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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第394話 エアレイド

 『永遠の国(アステス)』が保有する兵器の中でも【スケアクロウ】タイプだけは製造されなかった。

 その理由は二つ。

 一つは『マザー』に【スケアクロウ】の製造に必要な知識を持たないため。

 そして、もう一つの理由は“三機で事足りる”からだった。


 『天』『地』『人』。

 その三つの環境に適した能力を持つ【スケアクロウ】は『マザー』の命令が『アステス』の理念と一致している間はその指揮下に収まっている。

 その内の『天』に適した【スケアクロウ】が『アステス』より出撃すると加速。

 ものの数秒で音速に達し、超音速圧力波(ソニックブーム)を纏う。






「うっ……」


 僕は妙な音を感じて思わず耳を抑えた。


「レイモンド、どうした?」

「……なんか……耳鳴りが酷い……」


 追ってくる騎兵を警戒して『音魔法』の範囲を広げてたが、思わず停止し耳も抑える。


「レイモンドさんは超音速圧力波(ソニックブーム)を感知出来るんですか?」

超音速圧力波(ソニックブーム)ってなんだ?」

『衝撃に備えろ!』

「え? うぉあ!!?」


 ジェイガンさんの警告からすぐに、ゴオオオオオンン――と上空をナニかが通過した。

 なんだろう? と一秒ほど間を置いていると『バス』が上から叩かれた様に大きく跳ねる。


「な、なんだ!?」

「攻撃を受けてる!?」

「大丈夫です。今のは移動の余波ですから」

『クソが! エアレイドの野郎! もっと高く飛べってんだ!!』


 カイルが窓から外を見る。開けられないので後方まで見ることは出来ないが、並走していた騎兵達は居なくなっていた。


「諦めたみたいだぜ!」

「――何とかなりましたか」

『全員、頭を丸めて座席に掴まれ! 倍速で離れるぞ!』

「お二方、言う通りにした方が良いですよ」


 僕とカイルはジェイガンさんの運転は荒々しくなると経験してる事もあって、ひしっ、と前の座席に掴まる。

 まだ何か起こるのか……?


『VOB起動!!』


 次の瞬間、座席の後ろに押し付けられる程の加速が始まった。






 追え追え――

 この地は我らのモノ――

 肉と贄を捧げよ――

 『クイーン』へ捧げよ――


 超音速圧力波(ソニックブーム)て吹き飛ばされたにも関わらず被害を受けなかった後方の騎兵達は『BUS8』を追いかけていた。

 すると、『BUS8』の上部の砲塔が車体に格納され、今度はその後部が開く。そこから四つのエンジンが展開――


『VOB起動!!』


 ジェイガンの声と共にボッと火が灯り、『BUS8』は騎兵達を置き去りして彼方へと速度を上げて行った。


 その速度に追い付けないと判断し“城”の範囲からも外れる懸念もあり、騎兵は止まる。すると、今度は遥か上空から舞い散る白銀の軌跡に気がつく。


 騎兵の上空。『機械仕掛けの巨鳥』が翼を大きく広げて滞空する。

 【スケアクロウ】『空戦タイプ』。個体名称――エアレイド。


「――ピリリ」


 気圧適正。周囲への被害シュミレーション完了。


 ソレは遠くにそびえ立つ“城”をモニターに捉え、一度機翼を大きく羽ばたき方向修正すると直進飛行を開始する。


 “城”に射出台が並べられ、そこに装填された巨大な銛が【スケアクロウ】を迎撃する様に放たれる。


 回避シュミレーション。弩の命中率0%――


 槍襖の様な数の巨銛を【スケアクロウ】は回転しつつ隙間を抜けるように難なく躱し続け、適正距離に入る。


 『燃料気化爆弾(サーモバリック)』発射。


 カシュッ! と酒瓶ほどの大きさをした“鉄の筒”が放たれた。ソレは僅かに変形するとブーストして直進。


 命中率100%――


 【スケアクロウ】は機翼を立てて減速すると巨銛を弾くように回転。姿勢を反転させ“城”から高速で離れる。


 【スケアクロウ】の撤退に兵士達は巨銛の射撃を止めた。すると、その“城”へ、カンッ、と“鉄の筒”が当たる。刹那――






 大地が揺れ、空が割れたと思わせる震動と轟音が『オベリスク』に響き渡った。

 それは遠巻きでも確認できる程の巨大な“キノコ雲”となり衝撃波が周囲に拡散する――






 『オベリスク』王都。『解放軍』本部――


「『エアレイド』が飛んでたぞ! 西の“城”に攻撃を仕掛けてる!」

「ちょっと……いきなりやる気でも出したってワケ!?」


 サリアは望遠鏡で『エアレイド』が飛行する様子を確認。そのまま“城”をキノコ雲に変えた辺りで見張りの塔から緊急用の縄を使って飛び降りた。


「姉さん! 何があったんです!?」

「『エアレイド』が『第三(・・)戦城』を粉々にしたわ! 衝撃波が来るわよ! 地下に走れ走れ!」


 サリアは外にいた者たちに声をかけ急ぎ、近くの階段から地下へ駆け降りる。






「…………今の爆発音は――」


 クロエは『オベリスク』の王都を目指して荒れ地を横断していた所で爆発音を聞き、足を止める。

 一定の音量は自然とカットする様にしている為、今は震動だけで状況を把握した。


「……地震? いや……衝撃波ね」


 大地を抉りながら迫る破壊の波に身体を向けると、


「『音界波動』同調――」


 逆らうこと無く身体を預ける様に衝撃波に乗った(・・・)――






『ロ、ローハンさん! 今の音って……! あ、あれって何ですか!?』


 『オベリスク』を北東へ向かい、国境を越えていたローハンはリースと共に、西からの轟音に振り返った。


「キノコ雲だと?! 『アステス』の攻撃か!?」

『あっちの方向には……カイルとレイモンドさんが! クロエさんも!』

「クロエは気にするな。カイルとレイモンドの方が心配だ」


 唯一、ローハンには二人の生存がわかる方法がある。


「『霊剣ガラット』。こんな形でオレのトコに戻ってくるんじゃねぇぞ」






「うぎぎぎぎ――」

「ぬむむむむ――」


 『燃料気化爆弾(サーモバリック)』によって発生した破壊と衝撃波から可能な限り高速で距離を取る『BUS8』であったが、逃げ切る事は出来ずに追い付かれていた。


「おおわ!?」

「こ、これって浮いてます!?」

「まずい……」

『浮いてるんじゃねぇ! 吹き飛ばされてるんだ!』


 車体が押される様な浮遊感に制御不能に陥ろうとした瞬間、ガガンッ! と音を立てて天井から“爪”が突き出てくる。


「襲撃か!?」

「ジェイガンさん! まずいですよ!」

『いや、味方だ! 慌てんな!』

「【スケアクロウ】ね」

『ピピ――』



 『エアレイド』は宙に浮いた『BUS8』へ接近し車体を掴むと、軽々と上昇し衝撃波の範囲から離脱していく。

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