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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第494話 挨拶でもすりゃ良いのか?

 『隕石火球』が跡形もなく消滅。

 ソレを行ったのは屋根の上で両手を組んだ状態で佇み、宙に浮かぶアーフェンを睨み上げるくノ一――ラナヤである。


「オトメ……か。まったくお前たちは妾の事を便利な『魔法石』か何かと勘違いしていないか?」

「勘違いじゃない! おお!! なんたる僥倖! 『トップリット』はグランドブレイカーさんの部隊が襲撃し【師範】ハンゾーが諸共自爆したと聞いていたが……オトメは生きていたか!」

「…………やはり、あの爆発はハンゾー先生か」

「何を嘆く、オトメよ! お前の価値はシャクラカンさんが見出したのだぞ! ならば、あの人の為に尽くすのが至上の喜び! さぁ、もっと僕たちに『旧世界の力』をよこすのだ!」


 すると、ラナヤは腕組みを解くとアーフェンへ手をかざす様に伸ばす。


「今からお前を始末する。その前に答えろ」

「何をだ?」

「グランドブレイカーとスメラギはどうなった?」

「フハッ! そんなもの、グランドブレイカーさんが始末したに決まっているだろう! 裏切り者……スメラギさんの首を持って首都『アトランティス』へ今日帰宅した! 今頃、シャクラカンさんに報告している頃だろう!」

「――そうか。よし、もう黙って良いぞ」

「そう言って黙ると――」


 次の瞬間、アーフェンの身体から“氷棘”が生えてきた。


「おっごほ!? あにこれ……? すごく痛い……」

「安心しろ、その程度では死にはしない。まだ、な!」


 ラナヤがキッと鋭い視線を向けると、アーフェンの身体は、パキパキパキ……と足先から石化する様に凍りついて行く。


「アレ……なんだ……これ……すごく寒くて……動けない……」

「『旧世界の力』への理解は妾が圧倒的だ。貴様の未熟な練り上げ程度、妾の魔力で『絶凍』に上書きする事など容易い」

「ひっ……ひへぇ……」


 そのまま頭まで凍りつき、飛行能力を失うと落下。落下の衝撃で粉々に砕け散った。

 他の『天使』も向かってくるが、アーフェンと同じ様にラナヤに睨まれただけで、内側から『絶凍』が発動する。


「何度でも復活して来るがいい。その都度、その“痛み”と“寒さ”をくれてやる」


 昔とは比べものにならない圧倒的な力。

 無論、これ程までに己を高められたのは彼女個人の鍛錬だけではなかった。


“ラナヤ。ワシはお主の中に“後悔”と共に眠る強き意志を見た。それはワシでさえも持てぬ、気高き“黄金の意志”。未だ迷いがあるのなら、ワシが導こう”


 スメラギに助けられ、連れられた『トップリット』で始めて師と慕える存在――ハンゾーに出会ったのだ。彼のおかげでここまで『旧世界の力』を掴む事が出来るようになったのである。

 しかし、


“ラナヤ、師範を頼む! 殿は某が勤める! 後に首都『アトランティス』で落ち合おうぞ!”


「…………」


 ラナヤは己の手の平を見る。

 グランドブレイカーの奇襲により『トップリット』は一瞬で敵のモノとなった。


“ラナヤお前は行け。ワシはスメラギを生かす。老兵最後の大仕事ぞ。止めてくれるな”


「スメラギ……ハンゾー先生……」


 ラナヤは心の後悔を後ろに追いやり、今はシャクラカンを討つ為に自分に出来る事を選択したのである。






「ラナヤ、助かった」

「道すがらだ。気にするな」


 町の人々は『エクストラ』の遊撃部隊により安全な移動を開始する。

 ラナヤは暫くは高い位置から増援の『天使』が来ないか居ないかどうかを遠目に見ていたが問題なさそうだ。

 シュタッとオーロラの前に降りる。


「オーロラ、建物に隠れてた人達も保護したぜ。ていうか先に行くなよ。お前『氷の精霊(セルシウス)』だろ? アーフェンは俺が相手をするって予定だったのに俺よりも熱くなってどうするんだよ」


 『炎の精霊(イフリート)』のフレイスも共に移動する避難者達を見届けつつ愚痴をこぼす。

 オーロラとフレイスが指揮する遊撃部隊は双方の弱点を補いつつ『天使』を殺さずに無力化する事を考えられた部隊である。


「遅いか速いかの違いだ。それに、ラナヤも居た」

「フレイスか」

「ラナヤお前……どこに行ったのかと思ったら……」


 『トップリット』で顔見知りでもある三人は脱出する者たちを護衛したが、ラナヤに至っては任務を終えると即、姿を消していた。


「奴らが妾の『旧世界の力』を狙っている事は解っていたからな。皆の安全の為に姿を消したまでだ」

「フローが滅茶苦茶お前の事を心配してたからよ。無事だって解ったのなら少しは大人しくなるぜ」


 ラナヤは自分を“姉”の様にと慕ってくれる『氷の精霊(セルシウス)』の少女の事を思い浮かべ、険しい表情が少しだけ和らぐ。


「『トップリット』の皆は無事に『エクストラ』へ?」

「ああ。『マスタークラス』の一人が管理する地に身を寄せている。奴らも早々に手は出せん」

「レイク爺さんなぁ……フローとか女には激甘なのに男には厳しいんだよ……」

「それはお前がだらしなさ過ぎるからだろう?」

「これからも救助者もそこへ?」

「ああ」


 ラナヤには面識のない『マスタークラス』であるが、避難先が確保されている事に一先ず安堵の息を吐く。


「それよりも、問題はアーフェンの言葉だ。スメラギが殺されたとは……しかも首都『アトランティス』には、既にノーティムが工作員として潜り込んでいる」

「首都が『天使』共で溢れてるならマジで時間の猶予は無ぇ。下手したらノーティムは捕まるぞ。次は“五属連隊”の編成を王に進言する必要があるんじゃねぇか?」

「いや、その必要は――」

 

 ラナヤは言葉を語ろうとしたその時、巨大な竜巻が三人を閉じ込める様に発生する。


「!?」

「なに?!」

「新手か!?」


 身構える三人。次の瞬間、オーロラが竜巻の向こう側より飛んできた『火球』により内部から弾き出された。


「くっ!」

「オーロラ!」

「ちっ!」


 フレイスは両腕を炎に変え、竜巻を己の燃料として冗長しようとするが――


「なんだ……この『竜巻』……」


 触れようとすると、逆に炎が消されるように飲み込まれる。


“『星風』は発生者以外に恩恵は無い”

「!」


 空気の衝撃波に横から殴られ、フレイスもオーロラと同じ様に竜巻の内側から弾き出された。


「……今の声は……」

“挨拶でもすりゃ良いのか?”


 内部に一人取り残されたラナヤはその声に聞き覚えがあった。

 すると、一人の男がまるで壁でも無いかのように竜巻の影響を全く受けず、内部に足を踏み入れ、姿を現す。


「どうも、【白髪鬼】ラナヤ。お前にクランマスターの命を狙われた【霊剣】ローハン・ハインラッドだ」

 

 男――ローハンの眼は仇を見るかのようにラナヤを敵視していた。

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