表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 第二幕 殿の兵士

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/667

第58話 ちょっと頼み事を聞いてくんね?

「ジャンヌ大佐がねぇ……」

『マスターとの会談を望むそうだ。二人きりで』

「ふーん」


 オレはマスターのテントにあるメディカルベッドから動けないので、朝食のスープをボルックに持ってきてもらった。

 確かに痛みが気になって眠れなかったけどさ。それにしても……『メルシープ』の毛布はねぇだろ。ボルックじゃなかったら芋づる式に“死眠”の犠牲者が出るぞ。


『君はどう見る?』

「どうって?」


 スメラギのヤツ、また腕前を上げたな。スープは前よりも美味しい。


『明らかに何かしらの要求をしてくるのだろう』

「昨日、オレが【オールデットワン】で遺跡に帰ってきた時の事を覚えてるか?」

『皆、ざわめいていたな。それと『ギリス』とは因縁があると』

「ジャンヌ大佐の部隊は正面から【オールデットワン】と戦り合ったらしいし。ヤバさを認識してるんだろ」


 正直な所、【オールデットワン】は祖国でも制御しきれていなかった。


『君が戦ったのか?』

「いんや。オレは本国の命令を受けて補給線の護衛をやってた。丁度、砦からは離れた時期だったよ」


 しかし、敵の妨害が強く、更に【オールデットワン】は防衛には向くものの、攻勢や護衛と言った細かい動きは難しかった。

 本国もデータを集めていた様だが、結局は防衛が最も適任と判断されて砦に戻されたのである。


「まぁ、オレは当事者じゃないって言っても説得力はねぇよ。全滅したと思ってた【オールデットワン】が実は生きてたなんて、当事者からしたら悪夢そのものだしな」


 砦の防衛にたったの10人足らず? 余裕だろー。と数千人規模で制圧に来た他国がその10人足らずに殆ど壊滅させられて退却したのだ。報告を受けた敵国のお偉いさんは頭を抱えただろうよ。


『ローハン、幾つか疑問がある』

「なんだ?」

『【オールデットワン】のステータスを含めて、強力な兵士である事は解った。それならば何故、量産されていない?』

「さぁな。生存率が1割を切る禁術だ。上手く行かなかったんだろうよ」


 マスターは、まだこんなモノが残ってたなんて、って珍しく頭を抱えてたな。


『ならば、単身で師団に匹敵する戦力が何故“全滅”した?』


 そう【オールデットワン】はもうオレ一人だけだ。その疑問は必ず出てくると思った。


「そりゃ、オレが全員殺したんだよ」

『君がか?』

「【オールデットワン】は使えば使う程、“自分”である時間が減る。結果としてオレが殺す前に全員“死んだ”よ」


“もう、この部隊に優劣はありませんわ”

“私は……化物になって大切な人を殺したくないのです”

“次に自分に戻った時は朝まで語り合おう”

“ローハン……後は……任せた……”


「ったく、馬鹿な奴らだぜ」


 逃げちまえば良かったのによ。それか、もっと早く母さんが来てくれたら……いや、それは希望的観測過ぎるか。


『身体機能に体温の低下が若干見られる。気落ちさせてしまったか?』

「気にすんな。戦場の記憶がフラッシュバックするのは良くある事なんだ」


 オレはいつまでもボルックを待たせるのは悪いと思い、スープを飲み干す。


「ほい」

『洗っておこう。当番はワタシなのでな』


 食器を受け取ったボルックは立ち上がるとテントの出口へ。


「あ、ボルック、ちょっと頼み事を聞いてくんね?」


 オレは自分が動けないので、代わりにとある事をダチにお願いした。






 数時間後――

 隻腕の女騎士――ジャンヌは一人で森の中を歩いていた。


 “こっちのキャンプだと大佐は落ち着かないでしょう? 森の中に良い所を見つけたから、そこでお茶しましょう♪”


「…………」


 ゼウスの意図は読みきれない。しかし、ジャンヌとしては『星の探索者』のキャンプではなかった事は僥倖だった。

 【千年公】ゼウス・オリンは“嘘”をつかない。一人で来ると言ったら必ず一人で来る。故に――


「いらっしゃい、大佐」


 ゼウスは森の中にある木漏れ日を生む大樹の根本に湯沸かしセットを使ってお茶を淹れていた。

 地面から飛び出した大樹の根が程よく椅子とテーブルの役目を果たしている。

 和やかな雰囲気。まるで、ゼウス自身も森の一部と間違うほどに違和感がない。


「【千年公】。此度の会談、承諾してくれて感謝します」

「仰々しいわ。このお茶会では平等に語り合いましょう」


 座って、座って、と着席を促されてジャンヌは根椅子に座る。


「ちょっと待ってね、(わたくし)特製のココアを今作ってるから」


 そう言って、容易く背を向けるゼウス。

 彼女は見た目は児童にしか見えない。無害な少女。少ない見返りで知識を貸してくれる隣人。しかし、その見た目に惑わされてはならない。


「【千年公】」


 ジャンヌはゼウスの本質を捉える為にこの場を設けてもらったのだ。余計な問答をするつもりはない。


「貴女は【オールデットワン】の生みの親か?」


 その背に告げる。それは死兵としてではなく、戦争を終わらせる兵士としての問いだった。

 例え、自分が犠牲になろうとも――






「捉えているな?」

「ええ。大佐から合図があったら【千年公】の頭を撃ち抜くわ」


 『遺跡内部』にて手に入れた古代兵器『スナイパーライフル』を構えるキキアは、場に潜伏しつつ、そのスコープにゼウスの頭を捉える。

 他の部隊もゼウスとジャンヌを囲おう様に展開し、魔法無効の陣を発動出来る様にしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ