ。この砦を造った人は徹底的ね。徹底的に敵の排除を考えてる」


 それか……そもそも、この建物の役割は“砦”では無いのかも知れない。(わたくし)達がそう認識しているだけで、本来の用途は全くの別――


「……ううん。今はそんなことを考えてる場合じゃないわね」


 今は【オールデットワン】に集中しなければ。


「とにかく離れないで。固まって行動しましょう」


 (わたくし)は踏み出した瞬間、浮遊感を感じた。

 パカッと、(わたくし)の入るくらいの丁度良いサイズの落とし穴が空いていたわ。


「ゼウス先生!?」

「ゼウス様!」


 エクレアとマリアが咄嗟に駆け寄るけど、そのキャッチは空を切って落下を始める(わたくし)


 うーん。これは一本取られたわね。『再生』は砦の状態をリセットする。つまり、仕掛けられた罠も再度起動すると言う事。皆にも気を付ける様に言わないと。

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