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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第464話 学習済みです!

『ワタシの分析結果、『オフィサーナンバー』の能力や戦闘力に類似した存在を上げるのならば、“眷属”が相当するだろう』


 試合前、『アステス』側の情報をボルックさんと可能な限り精査する際に、推定戦力を分かりやすく説明してくれた。


「“眷属”……ですか」

『無論、エデン・ノーレッジの造った【スケアクロウ】の方が戦闘力は上だろう。だが、『オフィサーナンバー』の本質は『ツリー』によるAI保護が主な特性と言える』

「つまり……身体がある限り不死身に近いと言う事ですね」

『『フロンティア』でも彼らを破壊できる存在は片手で数える程度しか居ない。ワタシも、ホワイト殿ともう一度戦闘行為を行った際に勝てる保証は無い』


 高い実力に加えて、仮に倒したとしても新たな身体(ボディ)で任務を遂行する。まさに『アステス』が強国たる所以だ。


『だが、そこで多くの者達が勘違いをする』

「勘違いですか?」

『『永遠の国(アステス)』で最も重要視するべきはマザーだ。『オフィサーナンバー』の生みの親であり、『アステス』のシステムを創り上げ、『フロンティア』を管理。他とは一線を画する存在と言える』

「僕たちの知る人物に置き換えるなら誰に相当しますかね」

『マスターだ』

「……やっぱり、そのクラスですか」

『『機人』と言う種族を創り、世界(フロンティア)に定着させ、偶発的とは言え自我を芽生えさせるまでに至っている。コレはある種の“創世”だ。そして、全ての『機人』の情報を取り込み精査し、己のモノとして機能させる事が可能となると、その辺りの階位が妥当だろう』


 『オフィサーナンバー』でさえ勝てる可能性は薄い。更に全てにおいて、彼らを上回るマザーさんを相手にするとなると……


「戦闘では勝ち目は無さそうですですね」

『マザーの戦った記録は存在しないが、戦闘でのアプローチは厳しいモノになるハズだ』






「オラァ!」


 事前情報でもマザーさんは相当に強い事は想定していた。

 それでも、カイルと『霊剣ガラット』の攻撃力があれば回避の選択肢に行動を誘導できると思っていたのだ。

 そこから切り崩す。それが、僅かな勝利への道筋だったのだが……


「洗練されていれば尚、分かりやすいですね」

「くそっ! またか!」


 カイルの剣撃は連続する動きに移る初撃で、パシッと物を摘むように刃を止められる。


「『霊剣ガラット』も使い方は“剣”の枠を出ない以上、裂傷を生むのは刃の部分のみです。分かりやすく踏み込んで来ても、私には永遠に届きません」

「んぎぎぎ……」


 カイルは何で止められるのか理解していないだろう。せめて“『オフィサーナンバー(ホワイトさん)』のスタイル”を解除しなくてはマザーさんへ届くモノも届かない。

 僕は勢いをつけて踏み込むと、くるっと縦に回りつつ、マザーさんへ上段からの踵落としを見舞う。


「ふむ」


 マザーさんは、パッ、と『霊剣ガラット』を手放して、半歩後ろに引くと踵落としを回避。

 カイルは引っ張った反動で、うわっ! とお尻から転んで、攻撃を避けられると思っていた僕は両手と足の三点で地面に着地しつつ、マザーさんへ靴裏をぶつける勢いで前に飛び出した。


「それは学習済みだと思っていましたが」


 靴裏が触れる前にマザーさんは、クンッ、と僕の足首を回すように捻り、蹴りの軌道を円を描くように横へ流す。


「ええ。学習済みです!」


 軌道を流された時点で『抜重』し、横へ流れる勢いを助長。そして、『加重』で着地し、溜めると同時に一気に距離を――


「……え?」


 しかし、マザーさんは僕の想定よりも内側に居た。あっちから距離を詰め、密着に近いレベルの懐へ入り込んでおり、蹴りの間合いが潰れている。


「悪くない攻撃です。しかし、まだ工夫が足りません」


 そのまま、『加重』を操作されると体勢を変えられ、背中から地面に押さえつける様に叩きつけられる。


「うっ……くっはぁ……」

「レイモンド!」


 カイルは『霊剣ガラット』を両手で握り、体重を乗せる一振りでマザーさんを両断する様に振り抜き――


 パシ、コン。


 次の瞬間、カイルとマザーさんの位置が背中合わせで入れ替わり、カイルは両膝を着いて四つん這いに地面を見ていた。


 マザーさんは即座に間合いを詰めると『霊剣ガラット』が勢いを生む前にカイルの手首を、パシ、と抑えてソレを阻止。

 そして、コン、と軽くノックする様にカイルの額を叩き、脳震盪を起こさせて無力化したのだ。


 『霊剣ガラット』に対して踏み込むだけでも相当な度胸が必要だというのに……いや、それは僕たちの感覚だ。

 全てが未熟に見えるマザーさんからすると、僕たちの行動は全て手の平の上なのかもしれない。


「……レイモンド。これが貴方から提示される答――」


 ドッ!


 しかし、手の平の上に乗せていても予想外に暴れられたら取り零す事がある。


「だっ、らぁ!」


 カイルが振り返るマザーさんへ、ドッ! と組み付きタックルを決めて一緒に倒れ込んだ。

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