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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 終幕 滅びの先導者

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第381話 とにかく声がデカいんだ!

「飯を食いながらで良いから聞いてくれ」


 オレは出店広場で合流したメンバーと食事をしながら今後の事を話し合う。


「他に聞かれても良い内容ですか?」


 会議をするには少しばかり騒がしい環境にレイモンドが言及する。


「こっちの声はオレらにしか聞こえない様にクロエに消して貰ってるから問題ない」


 故にあえて人の多い所を選んだのだ。宿でも良かったが、“糸”を通じて店長にも間接的に伝わるしな。


「ほっさん、ほれは『ふえんひん』へるろー」

「カイル、食うのと喋るのは別々にしなさい」


 リスみたいに、口を膨らませてモリモリ食べるカイルの『共感覚(ユニゾン)』はまだ『太陽の民』を指定してるみたいだな。

 さっさとここから出発しねーと『星の探索者』のエンゲル係数がぶっ壊れる。


「おっさん! オレは『円陣』に出るぞー! 前は出れなかったし!」

「ああ、いいよ。気が済むまで暴れてこい。出発はそれからを予定してる」

「よっしゃー! 色々と約束があってさ!」

「約束?」


 野菜をもぐもぐしながらレイモンドが聞く。


「俺、ディーヤと中途半端だったじゃん? 決着つけるぜ! 後、クォーラがなんか変な事言ってきたなぁ」

『変な事?』


 リースは水をストローでちゅーちゅー吸いながら聞く。


「なんか、自分が勝ったらツキアイタイとか言ってきてよ。変だよなー、魔物狩るのに付き合ってやったのに」

「あらそうなのね」


 クロエはパン系の料理を摘まみながら、ふふ、と微笑む。カイルの恋愛脳は五歳未満で止まってるからな。

 コイツの脳内は、強くなる60%、家族30%、食欲10%だろうし。恋愛が割り込む隙間がねぇ。


「勝ったら“ツキアウ”のか?」

「返事をしようとしたら『円陣』で聞くって言われた。だから、ぶっ飛ばす!」


 カイルの脳内は既に『円陣』に出る楽しみで80%占めてやがらぁ。


「とにかく負けるなよ」

「当たり前だぜ! クロエさんも出るんでしょ?」

「気が向いたらね」

「レイモンドも出ろよー? めちゃくちゃ楽しいぜ!」

「僕はいいかな」

「えー、来いよ!」

「僕は君よりも『太陽の里』には長くいたから、もうお腹いっぱいなんだ。君が堪能しなよ」

「そうか? サンキューな!」


 レイモンドは程よくかわしたな。カイルはモリモリと食事を再開する。


「今後の動きだが、大筋の目標は他のメンツとの合流を主に動く」


 【スケアクロウ】との戦闘時、割り込んだボルックによりレイモンドへ流れた情報を加味すると、サリアとスメラギも他の地域に滞在している様だ。


「クロエ、『ナイトパレス』にいた時、三人に関しての情報は無かったか?」


 この中でクロエは唯一、『ナイトパレス』の中枢に座っていた。目新しい情報があれば良いのだが。


「そうね。戦争前だったからかしら。ボルック以外は情報が流れて来たわ」


 流石にブラッドは戦争中に漁夫を狙う可能性を考えて他国の情報を集めていたか。

 『ナイトメア』で夜の領域を広げていたのは、他国への牽制の意味もあったのかもな。


「『解放軍』の【魔弾】は旧オベリスク首都を拠点に動いているそうよ」

『【魔弾】の噂は私も聞いています。遮蔽物が意味を成さないとか』

「サリアさんスゲー」

「装備を持って来てるんですかね?」

「まぁ、アイツなら弓矢でもそれくらいやるだろ。リース、ちょっと質問を良いか?」

『何です?』

「【魔弾】の事はいつから噂になってる?」


 これは結構重要な質問だ。


『えっと……私が知る限りですと50年以上前からです』

「50年!?」


 カイルは食事の手を止めて驚く。


「いやはや……」

「ローハン、私達はかなり危なかったんじゃない?」


 オレ達は『遺跡内部』に強制転送されたと考えて正解だろう。同時にクロエとレイモンドの転送時期を見て疑惑もあった。

 転送は当時、側にいた者達でズレが生じている。

 オレ達とクロエ達では数週間程度の誤差で済んだが、サリア、スメラギ、ボルックは50年以上前の時代に転送された様だ。


「50年があまり気にならない奴らじゃなかったらヤバかったな」


 サリア、スメラギ、ボルックは寿命的にも50年程度なら誤差で済む。これが、今食卓に居る誰かだったら帰る気力すら失われていただろう。


「話を一旦戻しましょうか。【烈風忍者】に関してはゴルド王国の王族護衛として名前が上がってるわ。【夜王】の戴冠式に来訪した記録があったの」

「アイツの得意分野だな」

「そうなの? スメラギっていつも声がデカくて、そう言う感じじゃないけど」

「スメラギさんって……護衛とか出来るんですか?」

『ニンジャって……良く解らないですけど、どいう職業なんです?』

「リース、忍者ってのはなぁ……とにかく声がデカいんだ!」


 リースへの説明はカイルに任せるとして、『トワイライト』の事を知らなけりゃ、二人が今のスメラギに違和感を覚えるのはしかたねぇか。


「そんでもって、ボルックは『永遠の国(アステス)』か」

「ええ。『アステス』に関しては外から情報は拾えないわ。でも、仕掛けない限りは不干渉って話ね」

「……その件に関してはオレから情報がある」


 それは紐解いた『原始の木』の情報に残っていた。

 かなり初期の知識(モノ)だが、今も忠実に護っているのなら『アステス』が存在する理由は――――


「ちょっと、良いですか?」


 オレが話し出そうとした時、卓に声が割り込んできた。クロエを除く全員が視線を向けると片眼を包帯で隠した女がオレたちを見る様に立っている。


「この声はセスタかしら?」

「知り合いか?」

「ええ。王城のメイドよ」


 クロエが反応する。王城って言うと……『ナイトパレス』側のヤツか。


「クロエ様……一個人の私を覚えているのですか?」

「ええ。貴女は他の人と違って心音が無いから印象深いの」


 クロエの言葉にセスタは、ビク、と反応する。


「恐ろしい方です……いつから私の事を?」

「初めて会った時からよ。それで、なんの用? 裏切った私を粛清に来たのかしら?」

「い……いえ! 滅相もありません! 私は伝言を持って来たのです」

「ネストーレからか?」


 考えられるのはそのくらいだろう。しかしセスタは否定する。


「違います。【戦機】ボルックから“家族”へ伝えて欲しいと」


 そして、一瞬の間の後にセスタは告げる。


「“ワタシは還れない。マスターの元へは六人で還って欲しい。すまない”と」

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