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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第552話 『絶凍領域』

 ラナヤは回避行動を取りつつ残り三門の【スペクターキャノン】へ『絶凍クナイ』を突き刺し停止させ、次に向かってくる『影機人』達への対応に移る。


「リース、しっかり捕まっててくれ」

『は、はい!』


 忠告を入れるも肩のリースが振り落とされない様に手を添える。実質片腕。しかし、ラナヤの“迎え討つ戦い”は敵にとっては始めて見せる代物だった。


「『氷遁』『氷面』」


 中指と人差し指を眼前に立てた次の瞬間、ラナヤを中心に地面が一瞬で凍りつく。

 だが『影機人』達は足裏にスパイクを展開すると、その氷面を問題なく踏みしめて迫った。コマ送りの移動にて近接距離に入った個体から腕部に展開したブレードや爪を振るう――


「――――」


 スゥ……とラナヤは一呼吸だけ息を吸い、少しだけ身を低くすると氷面を滑るように『影機人』達のインファイトをすり抜ける。


『わっ!』


 更に二体、三体、と迫る『影機人』からの応酬も、無駄な歩幅を使わず、滑る力と体捌きによる最小の動きで攻撃を躱し続ける。

 優雅に慣れ親しんだ様に白髪が舞い――


「『絶凍』」


 滑り抜けた際に、各『影機人』へ突き刺した『氷の忍者刀』より、『絶凍』を発動し機能停止に追い込む。

 今までのラナヤの戦術は『氷魔法』を主体とした一点突破だった。こちらから攻める戦いばかり故にそうせざる得なかったが、彼女の本懐は“護衛官”である。


 迎え討つ事は何よりも得意とする戦いだった。


「ノーティム、【オールデッドワン】を倒す! 援護を頼む!」

『わかったわ』


 更なる『影機人』が迫る中、ノーティムは己の意識を残しつつ『土魔法』として、地面を完璧に均していた。

 それはそれは磨かれた大理石の床のごとく僅かな凹凸さえも存在しない。そこへラナヤの『氷魔法』による凍結が加われば――


『ギギガ――』

『グギゴ――』


 摩擦係数は限りなく0に近くなり、まともに立つことさえも出来ない。

 そのスリップフィールドはラナヤを中心に広がり、『影機人』のスパイクさえも通さない程の硬度を持つ凍結が行われている。


「リース」


 ラナヤはリースへ『絶凍』を付与した。


『ラナヤさん?』

「これから妾は本気で【オールデッドワン】を殺る。この『絶凍』は自身を護る為に使ってくれ」


 そして、護る様に添えた手を優しく離すとリースに離れる様に促し、【オールデッドワン】を見据える。


 願わくば……妾が妾である内に――






 【スペクターキャノン】が再度、発射準備を開始していた。

 『絶凍』を付与された『キューブ』は捨て、再出現させる事でどれだけ阻止されようとも、止まることはない。

 目標はスリップフィールドを広げ続けるラナヤ。彼女は動く気配はなく、目を閉じ、フィールドの展開に意識を集中している様だった。


 【スペクターキャノン】……発射まで5、4、3、2、1、発――


 十分な熱量をチャージし発射されるその時、スリップフィールドが【オールデッドワン】の足下まで迫った。すると――


「…………」


 発射されない。【スペクターキャノン】は内包する熱エネルギーを急速に奪われ、機能を停止したのだ。


 どれだけ規格外の兵器を扱おうとも、熱に依存するのであればラナヤの干渉する範囲で使用する事は出来ない。

 それは、『影機人』達も同じであった。ラナヤに迫る機体はスリップフィールドを踏みしめてバランスを崩し倒れるとそのまま熱を奪われ、停止して行く。


「――――」


 【オールデッドワン】は自らラナヤを仕留める事を選択し接近。『キューブ』を平たく変化させ、簡易の足場として飛び移ると、ラナヤへ掴みかかり――


「ようやく、お前を殺し続ける事が出来る」


 ラナヤは闘志が強く宿る瞳に【オールデッドワン】を映すと、迫る指先から手首、肘、肩、身体と瞬時に凍結させ一瞬で死を与えた。

 凍結した【オールデッドワン】を、スッ、と避けると身体は落下の衝撃で粉々に砕け散る。


「…………」


 しかし、【オールデッドワン】はラナヤの至近距離で瞬時に再生。今度は『キューブ』を盾にラナヤを押し潰そうと動く。


「無駄だ」


 ラナヤは僅かに滑る事で『キューブ』の攻撃を回避。今度は視線を向けずとも【オールデッドワン】は瞬時に凍結させられた。

 移動の際に『氷のクナイ』を投げて僅かに衝撃を与えると、残った身体はひび割れる様に崩れて再度死を迎える。


 【オールデッドワン】はラナヤより離れた所で再生するがその瞬間、凍結し崩れ落ちる。

 まるで、自分だけが常に『絶凍』を付与されている様に再生しても死に続ける。


『凄い……』


 飛び離れたリースはラナヤの圧倒的に【オールデッドワン】がまるで動けない様子を見て、そんな言葉が漏れた。


「……っ……くっ……」


 しかし、ラナヤ自身にも今の状況は相当な無理をしているのか、その場で片膝を着いて額に手を当てる。


 再生――凍結――死――


 何度も繰り返すそのサイクルから【オールデッドワン】は逃れられない。


「――――」


 すると四つの『キューブ』が一つに融合する様に組み合わさると、一つの巨大な【スペクターキャノン】に変化しラナヤへ向けられた。

 熱量は容易く奪いきれない程に膨大であり、【オールデッドワン】は凍結にて停止するがチャージは止まらない。

 

「はぁ……はぁ――」


 ラナヤはゆっくり立ち上がると意識を【スペクターキャノン】へ向け、そして――


「『絶凍領域』!!」


 【スペクターキャノン】の熱が瞬時に消えた。『キューブ』による結合が崩れる様に崩壊し、周囲の物質と現象も全て“絶凍”の元に凍りつく。


 ラナヤは『旧世界の力』を深く深く掬い上げ、全ての万象を“凍結”へと帰結したのだ。

 それは……世界を滅ぼすと言っても過言ではないほどに過剰な力。だが、そこまでしてようやく――

 

「…………」


 【オールデッドワン】の再生(いのち)が尽きた。






 なんだ……寒い……

 暖を……取らなければ……

 違う……綺麗に……

 世界を……キレイ……に――


「――――」


 死に際に【オールデッドワン】が離れたテスラが最後に見たのは、絶対零度を司る【白髪鬼】だった。


 意識は消え、身体は崩れて行くと塵へと還る――

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