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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第549話 二次元のヒト

 不本意ではあるが、ラナヤはゆっくり正座をすると呼吸を整える。一分だけ自身を完全に無防備とし回復に専念する事にした。

 折れた脇腹と腕に意識を集中。『旧世界の力』を使い再生を開始する。


「……すー……すー……」


 以前、『旧世界の力』を使って治癒を行った際に意識を持っていかれる様な感覚に襲われた。本能的にソレは回避するべきと判断し、以降は回復に『旧世界の力』は使わないと決めていたが……現状はそうも言っていられない。


「ラナヤさんは一分欲しいそうよ。ふふ。それだけあれば【オールデッドワン】くらい仕留められるんじゃない? ねぇプロトワン?」

『…………』


 プロトワンはストリングドールの命令に重々しく、ズンッ、と一歩前に踏み出す。


「…………」


 【オールデッドワン】は項垂れた顔を上げると、前かがみの姿勢のまま、コマ送りの様に移動しラナヤを狙――


『…………』


 狙った瞬間、その顔側面へプロトワンの拳が叩き込まれていた。『音界波動』を乗せた一撃に【オールデッドワン】の頭部が粉々に消滅し、身体は木っ端の様に吹き飛ぶ。

 ドォン……とその姿は土煙に包まれた。


「目の前の検証を無視して次に進むのは科学者としてあり得ない矜持だと思わない? テスラ」


 ヒュッ、と風を切る音が聞こえた瞬間、微笑むストリングドールの背後を取るように【オールデッドワン】が回り込んでいた。

 頭部を再生と攻勢を同時に行っている。


「だから言ってるでしょ?」


 ストリングドールへ振り下ろされる拳をプロトワンが『加速』で割り込むと阻止する様に受け止めた。威力に、ズンッ! と衝撃が走るがプロトワンは主に指一つ触れさせない。


「貴方が先に検証するのはプロトワンからよ?」

「…………」


 【オールデッドワン】へ後ろ目を向けるストリングドールは、ふふ、と笑った。






 プロトワンは掴んだ【オールデッドワン】の腕を振り回す様に近くの建物を粉砕する勢いで投げつけ、間髪入れず手の平を向けて追撃の『光線』を単発で連射する。


 土煙と共に崩れかけた建物が『光線』の連射により更に崩れていく。そんな土煙の横から飛び出す様に【オールデッドワン】が現れると、一度切り返す様に止まった。そして、コマ送りの動きでプロトワンへ接近すると殴りかかる。


『…………』


 振り下ろされる【オールデッドワン】の拳に対して、プロトワンも腕部の装甲を一部解放し迎撃の拳を振り上げる。

 拳と拳がぶつかり合い、衝撃波と共に双方の腕部は砕け散った。


『プロトワンさん!』

「ふふ。リースさん、心配は御無用よ。アレは自分から分解して衝撃をスカしたの」


 プロトワンの砕けたと思われた腕部はバラバラのパーツが吸い付くように再構築。

 【オールデッドワン】は無闇やたらに攻めても攻撃が届かないと判断したのか様子を見るように停止した。その間で砕けた腕部を再生する。


『…………』

「…………」


 プロトワンのアイラインに光が走り、【オールデッドワン】はコキッ……と首を傾け――


 『加速』とコマ送りの移動による応酬にて、幾度と交わるぶつかり合いを始めた。


『わっ、わっ!』

「ふむ、二次元の動きね」


 ストリングドールはプロトワンの視線をモニターしつつ、【オールデッドワン】の特性を分析して行く。


 人は物の動きを流れで捉える。それが標準として備わった予測機能だ。

 だが、時にソレを誤認する事がある。

 緩急の差が大きい。歩法によって距離感を狂わせる。など、高い実力を持つ戦士は誰もが習得し得る技術。

 しかし、科学者の視点は少し違う。

 彼らは映像を観づらくする事で同じ効果を得られるのではないかと、考えて検証するのだ。

 人の視覚は情報を映像として捉える。その殆どは“縦”“横”“奥行き”の三次元で見ることになるだろう。そんな中、二次元の動きをする存在が現れたらどうなるだろうか?


 常に相手に対して平面を向く二次元(彼ら)の動きは三次元に馴れた人では不可解なモノとして映る。

 目の前の【オールデッドワン】は二次元の動きを常に意識しつつ、更に身体の動きをカクつかせコマ送りの様に見せる事で距離感と行動予測を大きく誤らせているのだ。


『なんだか……見てると頭が変になりそうです』

「ふふ。リースさんがどんな形で視覚を得てるのか気になるわ」


 無論、プロトワンも三次元による分析を行い、相手の行動を予測し戦っている。故に二次元の動きを続ける【オールデッドワン】を中々捉えきれない。


「でも時間を掛ければデータは揃う。科学者に時間を与えるのはタブー。プロトワン」

『…………』


 ストリングドールの号令にプロトワンの装甲が僅かにスライドし、フェイオープンすると粒子が隙間から漂い出る。


「特大をお見舞いしなさい」

『…………』


 二次元と三次元の誤差を補正した動きで【オールデッドワン】の攻撃を避けると同時にカウンターを叩き込む。アッパーをその身体にめり込ませ、【オールデッドワン】を高々と打ち上げた。


 【スペクターキャノン】の発射許可――


「許可するわ」


 プロトワンは両拳を打ち付けると、腰を構え、手の平を開き手首を合わせる。そして【オールデッドワン】へ向けて砲塔のように照準を合わせた。


 すると、魔法陣が距離を置いて並ぶ。それは射線を繋ぐ1列に現れ【オールデッドワン】の背後にまで展開されていく。


「【スペクターキャノン】、発射♪」


 ストリングドールの言葉と共に、ヴァッ! と極太の『光線』がプロトワンの手の平から放たれた。

 閃光と空を裂く様に通過するエネルギーは【オールデッドワン】を跡形もなく消滅させて行く――

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