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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第392話 『アステス』の浸蝕

「ぐぅー……ぐぅー……」


 バスはそれなりの速度で進み、時折地面の凹凸に車体が跳ねた。

 カイルは防寒具を脱ぎ、武器を横に立て掛けて窓から流れる景色を、おー! と見ていた。しかし、代わり映えしない荒野ばかりだった事もあり十分ほどで飽きたらしく、今は、ぐぅー……ぐぅー……と眠りについていた。


「ふむ……」


 対して僕はローハンさんから借りてる地図を広げる。

 バスの中からでは『アステス』へどの順路で進んでいるのか解らない。


 『オベリスク』地方で、方向を確認する基準となるのは王都に存在すると言われる『バベルの四塔』だった。

 見る方向によって、1本~4本に見えるため、それにより自分達がどの方角にいるのかわかるのだ。だがそれも、高速で動くバスの中からでは確認出来ない。


「領土は変わりないって話だけど……」


 地図を見る限り『アステス』の国土はかなり歪な形をしている。僕らが【スケアクロウ】と対峙した『ビリジアル密林』の鉄壁は首都が近い為に警備が厳重の様だ。

 目指すなら『ビリジアル密林』からの方が距離的には近い。しかし【スケアクロウ】の件で『アステス』に敵視されてる可能性もあった為に、『太陽の里』にも被害が及ぶ可能性が上がった。

 結論として『オベリスク』側からアプローチをする事にしたのである。


「ゴホッ、ゴホッ……」

「大丈夫よ……」

「早く元気になりたい……」

「…………」


 僕とカイルを含めて車内の席を三分の一も埋めない乗客達はそれぞれが、咳き込んだり、包帯を巻いていたり、四肢の一つが欠損してたりする。

 僕達を除き、他は健全者ではない。『アステス』行って何をするんだろう?


 その時、バスが減速し始めた。着いたのかな? そう思っているとジェイガンさんが僕たちと話した時の様に運転席の窓を開けて、外に向かって叫ぶ。


『怪我人だぁ? お前ら強盗の分際で嘘つくんじゃねぇよ! 『アステス』の眼を誤魔化せると思ってんのか? ぶっ殺すぞ――』


 と、バチィ!! と『雷魔法』で運転席ごとジェイガンさんが撃ち抜かれた。


「!?」

「ぐぅ……ぐぅ……」


 明らかな襲撃。『アステス』の乗り物を狙う様な相手だ。相当な手練れのハズ。僕はジェイガンさんを助ける為に立ち上がろうとしたが――


『なんだ、そのクソみたいな『雷魔法』は? まさか、オメーら“『機人』は『雷魔法』に弱い(肥満ボイス)”とか言う下らねぇ常識を間に受けてるんじゃねぇだろうな? ナメんなよ、ゴラァ! そんなモン、『アステス』建国時から対策済みなんだよ! 下半身不随で人生終わっとけや、クズども!!』


 魔力反応から『雷魔法』がバスから地を這って放たれたみたいだった。

 ジェイガンさんは、時間取らせやがってよ……ペッ! と唾なんて吐けないのにそんな事を言って窓を閉めると再びバスを走らせる。


「ジェイガンさん」

『なんだぁ?!』


 僕が質問すると天井から返答が帰ってくる。


「バスに乗る方の基準って治療が必要な方ですか?」

『正確には『アステス』でしか治せない様なヤツらだ!』

「『アステス』でしか……治せない?」

『お前ら、マジでこっちの事は何も知らねぇのな。『アステス』は医療の国だ。他ではどうしようもないヤツらが最後に頼る国なんだよ』

「それって……患者のさじ加減はどうやって図るんです?」

『答えてやっても良いが……ソレ聞いたら疑心暗鬼になるぞ』

「教えてください」


 『アステス』の事を僕たちは知らなさ過ぎる。せいぜい、凄い技術力があると言うだけだ。


『各国に『Tタイプ』っつー、『機人』が潜入してる。ソイツらが患者を選別して、しれっと『バス停』への切符を手渡すのさ』

「切符……切符が要るんですか?」

『ああ。それが無きゃ乗せらんねぇのよ。まぁ、お前らは面白いから乗せてやったけどな、ギャハハ!』

「僕たちがさっきの強盗みたいな可能性は考えなかったんですか?」

『んなモン、考えてるに決まってんだろ。『バス停』には周囲の生物をサーチする機能がついてる。バスが近づいたらそのデータを受け取って乗せる奴かどうかを選別してるんだよ』


 『バス停』は単なる目印ではなかったらしい。


『タキシオン合金で出来てるからな。衝撃は元より、酸化や錆びにも強い。世界が滅びても『アステス』と『バス停』は残るぜ』

「特殊な金属ですか?」


 聞いたことがないモノだ。


『『アステス(こっち)』のオリジナル合金だ。質感はいくらでも変異可能。『オフィサーナンバー』と『機人』の身体(ボディ)には全員使われてるぜ。加工調整には『マザー』のコードが要るけどな』

「『オフィサーナンバー』?」

『『マザー』の側近してる四体の『機人』だよ。国内の管理から他国への使者までこなす。『マザー』の手足みたいな奴らだ』


 『オフィサーナンバー』。『アステス』に入国したら特に気にかけないといけないかも。


『実質『アステス』のナンバー2扱いの奴らだったが……その席を【戦機】が奪ったんだからウケるぜ』

「――【戦機】ボルックは、『アステス』でも有名なんですか?」

『有名も何も、50年前にフラりと現れて『オフィサーナンバー』の隊長を正当防衛(・・・・)でぶっ壊したんだぜ? その後、『マザー』から次席の権限も与えられてよ。俺は『オフィサーナンバー』はクソだと思ってるからボルックのやった事は痛快だったよ』


 どうやら、ボルックさんもかなり派手に動いたらしい。

 『アステス』でナンバー2の権限を貰っていたのなら……それが理由で離れられないと結論を出したのかな?


『ん? チッ』


 その時、ぐおんっ、と車体が動いた。急に方向転換した様子だ。窓際に寄りかかってぐぅ……ぐぅ……してたカイルがこっちに倒れて来る。

 僕は咄嗟にカイルの肩を支えた。


「っと……どうしました?」

『緊急信号だ。規定で無視出来ねぇ。少し寄り道するぜ』

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