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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第393話 とっとと乗れ! ポンコツ!

「ホントに『アステス』は何をしてるの」


 『オベリスク』の荒野には現在、“半透明の城”が存在していた。

 その近くを通過する存在を、領土に侵略する敵(・・・・・・・・)と見なし排除する為に兵士を出撃させる。

 現在も側をバイクで通過した、セスタに反応し『オベリスク軍』の紋章の入った腰布を持つ騎兵が彼女を追いかけていた。


「“城”になるまで放置するなんて……この様子じゃ『キング』か『クイーン』も居るかもしれない」


 後方から追う騎兵が投槍にてセスタを狙う。車体を左右に振ってセスタは回避するが、正面から煙のように現れた騎兵に反応が遅れた。


「っ!」


 通過する際に振り抜かれる斬馬刀を腕でガードする様に受けるが……バイクは破壊され、吹き飛ばされる。なんとか地面に着地するも、追いついた騎兵部隊が彼女を囲うように疾走を始めた。


 今のは躱せた。本来ならば(・・・・・)

 しかし、今の身体(ボディ)は損傷が酷過ぎる。


 索敵及び視界不良。右腕部機能停止。内蔵武器選択不可。機動性能60%減――


 緊急信号は送信したが……近くに『バス』が巡回しているかまで索敵出来なかった。


「後は運任せ……か」


 正確な情報処理が出来ないからだろうか? “運任せ”などと言う結論は……ヒトでなければ出てこないだろうに。


 騎兵の突撃。側面に飛んで避けるが、時間差で並走していた別の騎兵が脇から出てくる。


 やられた――


 槍がセスタを貫く。ギリギリ身体を倒し右肩部で受けるに留めるも、更に時間差で並走する三騎目が彼女に迫る。


「運が無かった」


 すると、その騎兵が唐突に消滅した。


「貴方たちの方がね」


 視線を向けると遠くから『バス』が走ってきていた。その上部に展開された砲塔が筒煙を上げている。


「『BUS8』。離脱するなら十分!」


 セスタは『バス』向かって走ると包囲され始めた騎兵の陣形の突破にかかる。






『おいおい、マジかよ! “城”になってんじゃねぇか! しかも近けぇ!』

「んだ!? 今の音ぉ!? うわっ!? なんだ、あの城!?」

「ジェイガンさん! 僕も出ます! 扉を開けてください!」


 砲撃の音で目を覚ましたカイルは窓に張り付き外を見る。外の異常な様子に席を立つレイモンドも、自ら戦う事を提案した。


『ガキと客はシートベルトして席にしがみついてろ! 余計な手間かけさせんな!』


 『BUS8』。別名、一般乗合旅客自動戦闘車。

 『オベリスク』を安定して巡回する為に最低限の装備(・・・・・・)を積んでいる。


 近づいてくる『BUS8』へ騎兵の一部が反転。投槍や斬馬刀による攻撃をスレ違い様に行う。

 しかし、その全ては弾かれ、車体には傷一つ着かない。


『突撃してくるしか脳のねぇ『ゴースト』共が! んなモン効くわけねぇだろ! こちとらタキシオン合金のボディだぞ! トマホークでも持ってこいや!』


 逆にジェイガンはハンドルを切り、ブレーキを踏むと停止の勢いを利用して車体を大きく回転。その質量で囲い始めた騎兵部隊を木っ端のように吹き飛ばしていく。


「うわぁぁぁ!!?」

「ジェイガンさん! バスってこんな使い方でいいんですか!?」


 中の客達は席で丸まって耐え、席を立っていたカイルとレイモンドは遠心力で壁に張り付く。


 ぐるん、ぐるん、と巨大な質量となって回転する『BUS8』はサイドブーストを吹かして回転を強制的に減速させるとセスタの前にピタリと停止させた。

 そして、ガー、と乗り込み口が開く。


『とっとと乗れ! ポンコツ! 置いてくぞ!』

「貴方バグってるでしょう?」


 セスタは即座に乗り込むと扉が閉まる。


「あら、カイルさんとレイモンドさんじゃないですか。同じ方向で壁に張り付いて仲が良いですね」

「セスタさん……ですか……?」

「何……何が起こってんの……?」


 レイモンドは乗り込んできたセスタに挨拶し、カイルは寝起きからの怒涛の状況に理解が追い付いて無かった。


 その時、ぐんっ、と急発進の勢いに再び後ろに引っ張られる。


「席に着いた方が良いですよ、お二方」

「酷く実感してます……カイル、ほら座って座って!」

「お、おう!」


 よろよろしながら、二人は席に戻り、セスタも近くの空いてる席に座るとシートベルトを着けた。


「運転席さん、行き先は?」

『『アステス』だ! もう、どこにも寄らないで直行する!』

「航空支援は?」

『20分前に出してる!』

「『オフィサーナンバー』を?」

『いや、【スケアクロウ】が出撃した! とっとと離れるぞ!』


 すると、正面を塞ぐように騎兵が集まり出した。


『邪魔だ! どけっ!』


 ボンッ! と上部の『120ミリ滑腔砲』が火を吹く。正面を吹き飛ばして穴を開けると強引に包囲を貫いて突破する。


「レイモンド! 何が起こってんだ!?」

「僕にも何が何やら……」

「二人とも、シートベルトはした方が良いですよ」

「シートベルト?」

「ほら、座席の側面にベルトがあるでしょう? それを引っ張り出して身体の前に通して、カチリって鳴るまで押し込むんです」

「へー……ってセスタ!? 片腕無いじゃん!」

「些細な事です。『アステス』で直せるので、お気になさらず。あっ」

「どうしました?」

「衝撃に備えてください。【スケアクロウ】の空爆が来ます」

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